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現代パラレル 教師兄さん(26歳)×高校生サスケ(18歳)
太陽がさんさんと照りつける季節を終え、残暑を潜り抜け、紅葉の季節になった。
あれだけ熱さに喘ぎ、衣服を煩わしく思うほど汗していたことが嘘のよう。今はマフラーが手放せないし、ズボンのポケットから手を出せない。
「なぁ、今日も遅いのかよ」
俺は目の前で明日の授業の準備をしているイタチに話しかける。
「お前はもう帰れ。下校時刻はもうとっくに過ぎているぞ」
俺になんて見向きもせずに、試験管や駒なんとかピペットやらを出したりしている。脇のコンロでやかんがしゅーと音をたてている。
「ここまで待ったんだから一緒に帰る」
「宿題が出てるだろう?早く帰って片付けろ」
「センセーみたいなこと言うのな」
かちん、とやかんの蓋が湯気に押し上げられて跳ね、閉じる。
「残念ながら俺は教師だ」
そう言って振り返ると、俺の傍にある薬品棚から茶色い瓶を取り出した。何の薬品なのかは見えなかった。
「でも、俺の兄さんだ」
「そんなお前は生徒で、俺の弟で、受験生だな」
少し意地悪に笑う。
ああ、今一番言われたくない言葉だな。
「なあ・・」
兄さんの白衣の袖を掴む。
「受験・・しなきゃいけないのか」
「それは、お前次第だろう」
そうだ。その通りだ。
受験なんてしなきゃいけないもんじゃない。しなくったって死なないし、進路は自分で選べるんだ。けれどそうじゃない。
本当に言いたいのは
卒業、しなきゃいけないのか?
こんなの口にするのもばかばかしい質問だ。
掴んだ裾を強く握りこむ。
兄さんが家にいる頃は兄さんがそばにいるのが当たり前だった。
兄さんは大学卒業と同時に家を出た。
兄さんのいない1年の生活を経て、追いかけるように兄さんが就職した私立高校を受験した。
3年間の執行猶予。
卒業すれば当たり前の日常は消える。
放課後に兄さんを待つことも、兄さんと話をすることも、こんな風に兄さんの白衣の袖を掴むことも・・
「サスケ、早く帰らないと母さんが心配するぞ」
やかんの蓋がかちかちと跳ね、しゅんしゅんと音を立てて湯気をはきだす。
「っ・・!あんたはもうずっと家に帰ってないじゃないか!」
そうだ。出て行って以来一度もイタチは家に帰ってこない。
「サスケ」
「あんたは俺がどんな気持ちで今まであの家で過ごしてきたかわかってないだろう!」
「サスケ」
「あんたはいつだってそうだ!!悪いなとか、時間ができたらなって誤魔化して家に帰ってくる気なんてさらさらないじゃないか!!」
なにが気に食わないんだよ。俺が嫌ならそう言えばいい。
俺がここに入学したことだってあんたには迷惑だったんだろう?
ぱたぱたと溢れ出す涙が床に落ちた。
なら、言ってくれよ。
じゃないと、俺はどこへも行けない。
「サスケ頼むから泣かないでくれないか」
指で涙を拭うと、イタチの唇が俺の唇に触れた。
「ん・・にいさ・・ン・・」
イタチの舌が侵入してきて俺の舌を絡めとり、ちゅっと軽く吸われた。
それだけで全身から力が抜けてへたり込んでしまいそうだった。
唇が離れた瞬間イタチは俺を抱きしめた。
俺の耳元に唇を寄せ、
「わかっただろう?だから俺は家には帰れない」
イタチは、そう囁いた。