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電車に乗ること2時間。俺とイタチは電車を降りた。
長時間座りっぱなしで固まった体をほぐすように伸びをする。イタチの肩に凭せ掛けていた体の右側だけがまだほっこりと温かい。
山奥のせいか、自分たちの住む場所よりもぐんと気温が低い。頬がぴりぴりと痛み、吸い込む空気の冷たさで鼻がつんとする。すぐそばに見える山の端はうっすら雪化粧をしている。
イタチは1時間に1本しかないという幻のようなバスの時刻を見に行っている。
駅の周りは思っていたよりは開けていた。小さいバスロータリーの周辺には土産物屋や聞きなれない名前の地方銀行や店主が店の奥で居眠りしてそうな本屋があった。
このあたりの人間の足と言えば車だからか、道を歩く人の姿はほとんど見られない。
駅の改札を出てすぐ正面には雨風にあてられてすっかり色あせ、汚れた狐のマスコットが間の抜けたポーズをとっている。それがかえってこの町が寂れ行く一方なのだということを物語っているようだ。
「サスケ」
呼ばれて振り返る。イタチの手には駅でもらってきた周辺マップがあった。
「次のバスまで1時間近くある。それまでに何か食べるか?」
そう言えば電車の中でも言っていたな。
朝が早かったので、そろそろ腹も減ってきている。初めて会う一族の前で腹の虫を泣かすわけにもいかないだろう。俺は頷いて応えた。
しかし、乗り継ぎが悪いとは聞いていたが本当に悪いな。
都会では当たり前のように思っている公共交通機関という恩恵はこの山奥には届かないらしい。そう言えばさっき時間を見るために携帯を開いたら圏外になっていた。今、イタチとはぐれたら確実に俺は帰れなくなる。
イタチがとってきた周辺マップを覗き込む。町の名前とその下に『ようこそ!』と妙にポップな字体で書かれている。聞いたことがない観光名所とやらや、一応温泉もあるらしい。おすすめグルメスポットとも書いてあるが・・
「これいつのだよ」
四隅が焼けたように色あせ、地図に載っている店と、今、目の前にある景色が一致しない。
「1年以内のものではないな」
使えねぇじゃねぇか。
時間はあるので、周辺をぐるりと探索することにした。
俺たちが乗ってきた電車は次の客を乗せるために停車しているのが見えた。
帰りもタイミングが悪ければこのクソ寒い駅で待つことになるんだろう。そう思うと少し億劫になった。
駅の反対側に小さな食堂があった。ひどく年季の入った暖簾をくぐると、ふくよかな女性の「いらっしゃい」という声が飛んできた。
「二人なんですが・・」
さして混み合ってもいないし好きなところに座ればいいんじゃないだろうかと思ったが、黙っておいた。
「空いてるとこどーぞー!」
言われて俺たちは入り口から離れた店の隅に腰を落ちつけた。
腕をのせればかくんと傾いてしまいそうな足の細いテーブルの上にはメニューと調味料、そして割り箸が置いてある。メニューを開くと、丼もの、定食、麺類と分かれていた。案外こういう田舎の食堂の方がメニューが豊富なこともある。ここはそんな店の一つのようだ。
イタチはにしんそば、俺はわかめうどんを頼み、2個入りのいなりずしを一皿頼んだ。
女将の威勢のいい声にこたえるように主人が料理に腕を振るっているのが見える。麺をゆがくために火にかけられた鍋からもうもうと湯気が立ち込めている風景がどこか温かい。調理場に近い席では、常連らしき年配の男たちが冷蔵庫から小鉢料理を取り出して女将に小銭を渡している。都会では見かけない光景に自然と目が引き寄せられた。
「疲れたか?」
イタチが気遣うように尋ねてくる。
「別に」
電車の中で寝ていたからか疲労感はない。寄りかかって眠っている間中、頬から伝わっていたイタチの体温を思い出す。
もともと優しい兄だが、あんな風に唐突に向けられる優しさが親心ならぬ兄心なのか、それを少し踏み越えた情愛なのか測りかねる時がある。
もちろんどちらもイタチの優しさに変わりはない。そのどちらを向けられても嬉しいのも事実。なのに、その一つ一つに優しさの出処を求めてしまう自分がひどく女々しく、浅ましく感じられて嫌になる。
イタチなら自分から向けるどんな優しさもそのままに受け取るのだろうに。
「おまちどおさま」
相変わらず威勢のいい女将の声が思考を遮り、二人分のどんぶりが置かれた。二人の間でゆらゆらと湯気とかつおだしのいい匂いが立ち上る。
割り箸を割って二人そっと「いただきます」と手を合わせる。
あつあつのつゆが冷えた体をじんわりと温めてくれる。視線だけイタチに寄越すと、俯くと後ろ髪が落ちてくるようで、片手で髪を押さえながら麺を啜っている。
女みたいだな・・むしろそこらへんの女のしぐさより色っぽいんじゃないだろうか。
俺の視線に気づいたのか、「どうした?」とイタチが首を傾げた。
「髪、大変そうだなって思って」
イタチを見つめていたことを気付かれたかと思うと妙に恥ずかしくて、紛らわすように器に口をつけるとまだあつあつのつゆで火傷した。
「あつ・・」
慌てて水を流し込む。
「大丈夫か?」
そう言ってイタチの指が俺の唇に触れた。
どくんと心臓が跳ねた。
「平気だ」
そう言ってイタチの手を唇から離した。
ほら、
ほらな
俺はまたアンタの優しさの動機を測りかねて動揺するんだ。
旅の途中で腹ごしらえ。しかし、うどんといなり一個じゃ足りないよね?高校生の食欲舐めたらあかんと思いつつ、サスケも兄さんも小食のイメージ。特に兄さんは食べることに無頓着そう。。。
それにしてもなかなかマダラさんに会えませんなぁ(笑)
ではでは続きを式さんにパス♪