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サスケが風邪をひいた。
昨夜、任務から帰ってきたサスケの顔が赤く、鼻をしきりにすすっていたので体温を測らせたら案の定、熱があった。
深夜のため、町医者は開いておらず、薬局も店じまいしてしまっている。ひとまず何か口に入れさせ、買い置きの風邪薬を飲ませた。
ここ数年出したことのない高熱だったため、体が辛いようで、薬を飲むと居間のこたつで横になっていた。そうしている間に寝床を用意してやろうと二人の寝室に向かう。二人分の蒲団を敷いて、居間に戻ると薬が効いているのかサスケがすうすうと寝息を立てていた。
「サスケ、ちゃんと布団で寝ろ」
気持ちよさそうに寝ているのを起こすのは可哀想だがこのままでは風邪が悪化してしまう。
サスケは熱と風邪薬でぼんやりとしていたが、俺が布団で寝るように、と言うと、おとなしく寝室へ向かった。
洗い物を片付けて寝室に入るとそこで寝ているはずのサスケがいなかった。それに奇妙なことにサスケの掛布団と毛布がない。どこかへ持っていったのだろうか?
寝室を出て、すぐ隣の部屋の扉を開けると、奥の方でサスケが蓑虫よろしく布団にくるまって横になっていた。
「サスケ、何をしているんだ。こんなところで」
声をかけるとサスケは薄目を開け、俺の姿を確認すると自身を包む布団を被った。
「おい、サスケ。こんなところで寝ていたら悪化するだろう」
俺が布団を引き剥がそうとすると「おんなじ部屋で寝たら風邪がうつっちまう」とくるまった掛布団の中でサスケが言った。
ああ、そういうことか。
「うつらないさ」
猫のように丸まったサスケを撫でてやると、サスケは体をぎゅっと丸めた。猫のようだ。
「大丈夫だから」
俺たちの部屋で寝よう、と布団からちょこっとはみ出た頭を撫でると、もそもそと顔をこちらに向けた。熱で火照った顔に本当に?と疑いの文字が貼りついている。
本来であれば朽ち果てたはずの体。
ある日、何の悪戯か再びこの世で生きることを許された。それと引き換えるように、俺は忍術が使えなくなった。体の活動限界も生前に比べるとはるかに早いし、免疫力も低い。
そのせいかサスケはこと、俺の体のことになるとひどく神経が過敏になった。
今だって自分が風邪をひいているのに俺の心配ばかりする。
もともと何の保証もなく甦った体。神様とやらの気まぐれが終われば、再び死者の世界に戻る日が来るのかもしれない。
サスケがそれをいつでも恐れていることも知っている。
「お前が俺を心配してくれるように、俺もお前が心配なんだ」
生きている間は傷つけることの方が多かったから。
せめて今、こうしてお前と一緒にいられる間だけは優しくしてやりたい。
勝手な言い分だとわかっているけれど。
「・・・マスクして寝ろよ。それから布団も今日はくっつけない」
それがサスケの譲歩。もうだいぶ眠たいのだろう。目がとろんとしている。
「わかった。そうしよう」
いつもはぴたりとくっつけている布団は部屋の端と端に敷かれた。
俺はサスケに言われた通りマスクをつけて、サスケもおなじように。
いつもは手を伸ばせばすぐ触れられるはずの背も手も頬も今日はほんの少し遠くて、寂しい。
「サスケ」
「なんだよ」
ぐすっとサスケが鼻をすする。
「寂しいから早く元気になってくれよ」
元気になったら、この蒲団の溝を埋めて、おもいっきりサスケを抱きしめて寝てやろう。
「ばーか」
そう言ってサスケはもう一度、ずずっと鼻をすすった。