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「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
「辛かったら無理するなよ」
わかってる。だから、いつまでもガキ扱いするなよ!」
そんなやり取りをしてから半日が過ぎた。
暗部の任務から解放されたオレは装備を解きながら、今朝、あまり良くない体調を押して任務に出掛けていったサスケのことを思った。
季節の変わり目の朝夕の寒暖差に加え、遠征があったせいか、ここ数日、サスケは鼻をすすっていた。
代役をたてることができる任務ならとりあえず今日は体を休めては、と言ってみたが、弟はまるで取り合わなかった。
むしろオレが心配するほどに頑なになるようで、最後は結局、無理をするなと言って送り出すことになった。
窓の外はしとしとと梅雨時の雨がふっている。
初夏の兆しがあると言っても梅雨の時分は雨が降れば気温が下がる。ちゃんと余分に1枚羽織るものを持っていっただろうかと思い、こんなことを言ったらまたサスケに怒られるな、と途中で思考を止めた。
壁にかけられた時計の針は夕飯時を過ぎている。
サスケはもう帰っただろうか?天候次第では足止めを食らわされているかもしれない。
帰りがけに出退勤札を見に行ったが、サスケの名前の書かれた札はまだ勤務中を示す黒字のままだった。
家で待つのもここで待つのも同じと思い、休憩室でサスケを待つことにした。
夕飯より少し遅くに帰ると母には言ってあるので、多少はまぁ、大丈夫だろう。
休憩室の入り口がよく見えるソファに腰かけ、くたびれた新聞を手に取った。
雨は相変わらず小気味良く窓ガラスを叩いていた。
階段を登ってくる足音ではっと我に返ると同時に、自分がうたた寝していたことに気付く。
「何やってんだよ。アンタ」
サスケが目を丸くしてこちらを見ていた。
雨具を持っていなかったのか、髪の毛や衣服からぽたぽたと水滴をたらしている。
「サスケ、お前、ずぶ濡れじゃないか」
「ああ、外での任務だったから」
「そういう問題じゃないだろ」
「しかたねぇだろ。警備の仕事なんだから」
サスケはそう言うと、そのままロッカールームへと歩き出したので、あわててその手を掴む。「まて、先にシャワーを浴びてこい」
「いい。家ではいる」
「それでは体が冷えてしまうだろ。」
大丈夫だと抗議するサスケの腕を強引に引き、オレはサスケをシャワールームへと引っ張った。
渋るサスケをシャワーブースに押し込み、代わりにサスケのロッカーに着替えを取りに行った。
着替えをもってシャワールームに戻るとちょうどサスケがブースから出てきたところで、がしがしと髪を拭いていた。
「着替え、ここに置いておくぞ」
「ああ」
何が恥ずかしいのかサスケはオレに背を向けて衣服に袖を通しはじめた。
陽に焼けない白い肌は決して病的なそれではなく、サスケの本来持つ性質のもので、彼のどこまでもまっすぐで純粋な性質そのものだ。
その背中に吸い寄せられるように、後ろからサスケを抱きしめた。
「なっ…!?イタチ?!」
「まったく。どれだけ心配したと思ってる」
サスケのまだしっとりと濡れる肩口に額を押しつけるとくすぐったいのか、サスケはもぞもぞと身動ぎ、オレの手を掴んだ。
「大袈裟なんだよ、アンタは。別に大した任務じゃない。道が悪くて予定より遅くなっただけだ」
「だが、風邪をひいていただろう?」
「あんなの大したことない…!それよりこの手さっさと離せよ!」
風呂上がりにまとわりつかれて鬱陶しくなったのかサスケが体を捩ったので、素直に解放してやった。
まあ、これだけ威勢がいいなら大丈夫なのだろう。
上気したサスケの頬に手をあて
「おかえり、サスケ」
と言うとサスケは視線だけをふいと逸らせて「ただいま」と呟いた。
お題配布元:「確かに恋だった」さま
自分だって体調悪くても任務に出て、遅くまで帰らないことがあるくせに!ってサスケは思ってると思います。
いつでも自分のことは棚に上げる人、兄さん。
任務を終え、家に帰ると、サスケが居間でうたた寝をしていた。サスケの傍には先ほどまで読んでいたのであろう巻物が転がっている。
起こさないようそっとサスケの傍らに座り、まだ少年期のあどけなさを残した寝顔を見つめふっと頬が緩んだ。サスケの頭を撫でながら彼が先ほどまで読んでいた巻物を手に取る。蔵の中にでもしまってあった古いものなのか、ところどころ黄ばんだり、黒ずんだりしていた。そう言えば昔自分も蔵に入ってはうちはの古い文献を漁っていたなと思っていた時、
「サスケ、ちょっとお使いにいってきてくれない?」
と言って母が台所から顔を出した。
「あら、イタチ。帰ってたの?」
暗部の不規則な任務のせいで、オレの帰りは予測のつかないもの、というのが家族の中で暗黙の了解になっている。そんなオレが夕飯までに帰っていることに母は珍しいものを見た、という顔をした。
「ああ、予定より早く片付いたんだ」
「そう。…あら?サスケ、寝てるの?」
「オレが戻った時には寝ていた。疲れてるんだろう。買い物、オレが行くよ」
そう言うと、サスケがごろりと寝返りを打ち、ううんっと猫のように体を丸め、ぼんやりとした瞳を彷徨わせた。
「いいよ、サスケ。そのまま寝ているといい。」
起き上がろうとするサスケの頭を撫でてやると、半分夢見心地のサスケは自分の頭を撫でるオレの手を払い、起き上がった。
「兄さん!?いつの間に帰ってたんだ?今何時だ?」
ときょろきょろするサスケに「まだ4時だよ。サスケ」と答えると、サスケは愕然とした。
「クソ…!母さん、買い物はオレが行く。イタチ、アンタはゆっくりしてろ」
と母からメモとお金をむしり取るとバタバタと玄関に走っていった。
「おい、サスケ!」
ひどく慌てたサスケの様子が気になって、オレは後を追った。
玄関先でサスケはまだ毒づいていたが、オレの姿を見るなり
「なんだよ、ゆっくりしてていいっていっただろ?」
といってオレを居間へ戻そうとぎゅーっと肩を押してきたので、体を反転させて躱してやった。
「別にそんなに疲れてない。たまには一緒に買い物に行くのもいいだろ?それともオレと出かけるのはいやか?」
「別にそう言うわけじゃ…」
「じゃあ、決まりだな」
どこか気まずそうに視線を彷徨わせるサスケの頭をくしゃりと撫でた。
傾いていく陽を背に二人並んで歩く。
ぽつりと灯された家の灯りの中から夕餉の支度をする匂いが漂ってくる。
夕暮れの町は温かくて胸の奥を擽る不思議な懐かしさと一抹の寂しさを思い起こさせる。
隣を歩くサスケは家を出てからだんまりのままだ。
一体何が気に入らなかったのだろうと、なんとなく会話のきっかけにならないものかとサスケの髪をくしゃりと撫でると「なんだよ」と睨まれた。会話のきっかけを作ろうとしたオレの浅はかな計画は一瞬で破綻してしまった。
サスケがこんなふうにだんまりするときは決まってオレに何か隠している時なので、しばらくそうっとしておくことにした。
結局、目的地の木の葉マートまで何も会話をしないまま歩いた。
中に入ると、夕飯の材料を買い求める主婦で賑わっていた。普段、この時間に買い物に来ることのないオレとサスケは人の多さに、若干、奥に踏み出すことを躊躇った。しかし、この後夕飯を作る母のことを思えば、もたもたしているわけにもいかない。
「サスケ、オレからはなれるなよ」
隣であからさまに人ごみにうんざりした顔をしていたサスケの手を引くと「子ども扱いするな!」と手を振り払われた。
かごとカートをとり、母に渡されたメモを見ながら二人で店内を歩く。
二人ともこういうスーパーでの買い物になれていないせいか、醤油1本買うのにうろうろと店内をさまよった。
青果売り場のところでリンゴを選んでいたら先程まで隣にいたはずのサスケがいない。
辺りをくるりと見渡してみてもサスケの姿は見当たらない。
下手に動くとかえって見つからないだろうか?そう思案していると、背後から棚のリンゴに手を伸ばす主婦が何を突っ立っているんだと迷惑そうな顔でオレを見たので、オレは適当にリンゴを1つ掴んで青果売り場を離れた。
人のあまりいない場所で、カートを引き寄せもう一度あたりを見回すが、やはりサスケの姿は捉えられない。一体どこへいったのだろうか。
買い忘れがないか母から受け取ったメモを広げて、かごの中の品物と見比べる。
今しがた放り込んだリンゴ、トマトにキャベツ、醤油、みりん、父の晩酌用の酒。母に注文された品々は男二人で買い物に行くことを想定してかここぞとばかりに重たいものばかりだ。
ひとまず、長い列のできているレジに行けばサスケがオレを見つけることもあるだろうと、オレはカートを押した。
会計を済ませ、買った品を袋に詰めていたところでサスケと会えた…というか随分オレを探し回っていたようで、
「アンタ、なんで果物のとこにいねぇんだよ!」
と、結構理不尽なことを言われた。
「先にいなくなったのはお前だろう?お前とはぐれてから随分時間が経ったと思うが?」
「う…」
正論なので言い返してこない。代わりにサスケが弁当箱くらいの大きさの包みを差し出した。包装紙には甘栗甘の文字。
「…悪い、これ…買いに行ってた」
「サスケ?」
「き、今日は兄さんの誕生日だろ!どうせ、覚えてないんだろうけど…」
ああ、そういうことか。
サスケ、リンゴは痛むから一番上に入れてくれよ。
「確かに、忘れていた」
毎年誕生日はサスケが、家族が思い出させてくれる。だから自分で覚えている必要がない。オレにとって誕生日は毎年こんなふうに思い出させてくれる家族がいることの幸福を実感する日だ。
「そんなことだろうと思ったよ」
荷物を手にサスケがぷいっと背を向け、出口に向かってさっさと歩いていく。その後姿を追いかけながら、オレは包みを撫でた。