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担当:イタチ視点→式、サスケ視点→春壱
形式:リレー。
デパートで挨拶に持っていく菓子折りを買い、イタチと俺は駅へ向かった。平日のラッシュ時と違い、人影はまだまばらだ。
改札の近くでは海外旅行にでも行くのだろうか。大きなトランクをひく人たちの姿が見える。逆に手持ちの荷物が菓子折りの煎餅だけの俺たちの方が浮いているような気がした。
イタチは券売機の前で目的地までの金額を確認している。今日はこのぐるぐると回り続ける路線から遠く離れた場所へ行くんだな・・とぼんやりと交錯する路線図を見ているとイタチは隣で切符を買っていた女性が落とした小銭を拾ってやっていた。その流れるような所作は紳士的というのだろう。手渡された女性の頬が赤くなり、おずおずとお礼を言っていた。
おい、だからその笑顔の安売りやめろって。この天然タラシ。
「サスケ、ほら」
そう言って差し出された切符をむしり取り、すたすたと改札へ向かう。
どうせイタチにとっては見知らぬ女性に優しくするなんて些細なことで、そのことでいちいち乱されている俺の気持ちなんてどこ吹く風なんだろう。
自分でも小さいということはわかっているんだ。嫌になるくらい。
環状線が人身事故で遅延という電光掲示板の表示が目の端に映った。
ふと、昨夜、電車が遅延にでもなればいいと考えたことを思い出し、ばかだな、と浮かれた自分を一笑に伏した。
俺たちが乗る電車はホームのはずれの方にあった。ローカル線ということもあり、停車している電車に近づくにつれて人影はまばらになった。
イタチに先に行っててくれと声をかけ、自販機の前で立ち止まる。
汗をかくような季節ではないが、暖房のきいた車内では喉が乾燥するだろうと思い、温かいペットボトルのお茶を買った。
席に着くとイタチがコートを脱ぎ、荷物を網棚に乗せているところだった。
車内はロマンスシートでところどころボックス席にしてあった。
「飲み物買ってきた」
そう言ってペットボトルを座席の背についているホルダーに入れた。席に着こうとして通路側にイタチのコートが置いてあるのでよけようとすると「お前は奥だ」と言われた。
「は?」
「窓際の方が景色が見えるだろう?」
「子ども扱いすんな。そんなんどっちでもいい」
「じゃあ、お前が奥だ」
そう言っておかしそうに笑った。
席に着いてダウンジャケットを脱ぎながら、俺はポケットに入れたものの存在を思い出した。それを取り出してイタチの膝に投げる。
「?サスケ、これは?」
「見てわかんねーのかよ。しるこだよ」
「いや、見ればわかる。どうして俺に?」
「・・甘いもの買ってないだろ」
デパートでイタチは俺が昔から好きだった煎餅を贈答用とは別に買った。しかし、それ以外には何も買っていない。もともとイタチは甘党なので、煎餅だけでは物足りないんじゃないかと思っただけだ。もっとも1本100円の安物の甘味だから味の保証なんてないが。
「そうか」
とイタチはふふっと笑った。
あークソ。イケメンだな。
「不味かったら捨ててくれ」
「大丈夫だ」
そう言って冷気で冷えた手を温めるようにお汁粉の缶を握った。
やがて独特の声で車内アナウンスが入り、扉が閉まった。ごとんと古い車体がゆったりと動き出す。人が増え始めた繁華街の景色が後ろへ後ろへと流れていく。
そう言えば、俺はうちはの親戚のことをろくに知らない。せいぜい、小さい頃にイタチと一緒に遊んでもらったシスイとその家族ぐらいで。
兄さんは会ったことがあるのだろうか?これから尋ねるマダラという奴に。
自分の家が由緒正しい家柄であるということは小さい頃から教えられてきた。しかし、実のところ俺にはそれがどれほどのものなのかよくわからない。俺にとってのうちはという一族は兄さんや両親から聞かされた情報がすべてで、実際はどんなものなのか想像もつかない。
『さすが、うちは一族の子だ』
会えば一族とやらに、きっとそう言われるんだろう。兄さんは。
そんなの当り前だ。兄さんはいつだって完璧だからな。
俺が嫌なのは自分が劣っていると言われることじゃない。口に出さなくてもわかる、あからさまにイタチと俺を比較する目、「優秀な兄に比べてどうなんだ?」と値踏みする目を俺に向けられることをイタチが気にしていること。それを俺に悟らせまいとしていることも、「お兄さんのように頑張って」と言われる俺を見るたびに、イタチの表向きの笑顔が一瞬失せることも俺は知っている。
言っとくが俺は別に馬鹿でもなんでもないぞ。高校だって主席を維持し続けている。イタチが桁外れにできすぎるだけだ。
身内に変な気を遣わせる言い方ってどうなんだよ。少し考えればわかることだろうに・・
俺が一人で思考をぐるぐるさせているのがわかったのだろうか。イタチがいつの間に買ったのか、車内販売のみかんを差し出してきた。
「意外と甘いぞ」
俺は素直に受け取る。イタチの前のホルダーにはこれまたいつの間に開けたのかお汁粉の缶。
おい、それ飲んでみかん食って甘いって言えるのか?甘党の舌はいろんな甘さを感知できるのか?それともそれもアンタの類まれなる才能なのか?
俺がふっくりとしたみかんの皮を剥きながらまじまじとイタチを見ていると、最初の停車駅を告げるアナウンスが入った。
「先はまだ長いな」
イタチはそう言って、お汁粉に口をつけた。
だから、その食べ合わせどうよ?!
そんなこんなで電車に乗りました。
うちは一族のお家までの生き方がわからないのでしきさんにナビをお願いしようと思います。
しきさんの書く兄さんはスマートでかっこよくてドキドキしますね。この先どんなかっこいい兄さんが見られるのか楽しみv
どうもうちのサスケが兄さん厨をこじらせます。
前回サスケ君が欲望駄々漏れにしてしまったので今回は自重。
あれです。深夜テンションです。夜中にポエム書くような感じです。