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「一期一振」おまけ無配
2016.01.10発行の同人誌「一期一振」のおまけ無配ペーパーの修正再録です。
2016.10.16の「全忍3」に向けて1~3日に1話ずつ更新予定です。
※ 戦国パラレル(「一期一振」の設定・あらすじ・サンプルはこちら)
※ イタチ(18才)×サスケ(13才)
※ イタチ兄さんは「八坂ノ国」の若き領主、サスケは女郎置屋「暁」で普段は不寝番、兄さんが来るときだけ「扇」という名で女郎(男)として働いています。
※ 兄さんはサスケを弟と知っていますが、サスケは兄さんを兄とは知りません。
※ これはサスケがまだ兄さんを兄さんとは知らず、体の関係を持った「一期一振」の1章と2章の幕間の小話集です。
※ 本編「一期一振」はシリアスですが、おまけ無配はコメディです。
※ 春壱・式の合同文
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■ ブラック領主に仕えてるんだが、もうオレは限界かもしれない
八坂ノ国を東方と西方に割り、領土を争う一族間の小競り合いのいくさも一段落したある日のこと、イタチは館にある厩へと一人足を向けていた。
顔こそ常の通り能面のようだが、その足取りは至って軽い。イタチがいくさに赴いている間に先頃女郎置屋「暁」でついに再会が叶った弟が文を届けてくれていたのだ。
故あって今は兄と明かすことは出来ないが、イタチはこの弟、サスケをたいそう可愛がり、折りにつけて様々なものを側近のシスイを通し、贈っていた。サスケからの文にはその礼と遠回しながらそろそろ会いに来てほしいとの旨が綴られており、いくさが終わった折りも折りだ、イタチは早速「暁」へ出向くことにした。
サスケのことを思えば心も弾む。道の途中にある「うちは煎餅」にでも立ち寄り、甘いものが得意でないという彼のため何か見繕っていこうか。そんなことすら考えるイタチの前に、
「待て、イタチ」
腹心であり、友でもある男、うちはシスイが立ちはだかった。
久方ぶりに弟に会えるという喜びに胸を踊らせていたイタチの心は急に萎えた。シスイは難しい顔をしてじとりとイタチを睨んでいる。この男がこういう顔をしている時に良い話を聞けたためしがない。しかし、苛立ちは表情に出さず、イタチは至極冷静な態度でシスイを見据えた。
「なんだ?」
「なんだじゃない。お前、供も連れずにどこに行く気だ?」
確かにまだ他国との小競り合いは続いている。力をつけつつある八坂を警戒し、その芽を摘もうとする国や、奪い返した領土をそのまま横取りしようと目論む国、様々な思惑が国と国の間で渦巻いている。イタチもいつ暗殺者によって寝首を掻かれるともしれない。そんな状況でふらふら出歩くなとシスイは言いたいのだろう。
「ちょっと厠にな」
「厠に行くのに馬に乗る必要があるのか」
もちろんない。そもそも厠にいくつもりもない。
シスイはイタチの口からはっきりと行き先を告げるまで梃子でも動かない、という顔をしている。しかし、この男のことだから大方予想はついているのだろう。
「用はなんだ」
「はぐらかすなよ」
案の定、不用意にふらふらと出歩くな、イタチは国を背負った立場であり、もう自分一人だけの体ではないことを自覚しろと小言を言われた。
だが、こうしている間にも時は刻一刻と過ぎていく。いくらイタチの愛馬「月読」が早馬とはいえ、ここから「暁」まで半日かかる距離だ。なんとか話を切り上げたい。
イタチは致し方ないと小さく嘆息し、空に向けて指笛を吹いた。するとどこからか烏が飛んできてシスイの周りを威嚇するように飛び回った。
「うわっ…! なんだ!」
「明日の晩には戻る」
「明日の晩って…! ちょっ…! 待てよ! おい! イタチ!」
くせっけの髪を更に烏にもじゃもじゃにされながらシスイが言うが、イタチは一目散に厩へと向かった。
「あとのことは頼んだ」
「イタチ、お前! 覚えてろよ!」
そのときのシスイの絶叫は館中に響いたという。
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02へつづく