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控室を出て、一人廊下の長椅子に腰掛ける。
目を閉じて呼吸を整える。
今日はKNH48全国ツアーの最終日。早朝からのリハーサルを終え、それぞれがオープニングの衣装に着替え、あとは開演を待つばかりとなった。
デビューして3年。ステージに立つことに慣れたとは言っても毎回ツアーのラストは緊張した。それは最終公演がツアーの締めくくりであり集大成であり、ファンの意気込みも自分たちのステージにかける思いも殊更大きくなるためかもしれない。
今回のツアーの最終日ではアンコールも1曲増やし、ソロ楽曲もふんだんに取り入れた。
ここまで全公演がすべて大成功に終わった。だからこそ、最後の最後まで気を抜くわけにはいかない。
それに、俺には絶対に成功させたいもう一つの理由があった。
俺たちのコンサートにほぼ全通してくれているあの人が来ているかもしれないから。
どの場所にいてもいつも一生懸命に俺たちを、いや、俺を一生懸命応援してくれる名前も知らない人だ。
俺たちほど人気グループになるとファンの数も多くなり、当然、少し困ったファンも出てくる。
うちわを高く振りかざして後ろの人に迷惑をかけるファン、会場の外で近隣の迷惑も考えずに騒ぐファンや無意味な出待ちをする子達。
お祭り騒ぎの空気にあてられて一過性の病ので終わる子もいるが、そんな人間が集まればただただ迷惑だ。そんな者たちのためにマナーを守ってコンサートに来てくれるファンの子達までもが煙たがられるのは嫌だった。
俺たちも公演中に何度かマナー向上を呼び掛けたこともあるが、それでも、毎回コンサートの後にはなにかしら苦情が入っている。
いつも見に来てくれるあの人はそれはそれは礼儀正しい。一度コンサート中にテンション上がりすぎて手すりに乗り上げている女の子に注意していたこともある。
女の子の様子から、気分を害した様子はなく(そもそも気分を害する方がおかしいが)、再びハメをはずすようなことはなかった。
なるほど、言い方が良かったんだろうなと思った。
そんなこともあって、もともと女性ファンが8割の中、男性ファンは珍しいが、あの人は殊更印象に残っていた。
何度もコンサートに来てくれているということがわかってから意識してファンサにいくと、それはもう幸せそうに手を振ってくれるのだ。
暗がりでもわかるほど、あの人は綺麗な顔をしている。それが印象に残ったもう一つの理由かもしれない。
毎回持っているうちわにははっきりと俺へのメッセージが入っている。
その内容が時折変わることに気づいてからは毎回彼を探した。
2階席にいようと関係ない。俺の写輪眼はあの人の位置を見抜く。
今日の最終公演の競争率は聞いている。もしかしたらチケットを取れなかったかもしれない。業界関係者すら入手困難と言われたのだ。
来ていなかったら?とふと不安が胸をかすめた。
大勢のファンのために存在する俺たちが一人の人間のことで感情を乱されてどうする。今はこの公演に集中するべきだ。
「おーい!サスケ~そろそろ時間だぜ~」
もうすぐ本番だというのにそれに似つかわしくないゆるい物言いでシカマルが俺を呼びに来た。
「ああ」
あの人がいてもいなくても俺の、俺たちのすることはひとつ。
ファンのために全力を尽くす。
インカムを付け、俺はみんなのもとへ向かった。
ドルオタ兄さん×アイドルサスケ
一体この話はどこへ向かおうとしているのか・・
続きます