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概要:「NARUTO」女性向け二次創作テキスト共同サークル企画・連絡所  傾向:うちはイタチ×うちはサスケ

05:

くらい
ここはとてもくらい
くらいことは
こわいこと
しずかで

くらくて

だれもくちをひらかない

つめたい

なんて つめたいんだろう

イタチは一人、部屋の真ん中で灯りもつけずにぎゅっと小さく体を丸めた。

あらそいはいやだ

こわい

だれもなんにもいわなくなってしまう

つめたくなる

いやだ

そんなのはいやだ

暗い部屋、一人の夜は嫌なことばかり考えてしまうものだ。

「イタチ?どうしたの?」

扉が開き、部屋の中に廊下の電気の光が差し込んでくる。

「かあさん?」

「ただいま。イタチ」

その包み込むような声にはじかれたようにイタチは立ち上がると、母の腰に縋りついた。

「ごめんね。寂しい思いをさせてしまったわね」

纏わりつくイタチを抱きしめ、柔らかな手がイタチの頭を優しく撫でた。

「下へいらっしゃい。」

そう言うとミコトはイタチの手を引いた。
久しぶりに握りしめる母の手は温かくて、柔らかくて、そのやさしさに鼻の奥がツンと痛む。
階段を降りると、居間でフガクが真っ白な布にくるんだ何かを抱いていた。ミコトはその腕から布にくるんだ何かを預かるとイタチの目の前でしゃがんだ。

「あなたの弟よ」

「おとうと・・」
「そう。サスケっていうのよ。あなたはお兄ちゃんになったのよ」

まっ白な包の中にいたのは生まれて間もないサスケ。すやすやと寝息をたてて眠っていた。布からはみでた小さな小さな手に触れると、きゅうっとサスケがイタチの指を握った。

「え・・」

「寝ぼけてるのかしらね」

くすくすとミコトが笑い、その様子にフガクも笑みを零す。
そんな二人とサスケ、そして握りしめられた手を交互に見つめる。

あたたかい

こんなにちいさな存在なのになんて温かくて優しいんだろう。
今は寝息を立てている小さな口はあの物言わぬ者たちの引き結ばれたそれとは違う。
乳白色の柔らかな頬はつめたくなったあの者たちのように強張っていない。
自分を握りしめる手には確かに血が通い、小さな胸の奥で心臓が脈打っている。

あたたかい。こんなにもあたたかい。

涙が溢れた

「どうしたの?イタチ」

突然泣き出したイタチに驚き、ミコトはフガクと目を見交わした。

昏く閉ざされていた世界に光が差し込んだ気がした。
自分はやっとあの地獄から抜け出せた。
この小さな存在が教えてくれた。

せかいはあたたかい、と

「とうさん、かあさん。おれがサスケをまもるから」

どんなことがあっても

なにがおきても

たとえはなればなれになっても―

その言葉にフガクもミコトも優しく微笑み返した。
 
 
 
「・・ん・・チ・・さん・・イタチさん」

自分を呼ぶ声に急速に意識が浮上する。
途端に外の雨の音が耳に入り、自分が今まで眠っていたことに気付く。
「鬼鮫か・・」

「随分と寝入っていたようで」

「ああ、そうだな」

昔の夢を見た。もう戻ることのできない昔。
温かい日常が変わらなくあり続けるのだと信じていた。
なのに、騙して裏切って切り捨ててしまった。
今の自分はあの頃恐れていたものそのものだ。

物言わぬ唇、
無感動な表情、
容赦なく人を殺める冷たい指先

今の自分にあの頃自分が思い描いた未来はなにひとつ手の中に残ってはいない。

それでも

それでも
たったひとつだけ変わらないこと

それは、自分が今もなおサスケを愛しているということ―




忍界大戦の記憶がサスケが生まれるまで小さい兄さんのトラウマになってたんじゃないかと思ったのが発端。
サスケが生まれたことで、兄さんは救われ、自分を救ってくれたサスケを守るために強くなろう、何があっても守ろうって思ったんじゃないかっていう妄想。
昨日のと今日のとの温度差ェ・・
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