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概要:「NARUTO」女性向け二次創作テキスト共同サークル企画・連絡所  傾向:うちはイタチ×うちはサスケ

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世話焼きな彼のセリフ_5、「馬鹿だな、お前だからだよ(お前じゃなきゃ、ここまでしない)」(リレー小説⑩:春壱)

「絶対にチューしてはいけない24」
 設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
 縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。

ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)

春壱のお題ラストです!


音が止んだ。
聞こえなくなった。

湯口から注ぎ込むお湯のおとだとか、温泉に浸る人々の喧騒だとか、風に揺られる木々のざわめきだとか、小鳥の囀りだとか。

そう言った音という音が聞こえない。

聞こえるのは今、目の前にいるサスケと自分に息遣いだけ。
次に聞こえたのはごぽっと胸の中から湧き上がる感情。
おれがずっと蓋をしてきた感情。

明確な輪郭をもって、その感情の正体を知った日からそっと胸の奥底に沈めて蓋をした。
開けてはならない。
大切な感情だからこそ。

それが、サスケの一言で蓋が俄かに開こうとしている。

いけない。
自惚れてはいけない。
相手に同じ感情を返して欲しいと思ってはいけない。

じっとおれを見上げるサスケから体を離し、上気した頬に伝う汗をきゅっと拭ってやる。
「のぼせたんじゃないか?少し長く浸かりすぎたか?」
サスケの言ったことに対してひどくとんちんかんな答えをしているのはわかっている。案の定、「違う」と抗議の声を上げた。
「サスケ、声が…」
と言った瞬間、
「イタチ?イタチか?」
見つかってしまった。

それからひどく不機嫌なダンゾウに当たり散らされるように任務を言いつけられ、苦労しただのなんだのと、少々ねちっこい嫌味を聞かされた。
強引に有休をとったとサスケに言った手前、あまり彼らの言い分をサスケに聞かせたくなかったので、話半ばで浴場からサスケを連れだした。

脱衣場で袖を通しながらサスケは不機嫌とも、不満ともつかない複雑な表情をしていた。
「サスケ、悪かったな」
彼の1年に1度の大切な日に嫌な思いをさせてしまった。
「アンタのせいじゃないだろ」
そういうとサスケはまたむっつりと口を閉じた。

温泉を後にし、ふと思うところがあり、おれはサスケの手を取った。
サスケの体が一瞬びくりと跳ね、固まるのを感じたが、気づかないふりをした。

「行きたいところがあるんだが、いいか?」
サスケを連れだすために使った口実が、こんなところで役に立った。
「行きたいところ?ここじゃないのか?」
「少し歩く」
せっかく汗を流したばかりだが、いいかと聞くとサスケはコクリと頷いた。

町を抜け、来た道を戻る途中で街道から外れる。
鬱蒼と茂る草木を掻き分けるのも面倒だと、木から木へと飛び移る。
こんな辺鄙な場所に何があるんだと文句を言われるかと思ったが、サスケはおとなしくぴたりと後をついてきた。

薄暗い林を抜け、視界がぱっと明るくなる。
切り立った崖の上にぽかりと出来た空間。そこからは遠く海に沈む夕日が見える。
遮るもののなにもない、ただ森と、遠くに見える海と、そこにゆっくり沈んでいく太陽。それだけ。
「ここは…」
サスケが目の前に広がる景色に目を瞠る。
「おれのとっておきの場所だ」
「兄さんの?」
任務の帰りにたまたま見つけた場所だった。
何もかもが赤く照らされ、ゆっくりと夜に包み込まれていく瞬間の美しさに感動した。
いつか、サスケを連れてきてやりたいと思いながら、なかなかその機会を得られなかった。
「兄さん…今日、本当は任務だったんだろ?」
「本当は、というのは少し違うな。もともと休みだったが直前でひっくり返されかけたんだ」
「同じだろ」
やはり、先程のやり取りを気にしているようだ。
当然か。
おれに弱みを見せることや、おれと比較されること以上にサスケが敏感になるのは、おれへの他人の眼や言葉なのだから。
何かと意見が対立する父とおれのやり取りに身をすくませたり、他人のおれに対する妬みや嫉みに対しては怒りを露わにした。
おれに弱みを見せたくない、と本音すら隠してしまうくせに、おれのことになるとその心の内を驚くほどストレートに出すこの弟がただただ、愛しい。

こぽっと再び心の水底に沈めた想いが息づく。

「気にするな、サスケ。おれは何とも思っていない。今日はお前の誕生日だから、どうしても一緒にいたかった」
「だからって…兄さんがあんなこと言われる必要なんてないじゃないか!オレのせいで兄さんが悪く言われるのはいやだ。放っておいてよかったんだ」
これはおれが弁解するほどムキになるな、こいつ。

いけない。
自惚れてはいけない。
相手に同じ感情を返して欲しいと思ってはいけない。
でも…

「馬鹿だな。お前だからだよ。」
「え…」
「お前じゃなきゃ、ここまでしない」

そう言っておれはサスケを抱き寄せた。
暗部から隠れるためじゃない。
ただ、目の前の弟を抱きしめたいと思ったから抱き寄せた。


それが、決して開けてはいけないと蓋をし、胸の奥に沈めた感情だった。


お題配布元:「確かに恋だった」さま

時間がないので急展開に次ぐ急展開!
もうチューしちゃえYO!

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