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「コツ?任務の前にものを食べないことかしら?」
暗部達が集う休憩所の片隅で、キセルをくゆらせていた暗部のくのいちが言った。
任務を終えたのだろう。肩に落ちる髪がしっとりと濡れている。
「任務の最中よりも後からくるから。あれは。人によっちゃあ任務中に吐く子もいたよ。なに?まさかアンタがあの任務に行くの?」
「ああ」と答えると、くのいちが片目を細め、片目を大きく見開いて美しい表情を歪め、「そう・・」と言った。
「よりにもよって男をご指名とは・・相当な変態ね」
吐き捨てるように言うとキセルを逆さに向けこんこんと灰皿の縁で打った。
「休憩中にすまなかった」
そう言って休憩室を出ようとすると、くのいちが腕をひいて俺を引き留めた。着物の袖から小瓶を取り出し握らせる。
「花街の女たちが使ってるやつよ。早く終わらせたい時につかうハッタリ用」
小瓶の中にはどろりとした糊のような液体が入っていた。なんでも、嫌な客が来たときに事前に局部に塗っておくと、早くも濡れていると勘違いされ、客がいつもより性急に事を進めるので、結果早くお引き取り願えるものらしい。
俺は「どうも」と取り合えずその小瓶を受け取った。
色任務―
それが今回俺に下された任務だった。
よくある好色の悪代官から情報を引き出すという奴だ。普段であればくのいちが担当するこの任務。男の俺にお鉢が回ってきたのはつまり、ターゲットが男色だったからだ。
とある商人が邸にいわゆる美少年を何人も囲い、日替わりで楽しんでいるというのだからその性癖は疑いようもなく変態だ。
ただの美少年が好きで、囲っている少年たちも同意の上であれば問題はそれほど深刻ではない。深刻になってしまったのはこのターゲットの男が少年たちに買春行為を強要しているという疑惑が浮上したからだ。しかもそこで得た資金を何やら武器や麻薬の取引に使用しているというたいそうな悪事を働いているらしいという情報が入った。ただの金儲けにしてはやり方が穏やかでない。木の葉への反乱を企てているのであれば早急にその実態を調べ、阻止しなければならない。
しかし、正面から出向いたところでこの手のこすい人間が馬鹿正直に白状するはずもない。結果、奴の大好きな美少年とやらを送り込み、色香で気をゆるませ、根掘り葉掘り聞きだせばいいということになり、暗部の中では一応最年少に近い俺に白羽の矢が立った。
顔は確かに女のようだと言われてきたがいかんせん体は成人男子よりも鍛えているようなやつに果たして悪代官とやらが警戒しないものだろうかと思うが・・
行為に至るまでに聞きだせればよし、いよいよとなれば幻術にかければいい。
女装するわけではないので化粧はいらないだろうと思っていたらそれではだめだとくのいちに切々と語られ、薄化粧を施され、口元には紅をひかれた。出来上がった顔を見てくのいちが目を真ん丸にしていた。そりゃ似合わないだろう・・
籠が用意され、いよいよ悪代官の城へ連れていかれることになった。籠を担ぐのも同じ暗部の面々で、籠に乗り込む前に「化けるもんだな。お前さん、これから増えるかもしれないぞ。この手の任務」と冷やかされたがそれは御免こうむりたいものだ。
ターゲットの邸はいかにも、という感じの成金趣味だった。
無駄に大きな門構え、玄関に並べられたがらくたともつかない陶器、壺の数。通された部屋は金屏風、桐の調度品、触れれば折れてしまいそうなほど豪奢な彫刻の欄間、龍の描かれた天井、錦糸の折り込まれた掛布団・・これらすべてがここに囲われた少年たちの体を切り売りしたものでできているのかと思うと反吐が出る。
絵にかいたような悪代官の様相のターゲットは部屋に入った瞬間から頭のてっぺんからつま先まで値踏みするように俺を見ていた。見るに堪えぬので目を逸らしたら恥じらっていると勘違いされて余計にターゲットを煽る結果になってしまった。
その方が任務には好都合とわかっていても、なるほどこれは任務中に吐いてしまうくのいち達の心中を察するに余りある。
「遠慮せず近うよれ」
ぱたぱたと扇子で仰ぎながら指図してくる。
「はあ・・」と膝立ちでゆっくりとにじりよる。目の前の男の欲望をまるで隠さない荒い鼻息を感じうんざりした。手を伸ばせば触れられる距離まで来た瞬間、腕をひかれ、布団の上に押し倒された。
「・・っ!」
随分と性急な展開に幻術を使うか一瞬迷う。否、まだだ。
俺はのしかかってくる男の胸を手で押し返し、さも緊張している体で俯いて見せる。
「な・・なにぶん初めてですゆえ・・そんなに急かれますと・・」
苛立って怒鳴りでもするかと思えば、この反応が気に入ったらしく、「そうかそうか。よかろう。ならば今夜はわしがゆっくり手ほどきをしてやろう」と頬を撫でられた。不快だ・・
その手はそのまま着物のあわせへと降りていき、腰で結んだ紐を解いた。ゆっくりと着物を剥され、肌が露わになり、今まで布の覆われていた部分が空気に触れ、肌寒さを感じる。
とりあえず、男に裸を見られたところでどうということはないが恥じらうふりをすると、「そんなに怯えずともよい」と優越感に満ちた声が落ちてくる。
違う。断じて違うがこれも任務だと唇を結ぶ。
手首を頭上でまとめ上げられ、男の顔がいよいよ間近に迫る。手は腹のあたりをさぐり始めている。
天t・・違う違う。燃やしてはいけない。
幻術をかけるなら今だと思った瞬間、どーんという大きな音が響き、同時に地面が揺れた。
「イタチはどこだぁあああああああああああああああ!!!!!」
・・・・・聞き覚えのある声がした。聞き間違えでなければこれは・・
「な、なにごとだ?!」
男が邸のものをしきりに呼び、オロオロしていると襖がすぱんと開いた。そこに立っていたのは・・
「イタチはいるか?!」
やっぱり。サスケだった。
サスケは部屋の中の状況を見るなり須佐能乎を発動させた。これはまずい。
「サスケ、大丈夫だ」
手で制し、障子を開いた。黒い煙と共に明々と炎を上げている裏庭。俺は体を起こし、忍ばせていた苦無を男の喉に突きつける。
「どうやら火薬が暴発したようだな。一介の商人の家にあれほどの火薬の量。これは一体どういうことなのか説明してもらおうか」
「お、おまえ・・お前は・・」
「里への謀反であると判断すればお前をこの場で殺す」
ひっと声を上げ男はそのまま失神してしまった。思った以上に心臓の小さな男だったようだ。
男を縛り上げ、乱れた着物を整えている横でサスケがずっと俺を睨んでいる。
「これは一体どういうことか説明してもらおうか、イタチ!」
なんだか痴話喧嘩みたいな言い方だな、とか、そんなことよりお前の方こそどうして俺がここにいるとわかったんだ?まさかまたダンゾウを締め上げたのか?とか聞きたいことはたくさんあるのだが・・
庭では突然の爆発に右往左往する屋敷の者たちの様々な声が飛び交っている。時期に駆けつけた暗部や中忍たちによって全員縄に着くことになるだろう。しかし・・
「なんであんたがこんな男に体を許している?」
再び須佐能乎出さんばかりにズゴゴゴゴと怒っている我が弟。
や、別に許したわけではないが説明したところでこの弟が冷静に聞き入れるだろうか。
目の前の火事の方が俺にはよっぽど深刻だ・・とほほ。
ブログサイトで「108のネタがない!ネタをください!」とつぶやいた際にお寄せいただいたネタの中から「色任務兄さんと奪還にくるサスケ」を使わせていただきました。イメージと違っていたら申し訳ありません・・!
他にも頂いているシチュなども追々使わせていただきたいと思います。