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「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)
イタサスといえば。
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体や髪を洗い終え、いよいよ湯に浸かる。折角なので人のいる屋内の湯は避け、外の露天風呂まで行くことになった。
夏の日差しがまだ厳しいこの時間、思った通り外の湯にはおれたちの他は誰もいない。広さはさほどでもないが、竹林と岩に囲われ風情のある風呂の作りだった。
「タオル」
先に湯に浸かった兄さんが言う。
「湯に入れるなよ」
「そんなことは分かっている」
打撲の痣を隠すため腰に巻いたタオルのことだ。
兄さんには初めから知られていたのだからもう意味はない。岩の淵に腰を下ろし、タオルの結び目に手をかける。それでもやはり自分の弱さを自ら晒すようで気が進まない。すると、
「兄弟だろ、恥ずかしがるなよ」
兄さんは先程と同じ言葉と仕草でおれのタオルを悪戯に引っ張った。でもその中におれへの優しさだとか労りだとかが確かにある。おれは観念してタオルを取った。
打撲の痣はもう本当に小さい。兄さんは特に何を言うでもなかったが、だからこそ兄さんの隣に並び湯に入ったおれは、その時のことを任務内容に支障がない程度にぽつりぽつりと話した。
交戦状況や相手の技量、手並み、打撲を負った過程もおれの体捌きも全て。
言い訳じみていないか。途中そう何度も思った。もう話を切り上げるべきじゃないのか。そうも思った。
けれど、相槌に促されるまま心の内を形にしていくと胸に突っかかっていたものが、きちんと腹の中に落ちてそこに収まっていくような気がした。
「早く治ればいいな」
おれの話を聞き終わった兄さんはそれだけを言った。おれも「そうだな」とだけ答えた。
こうして明かしてみればたかだか腰の打撲、おれの手落ちだ。何のことはない。
でも、やっぱり兄さんに言うには時間がかかる。
その場にふと訪れた無音に居た堪れずに、おれは適当に訳を言い繕って兄さんから少し離れた。
本当にいつからおれはこんなにも兄さんに対して強情になってしまったのだろう。
離れて湯に浸かる兄さんをぼんやり眺めながら思う。
誕生日のこと、非番のこと、本当は一緒に出掛けたかったこと、怪我のこと。どれも大したことじゃない。ほんのささいなことばかりだ。きっと兄さんだってそう思っている。
「一緒に遊ぼう、兄さん」
「手裏剣術の修行に付き合ってよ」
昔はそんな風に言えたのに。
猫バアのところにだって、任務にだって、連れて行ってくれとねだれたのに。
今はもう言えない。
口許ぎりぎりまで湯に沈む。
熱い湯だ。白い湯けむりにこめかみにまた汗がにじむ。濡れた髪から水滴が滑って落ちた。
「……」
たぶんおれは怖いのだ。兄さんに、取るに足らない存在、聞き分けのない子供だと見做されてしまうのが。
だから強がる。甘えも弱音もいらない。吐かない。立派な忍。そんなおれならきっと兄さんだっておれのことを認めてくれる。
けれど一方ではまだ捨てきれない、拭えない、幼い頃からのイタチへの思慕がある。おれのために時間を取ってくれたことがこんなにも嬉しい。
兄さん。
イタチ。
こんなにも強く、苦しく、幸福に、たとえば他所の兄弟も兄のことを弟のことを思うものなのだろうか。
そういうことを考えていると、そのイタチが静かに湯をかき分け、こちらへとやって来た。
「サスケ」
「兄さん?」
どうしたんだ。もう上がるのか。と問うおれの言葉は「しっ」と潜められた声と共に口に当てられた兄さんの手のひらに塞がれ、奪われた。
瞬くと、やにわに体を抱かれる。重なる肌の感覚に一瞬すべてが真っ白になった。
「にい…っ」
「喋るな」
そのまま近くの岩陰に押し込められ、今度は上から覆い被さるように兄さんに抱きすくめられる。
「急になにしやがる」
イタチの体に強く抱き寄せられているため上手く喋ることが出来ない。イタチがおれを抱きすくめた理由はこれが狙いだろう。
「…木の葉の暗部だ」
「暗部だと…?」
イタチの囁きにそっと露天風呂の入り口の方の気配を窺う。あちらからはここが死角になっているため、おれたちに気付いた様子はないが、確かに二人分の気配がある。
「だが、どうして隠れる必要がある?」
休日、兄弟で温泉に来ているだけだ。なにも疾しいことはない。
と、おれは思っていたのだが、
「実は今日は少々強引に有給を取ったんだ」
「え…」
「そのおれの代わりに任務に出てくれたのが彼らだ。まあ早く片付いた上、温泉に立ち寄れるほどの任務だったみたいだが」
顔を合わせるのは少々心苦しい、ってそりゃそうだろうよ。
経緯を聞き、兄さんの腕の中で兄さんに呆れる。しかし当の兄さんはどこ吹く風だ。
「だから、彼らが立ち去るまで少し辛抱しろよ、サスケ」
「辛抱って」
「しばらくはこのままだ。おしゃべりも控えろ。見つかる」
そんな。
抗議をしようとした口はまた手で塞がれる。
兄さんは暗部の様子を窺っているようだったが、おれはそれどころではない。
熱い。
体が火照るのは湯の熱のせいではなく、兄さんの肌の温かさがおれにも伝わっているからだ。
石鹸の香り。兄さんの胸板。鎖骨。首筋。玉を結ぶ水滴。流れる汗。息遣い。
「に…にいさん…」
おれは兄さんの手のひらの下で呻いた。唇がその少し熱い手のひらに擦れる。見上げると、兄さんはこちらを見下ろしたところだった。
ああ。
こんなにも強く、苦しく、幸福に、たとえば他所の兄弟も兄のことを弟のことを思うものなのだろうか。
先程の問いがまたぐるりと回る。ぐるぐる回る。
喋るなと言われたが、もう無理だ。限界だ。
この胸に渦巻くわだかまりはきっと兄さんに話さなければ、どうにもならない。
さっきのように聴いてほしいんだ、兄さん。
「苦しい…」
打撲なんかよりもずっと痛くて苦しい。
「サスケ…?」
「この胸ん中モヤモヤしてるの、アンタが関係してるっぽい」
にいさん、と呼んだ声は思うよりもはるかに強く兄さんを求めていた。
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お題配布元:「確かに恋だった」さま
未だ オチが見えないので、とりあえず急展開を迎えてみた…!
イタサスといえば壁ドン。壁ドンといえばイタサス。押し付けるのが似合う兄さんと、押し付けられるのが似合うサスケ。王道!
そしてせっかくの温泉なので裸で抱き合ってみた。王道…!兄さんの体がサスケより一回り大人の体なのが萌えます。
急展開、新展開、意外な展開。
展開を書くのは好きなんだなあ…!
オチがいつも思いつかないんだなあ…。
よろしくなんだな!