「一期一振」おまけ無配 06 「一期一振」おまけ無配 2016年10月12日 「一期一振」おまけ無配 2016.01.10発行の同人誌「一期一振」のおまけ無配ペーパーの修正再録です。 2016.10.16の「全忍3」に向けて1~3日に1話ずつ更新予定です。 ※ 戦国パラレル(「一期一振」の設定・あらすじ・サンプルはこちら) ※ イタチ(18才)×サスケ(13才) ※ イタチ兄さんは「八坂ノ国」の若き領主、サスケは女郎置屋「暁」で普段は不寝番、兄さんが来るときだけ「扇」という名で女郎(男)として働いています。 ※ 兄さんはサスケを弟と知っていますが、サスケは兄さんを兄とは知りません。 ※ これはサスケがまだ兄さんを兄さんとは知らず、体の関係を持った「一期一振」の1章と2章の幕間の小話集です。 ※ 本編「一期一振」はシリアスですが、おまけ無配はコメディです。 ※ 春壱・式の合同文 ------------------------------------------------------------------------------------------ ■ らいおんはーと 天照かりーも食べ終わり、ようやく外の置屋街も薄暮が迫る頃、イタチは杯を傾けながら、酌をするサスケを愛しい眼差しで眺めていた。 「オレの贈った打掛けを着てくれているんだな」 「まあ、な」 「嬉しいよ」 紫陽花の打掛けはイタチがサスケのために見立てたものだ。剣の鍛練の傍ら、庭の手入れにも日々励んでいるというサスケは紫陽花を好んでいると聞く。 「よく似合ってる」 とイタチは褒めたが、当のサスケは困り顔だ。わけはすぐに知れた。 「オレ、いつもは女の格好なんてしてないぜ」 「そうなのか」 「女の格好で刀は扱えない」 「それもそうだな」 逢瀬はいつも廓でのため、その頭がすっかり抜けていた。 それならば、打掛けではなく、武士らしい羽織や袴などはどうだろうか。そうイタチが考えを巡らしていると、サスケがふと酌の手を止め、肩を落とした。視線も俯く。 「それにオレはもらっても何もアンタに返せない」 その声があまりにも沈んでいたから、イタチは杯を口許に運びながらも、口を付けなかった。 「サスケ。オレは返してほしいと思って贈っているわけじゃない」 「だが、一方的に高価なものをもらうわけには…」 貰うばかりではなく、きちんと礼には礼を尽くしたいというサスケの健気さが難ともいじらしい。たが、イタチにとってはサスケが生きていることが幸せであり、何かをしてあげられることが嬉しい。 「サスケ」 杯を置き、白粉を刷いた弟の頬を優しく撫でる。 「オレはただ受け取ってくれるお前がることが嬉しい」 物は想いを伝える手段にすぎない。受け取ったと言ってくれればいい。 「そんなの…」 答えになっていないと言いたいのだろう。 ならば、とイタチは先程の鬼鮫とのやり取りを思い出す。 「なら、オレのために何か励んでいることがあるんだったな。それで返してくれ」 「なっ…!」 サスケの顔がみるみる赤くなり、よほど動揺しているらしく銚子を落としそうになっている。きゅっと唇を噛んで恥ずかしそうに俯いた。 「そんなの…急に言われても…」 「そんなに言いにくいことなのか?」 「言いにくいというか…その、まだ修業中だから言いたくない」 「修業? どんな修業だ」 「それは…」 「オレに出来ることなら手本を見せてやろうか」 イタチは幼い頃から文武に励み、何事においても天賦の才を示し、人より数段秀でてきた。優秀というのも考えものだが、サスケにイタチが教えてやれることならばそうしたい。それに物を贈るよりもこれは余程喜ばれるのではないだろうか。しかし、 「な、な、な! そんなこと、アンタにさせられるかよ!」 サスケは顔を真っ赤にし、両腕で体を庇いながら後じさった。 「どうした、サスケ」 不審に思い、こちらが思わず身を乗り出すも、サスケはこれ以上近寄ってくれるなとばかり、後ろへ後ろへと下がっていく。 「いやっ! いい! だめだ! オレ一人でするから!」 「そうか? だが」 「絶対だめだ! アンタにそんな、そんな、オレ…心の準備が…」 いつの間にか部屋の端まで追い詰められた格好のサスケは今度は赤面したまま畳ともじもじとし始める。 イタチには最早何が何やらさっぱり分からない。が、ともかくサスケは今すぐには出来ないことをイタチのため励んでいるということは察せられて、イタチはふっと微笑んだ。 「じゃあお前の修業が終わるまで待つとしよう」 言うと、サスケがそっぽを向いて口籠もる。 「…何年掛かるか分からないぜ」 「いいよ。ずっと待ってる」 すると、サスケの瞳がようやくちらりとイタチの方を向いた。その瞳には不安と少しの期待が入り混じっている。 「それって、アンタはまた来てくれるってことか」 「ああ、もちろん」 イタチは「隙ありだ」と言って、ぐいと弟の体を引き寄せた。そのまま抱き締める。 「オレも国の統一に励まなければな」 「え…」 サスケがすっぽりと収まったイタチの腕の中、こちらを見上げる。 イタチはその瞳の瞼に接吻けを落とした。 「お前を身請け出来る日が楽しみだ」 「…うん…オレもだ…」 胸に凭れ掛かってくる弟の重みと温もりを感じながら、イタチはいつか訪れるだろうサスケと暮らす日々に思いを馳せた。 そして、三年の月日が流れる。 ------------------------------------------------------------------------------------------ 一旦おしまい ※三年後の最終話は「全忍3」後、投稿します。 PR