「一期一振」おまけ無配 02(前) 「一期一振」おまけ無配 2016年10月07日 「一期一振」おまけ無配 2016.01.10発行の同人誌「一期一振」のおまけ無配ペーパーの修正再録です。 2016.10.16の「全忍3」に向けて1~3日に1話ずつ更新予定です。 ※ 戦国パラレル(「一期一振」の設定・あらすじ・サンプルはこちら) ※ イタチ(18才)×サスケ(13才) ※ イタチ兄さんは「八坂ノ国」の若き領主、サスケは女郎置屋「暁」で普段は不寝番、兄さんが来るときだけ「扇」という名で女郎(男)として働いています。 ※ 兄さんはサスケを弟と知っていますが、サスケは兄さんを兄とは知りません。 ※ これはサスケがまだ兄さんを兄さんとは知らず、体の関係を持った「一期一振」の1章と2章の幕間の小話集です。 ※ 本編「一期一振」はシリアスですが、おまけ無配はコメディです。 ※ 春壱・式の合同文 ------------------------------------------------------------------------------------------ ■ 鬼鮫子のお部屋 る~るる、るるる、る~るる♪ 女郎置屋「暁」の不寝番サスケはその日、部屋いっぱいに広げられた艶やかな打掛や美しい髪飾り、そのほか漆塗りの箱に入れられた身の回りの細々とした品を前に困り果てていた。 全てサスケの水揚げ相手「うちはの旦那さん」からの贈り物だ。この手のことには全く詳しくないサスケにも、これらの品がたいへん高価なものだということは分かる。だが、 「オレにどうしろって言うんだ、これ」 サスケは紫陽花をあしらった打掛を引き寄せ、頬を引きつらせた。 女郎「扇」としてうちはの旦那さんには何度も抱かれたが、サスケは男だ。こんなものを贈られても仕方がない。 それにうちはの旦那さんはこうして贈り物や文は山ほど寄越してくれるが、肝心の本人が店を訪れることは滅多にない。 旦那さんはあの武家の名門うちはの出だと言うし、この頃八坂ノ国ではいくさが多いとも聞く。 最後に旦那さんが「暁」を訪れてから一つの季節が過ぎた。きっといくさで忙しいのだろうとサスケは何度も自分に言い聞かせてきたが、そろそろそれも限界だ。文では相変わらずサスケに愛を嘯くくせに一向に会いに来てくれないのは、やはりもう男のサスケから心が離れてしまったからではないだろうか。そんな思いが腹の底で黒く渦巻く。 それなのにサスケはつい先日未練がましく会いたいなどと旦那さんに文を書き送ってしまった。なんとも惨めな気分だ。紫陽花の打掛をぎゅっと握る。その時だった。 「おや。どうしたんです、サスケくん」 「鬼鮫姐さん…」 「暁」の芸子、鬼鮫子が姿を見せた。 見た目はその名の通り、鮫のような顔をしているが、彼女が三味線「鮫肌」で奏でる曲は繊細で美しいと評判だ。この花街で彼女の腕に敵う者などいないと言われており、その三味の音を聴くために訪れる客もいるくらいだ。 鬼鮫子はサスケの手の中にある打掛や、部屋中に所狭しと並べられた贈り物の数々を見回した。 「流石はうちはの旦那さん。贈り物も並の武士ではちょっと手がでないような高級品ばかりですねぇ。貴方もなかなかすみに置けない」 鬼鮫子はサスケを肘でこつきながらにやりと笑う。 しかし、サスケは浮かない顔で紫陽花模様を指先で撫でた。 「こんなにたくさんもらっても…オレ…なにも返せねぇ」 サスケは「暁」の女郎だが、閨の相手を出来るのは彼の想い人である「うちはの旦那さん」だけだった。サスケは「うちはの旦那さん」以外に体を開くことが出来ない。 故に普段は不寝番として暁で働いている。働くといってもいわば「住み込みの奉公人」のサスケが蓄えている金子ではこの部屋に並ぶ品のひとつも買うことは出来ないだろう。当然、贈り物に見合う物を返すことなど出来るはずもない。 「オレ…あの人にしてもらってばっかりだ…」 普段は気丈なサスケがこんな風に肩を落とし、項垂れているのは珍しい。 サスケの様子を見兼ねたらしい鬼鮫子はある提案をしてきた。 「なら、閨でお返しすればいいじゃないですか?」 ------------------------------------------------------------------------------------------ 02(後)へ続く PR