リレー小説:番外編①(春壱) 【24企画】春壱 2014年07月23日 「絶対にチューしてはいけない24」 設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。 同居実家暮らし。 縛り:ブラコンだけど、できてません。→お題を経てできあがりました ほっぺやおでこへのキスはセーフ。 ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式) アウトになったその後から。 夕焼けを背にして家路につく。 隣にはサスケがいる。 今まで以上に近い距離で。 陽を受けた頬が赤いのは果たして夕陽のせいだけだろうか。ふとそんなことを思った。 少しうつむきがちに歩く、サスケの指に自分の指を絡めると、ぴくりと指先が震え、弾かれたようにサスケがおれを見た。 「にいさん」 戸惑いと、驚きと、照れ臭さと。 なんとも複雑にまじりあった動揺が瞳の奥で揺れる。 「少しだけ、な」 里に戻ってこんなことはできないから、今だけな、と言うとサスケはぶっきらぼうに小さく「おう」と言っておずおずと握り返してきた。 あたたかい。 こんなにも。 長らく蓋を閉めて抑えられた感情はようやく行き着く場所を見つけてゆっくりと流れ出す。 それがこの上ない幸福だ。 家に帰ると玄関まで母の作る夕餉のいい匂いが漂ってきていた。 引き戸を開けると母が台所から顔を出した。 「おかえりなさい。ちょっと頑張りすぎなんじゃないの?修行」 と言われた。 温泉まで行ってきたと答えたら、母は「どうして母さんも誘ってくれなかったの?」と拗ねたように言ったが、その表情はどこかうれしそうだった。 言えない。 温泉行った帰りに、兄弟以上の感情が芽生えたことにお互い気づきました、なんて。 言えない。 「ちょうどよかったわ。もうすぐ父さんも帰ってくるから手伝ってちょうだい」 先に手を洗ってくるのよ、と言いながら母はパタパタと台所に戻っていった。 「だ、そうだ」 と隣のサスケの頭にぽんと手を置くと、サスケは「わかってる」といっておれの手を払いのけた。 台所には小鉢や皿に盛られた天ぷらが並んでいた。 二人でそれらをちゃぶ台に運んでいく。 幼いころ、二人で母の手伝いをしたころに戻ったようで懐かしさに胸の奥がじんわりと温かくなった。 並び終えたところで玄関の引き戸を開く音がした。 父も予定通り、早く仕事を切り上げたようだ。 「父さん、おかえりなさい」 居住まいを正して父を迎えるサスケの姿に倣う。 おれと比較されがちなサスケは父に対しては殊更強く愛情を求めるところがある。 父を見つめる瞳は、無邪気にほめてもらうことを待つ子供のようで可愛い。 兄さん、ちょっと父さんにジェラシーだ。 家族で食卓を囲み、サスケの誕生日を祝った。 昔のように手放しで喜びを表現しなくなったものの、照れ臭そうに両親やおれからの祝福を受け止めていた。 そんなサスケの様子を見つめながら、ああ、自分の幸せはサスケの幸せとともにあるのだと、そんなことを考えていた。 サスケが幸せなら兄さんはしあわせなんですよね! PR