[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「一期一振」おまけ無配
2016.01.10発行の同人誌「一期一振」のおまけ無配ペーパーの修正再録です。
2016.10.16の「全忍3」に向けて1~3日に1話ずつ更新予定です。
※ 戦国パラレル(「一期一振」の設定・あらすじ・サンプルはこちら)
※ イタチ(18才)×サスケ(13才)
※ イタチ兄さんは「八坂ノ国」の若き領主、サスケは女郎置屋「暁」で普段は不寝番、兄さんが来るときだけ「扇」という名で女郎(男)として働いています。
※ 兄さんはサスケを弟と知っていますが、サスケは兄さんを兄とは知りません。
※ これはサスケがまだ兄さんを兄さんとは知らず、体の関係を持った「一期一振」の1章と2章の幕間の小話集です。
※ 本編「一期一振」はシリアスですが、おまけ無配はコメディです。
※ 春壱・式の合同文
------------------------------------------------------------------------------------------
■ うちはイタチのおしゃべりくっきんぐでおま
「こっ、これは…!」
突然旦那さんから声を掛けられ、サスケはしどろもどろになった。
だいたい何をしていただなんて答えられるはずがない。欠けた人参を手にしたまま顔を真っ青にしたサスケは「うう」と呻いて挙動不審に陥る。
そんなサスケをうちはの旦那さんはしばらく不思議そうに眺めていたが、やがてふっと微笑んだ。得心したように頷く。
「そうか。お前、腹が減っていたんだな」
「はぁ…!?」
何故そうなる。サスケは素っ頓狂な声を上げた。
だが、うちはの旦那さんはサスケを押し退けると、「暁」の台所を陣取り、着物まで襷掛けをし始める。
「よし、今夜はオレが作ろう」
いやいやいや。旦那さんを慕うサスケもさすがに付いていけない。彼は武家の名門の侍ではなかったのか。
「何言ってんだ、アンタ!」
「待っていろ。すぐにうまい天照かりーを作ってやるからな」
「あ…あまてらすかりー…?」
聞き慣れない料理にサスケは首を傾げる。
旦那さんは桶に張った水で手を洗い、置いてあった包丁を取り上げた。
「天照かりーはオレの母の得意料理だった」
「だったって…」
「随分前に亡くなった。折角だ。お前にも母の味を知ってほしい」
「そ、そういうことなら…」
天照かりー。その正体は想像も出来ないが、とにかく旦那さんの興味が料理に移ったのは幸いだった。背後では何故かこのところめっきり病人然としてしまった長門も胸を撫で下ろしている。
旦那さんは手際よく野菜を洗うと、謎の天照かりーなるものを作るため、まずはサスケが持っていた人参を包丁ですとんと切り落とした。そして、
「ほう、茄子もあるのか」
台所の端にあった茄子をも目敏く見つけ、
「これもかりーに入れるか」
茄子もまな板の上ですとんと切る。
「ところでサスケ」
「なんだよ」
旦那さんは次々に根菜を刻みながら、傍らで不安げに彼の手元を見つめるサスケに言った。
「お前、オレのために励んでいることがあると聞いたが?」
「なっ…!」
驚きのあまり、サスケは掴んだジャガイモを危うく落としそうになる。サスケが旦那さんのために口淫の練習をしていると誰かに聞いたのだろうか。しかし、まさかそんなことを一生懸命練習しているなどと口に出すことも出来ず、サスケは黙りこくった。
「サスケ?」
「た、大したことじゃねぇ…それよりその、あまてらすかりー? ってのを早く食ってみたい」
精一杯甘えた声で旦那さんの着物の袖を引いて急かしてみせると、旦那さんは「そうか」と優しい笑みを浮かべた。
一方、二人が楽しげに料理を作っている「暁」の台所の外では買い物籠を片手に料理番のトビは立ち尽くしていた。
「あのぅ~姐さん達のご飯が作れないんですけど~!」
出来上がった天照かりーを部屋に運んで二人で食べる。名前からはどんな料理なのか想像もつかなかったが、香辛料の絶妙な辛味や食欲をそそる独特の匂いもサスケの嗜好に合った。
「サスケ」
旦那さんはにこりと笑って匙に掬ったかりーをサスケに差し出した。
「なんだよ」
「口を開けろ」
急に何を言い出すのかとサスケは首を捻る。しかし、巷の甘味処で仲睦まじい男女が同じようなことをしていたのを思い出し、旦那さんが何をしようとしているのか理解した。
甘い雰囲気は今もまだ苦手だ。けれど、旦那さんとならきらいじゃない。
「…一回だけだからな」
と断って、サスケは小さく口を開けた。
天照かりーなるものは見た目こそ焦がしたように黒いけれど、この上なく美味かった。
「アンタの母親は料理が上手だったんだな」
「そうだな」
「他にもあるのか」
「あるよ。いずれまた作ってやろう」
「そうか」
サスケには侍の旦那さんがどうしてこんなにも彼の母の料理を作って食べさせたがるのか不思議だった。ただ、こんなにも美味いのなら、彼の母親が生きている内に一度くらいその人の手料理を食べてみたかったとも思うのだ。
------------------------------------------------------------------------------------------
06へ続く
「一期一振」おまけ無配
2016.01.10発行の同人誌「一期一振」のおまけ無配ペーパーの修正再録です。
2016.10.16の「全忍3」に向けて1~3日に1話ずつ更新予定です。
※ 戦国パラレル(「一期一振」の設定・あらすじ・サンプルはこちら)
※ イタチ(18才)×サスケ(13才)
※ イタチ兄さんは「八坂ノ国」の若き領主、サスケは女郎置屋「暁」で普段は不寝番、兄さんが来るときだけ「扇」という名で女郎(男)として働いています。
※ 兄さんはサスケを弟と知っていますが、サスケは兄さんを兄とは知りません。
※ これはサスケがまだ兄さんを兄さんとは知らず、体の関係を持った「一期一振」の1章と2章の幕間の小話集です。
※ 本編「一期一振」はシリアスですが、おまけ無配はコメディです。
※ 春壱・式の合同文
------------------------------------------------------------------------------------------
■ 暁炎上
姐たちの視線がとんでもなく痛い。まさに針のむしろの上にいるような気分だ。だが、気後れしてしまいそうなる自分を奮い立たせるためにもサスケは勢いを付けて重ねた。
「鬼鮫子姐さんが、その、そこを咥えたらいいって言っていたんだが、本当なのか?」
「ははあ、なるほどね」
サスケの必死の形相に呆気に取られていた姐たちもすぐさま得心した。サスケの唯一の客であるうちはの旦那さんは、水揚げ以来それはそれはサスケにご執心で、文や高価な品々を店に届けさせていることは彼女らも知っている。
「うちはの旦那さんにして差し上げるんだね」
「う…まあ…そんなにいいものなら…」
「そりゃあもう上手にしたらすぐに昇天しちまうくらいイイもんだよ」
「昇天だと…!?」
サスケは思わず声を上げた。
まさかそんなにも必殺の技だったとは、この世も奥が深い。思えばサスケは贈り物のことだけでなく、閨でも旦那さんに手解きをしてもらうばかりだ。よし、と腹を決める。鍛練や修業はサスケの望むところでもある。
「姐さん。オレにその技を教えてくれ」
「そりゃかまわないけど」
顔を見合わせた姐たちは、面白がって早速禿に台所から茄子を持って来させた。
よく熟れた茄子を持たされ、サスケは首を傾げる。
「…食うのか?」
「違うよ。それを旦那さまのアレに見立てて咥えるのさ。さあ、初めは舐めてみな」
「舐め…これをか」
なんだか騙されているのではないだろうか。サスケは茄子を疑わしい目で見つめる。すると姐たちは未だ半信半疑の弟分の耳にそっと艶やかに囁いた。
「アンタ、自分のものを旦那さんに咥えてもらっているところを想像してごらんよ」
「ば…! そんな!」
あまりの羞恥に絶句する。
だが、姐たちにそそのかされとはいえ、思わずあの人に閨で愛される自分の姿を思い描き、サスケは腰の奥がずくんと熱く疼くのを感じた。これは確かにイイかもしれない。
「よし、やってやる」
サスケが意を決し、茄子を口許へと近付けたその時、イタチの使いの烏を肩に連れた長門がひょっこりと部屋に顔を出した。
「サスケ、いい知らせだ。今度イタチが…」
と言いかけ、一目サスケの姿を見た長門は仰天した。
「な、な、な、何をしているんだ!」
サスケに飛び付く。
だが、サスケは意にも介さない。邪魔な長門を押し退け、ちろりと赤い舌を出して、茄子を舐めてみせる。
「何って修業だ」
「修業!? いや、だめだ! そんな君の姿をあいつが見たら、暁が燃え尽きるまで焼き払われる!」
「知るかよ、そんなこと」
こうして頭を抱える長門を他所にサスケの修業が始まったのだった。
------------------------------------------------------------------------------------------
04へ続く
「一期一振」おまけ無配
2016.01.10発行の同人誌「一期一振」のおまけ無配ペーパーの修正再録です。
2016.10.16の「全忍3」に向けて1~3日に1話ずつ更新予定です。
※ 戦国パラレル(「一期一振」の設定・あらすじ・サンプルはこちら)
※ イタチ(18才)×サスケ(13才)
※ イタチ兄さんは「八坂ノ国」の若き領主、サスケは女郎置屋「暁」で普段は不寝番、兄さんが来るときだけ「扇」という名で女郎(男)として働いています。
※ 兄さんはサスケを弟と知っていますが、サスケは兄さんを兄とは知りません。
※ これはサスケがまだ兄さんを兄さんとは知らず、体の関係を持った「一期一振」の1章と2章の幕間の小話集です。
※ 本編「一期一振」はシリアスですが、おまけ無配はコメディです。
※ 春壱・式の合同文
------------------------------------------------------------------------------------------
■ 鬼鮫子のお部屋 る~るる、るるる、る~るる♪
「は?」
鬼鮫子の言葉が理解できず、サスケは目を瞬かせた。閨で返すとは一体どういうことだろうか。
「下世話な話ですが、サスケくんはいつもうちはの旦那さんとはどのように過ごしているんですか」
「どのようにって…」
訊ねられ、口籠もる。旦那さんは水揚げの日と同じようにいつも陽も落ちぬ前からやって来るため、まずはサスケの仕度を待ってもらい、それから共に夕餉を取る。その間なにが楽しいのか知らないが、サスケのことを聞きたいと言うので、サスケはとつとつと弥彦や長門に習った剣のことを話している。姐たちから教えられた手練手管の話とは随分様子が違うとは思うのだが、旦那さんが望むのだから、まあいいかと考えていた。そうして酌をする内に夜も更け、後は旦那さんが導くままにその腕に身を任せれば、いつの間にか全てが終わり、別れの朝を迎えている。
「サスケくん…」
サスケの話に鬼鮫子は呆れた顔をした。
「ここは女郎置屋なんですよ」
「当たり前だ。そんなことは知っている」
「いいえ、全然分かっていませんよ。まあしかし、そんなサスケくんがするからこそお返しになるかもしれませんねえ」
サスケの姿を上まで下まで値踏みをするように眺めた鬼鮫子にサスケはすぐさま食い付いた。聞きたいのはその話だ。説教などではない。
「だから、お返しって何だよ。閨で何をすればいいんだ」
「そうですねえ」
鬼鮫子はくくっと喉を鳴らすと、おもむろにサスケに顔を寄せ、こそりと耳打ちをした。
「は? 咥えるだと? 何を?」
「だからナニをですよ」
サスケの反応が愉快だと言わんばかりに、にやにやと笑いながら鬼鮫子はサスケの股間を指差した。
「ば、バカ言え。そんなことであの人が悦ぶわけないだろ!」
もともと性戯に疎いサスケは口淫というものを知らない。故に男の逸物をしゃぶるなど想像も出来ない。
「はぁ…あなたはこんな場所で暮らしているというのに本当に純粋というか初心というか…」
やれやれと鬼鮫子は溜息をついた。
「そ、そんなにいいものなのか?」
不寝番として剣術の鍛練は日々こなしているが、花魁として相手を悦ばせる事については無知に等しい。サスケの客はうちはの旦那さんだけだが、この見世の振袖新造「扇」という名をもらった限りは花魁として閨での技術も学ばなければならないだろう。
「嘘だと思うのならお姐様方に聞いてみてはいかがですか? サスケ君はまだまだ新米ですから、きっと丁寧に教えて下さいますよ」
鬼鮫子がそうまで言うのならば姐達に聞くしかない。サスケはすぐさま姐達のもとへ向かった。
時刻はお昼前、仕事を終えて一眠りした花魁達が寝床から抜け出し、身支度を整える為に一階に降りてきていた。
「おや、サスケじゃないか。どうしたんだい?」
「聞きたいことがある」
いつになく神妙な面持ちのサスケに姐達は一体どうしたのかと顔を見合せる。
「その…男に奉仕するって…どうするんだ?」
よもやサスケの口からそんな言葉が出るとは思いもよらず、その場にいた花魁達は皆一様にぽかんとあっけにとられてしまった。
------------------------------------------------------------------------------------------
03へ続く
「一期一振」おまけ無配
2016.01.10発行の同人誌「一期一振」のおまけ無配ペーパーの修正再録です。
2016.10.16の「全忍3」に向けて1~3日に1話ずつ更新予定です。
※ 戦国パラレル(「一期一振」の設定・あらすじ・サンプルはこちら)
※ イタチ(18才)×サスケ(13才)
※ イタチ兄さんは「八坂ノ国」の若き領主、サスケは女郎置屋「暁」で普段は不寝番、兄さんが来るときだけ「扇」という名で女郎(男)として働いています。
※ 兄さんはサスケを弟と知っていますが、サスケは兄さんを兄とは知りません。
※ これはサスケがまだ兄さんを兄さんとは知らず、体の関係を持った「一期一振」の1章と2章の幕間の小話集です。
※ 本編「一期一振」はシリアスですが、おまけ無配はコメディです。
※ 春壱・式の合同文
------------------------------------------------------------------------------------------
■ ブラック領主に仕えてるんだが、もうオレは限界かもしれない
八坂ノ国を東方と西方に割り、領土を争う一族間の小競り合いのいくさも一段落したある日のこと、イタチは館にある厩へと一人足を向けていた。
顔こそ常の通り能面のようだが、その足取りは至って軽い。イタチがいくさに赴いている間に先頃女郎置屋「暁」でついに再会が叶った弟が文を届けてくれていたのだ。
故あって今は兄と明かすことは出来ないが、イタチはこの弟、サスケをたいそう可愛がり、折りにつけて様々なものを側近のシスイを通し、贈っていた。サスケからの文にはその礼と遠回しながらそろそろ会いに来てほしいとの旨が綴られており、いくさが終わった折りも折りだ、イタチは早速「暁」へ出向くことにした。
サスケのことを思えば心も弾む。道の途中にある「うちは煎餅」にでも立ち寄り、甘いものが得意でないという彼のため何か見繕っていこうか。そんなことすら考えるイタチの前に、
「待て、イタチ」
腹心であり、友でもある男、うちはシスイが立ちはだかった。
久方ぶりに弟に会えるという喜びに胸を踊らせていたイタチの心は急に萎えた。シスイは難しい顔をしてじとりとイタチを睨んでいる。この男がこういう顔をしている時に良い話を聞けたためしがない。しかし、苛立ちは表情に出さず、イタチは至極冷静な態度でシスイを見据えた。
「なんだ?」
「なんだじゃない。お前、供も連れずにどこに行く気だ?」
確かにまだ他国との小競り合いは続いている。力をつけつつある八坂を警戒し、その芽を摘もうとする国や、奪い返した領土をそのまま横取りしようと目論む国、様々な思惑が国と国の間で渦巻いている。イタチもいつ暗殺者によって寝首を掻かれるともしれない。そんな状況でふらふら出歩くなとシスイは言いたいのだろう。
「ちょっと厠にな」
「厠に行くのに馬に乗る必要があるのか」
もちろんない。そもそも厠にいくつもりもない。
シスイはイタチの口からはっきりと行き先を告げるまで梃子でも動かない、という顔をしている。しかし、この男のことだから大方予想はついているのだろう。
「用はなんだ」
「はぐらかすなよ」
案の定、不用意にふらふらと出歩くな、イタチは国を背負った立場であり、もう自分一人だけの体ではないことを自覚しろと小言を言われた。
だが、こうしている間にも時は刻一刻と過ぎていく。いくらイタチの愛馬「月読」が早馬とはいえ、ここから「暁」まで半日かかる距離だ。なんとか話を切り上げたい。
イタチは致し方ないと小さく嘆息し、空に向けて指笛を吹いた。するとどこからか烏が飛んできてシスイの周りを威嚇するように飛び回った。
「うわっ…! なんだ!」
「明日の晩には戻る」
「明日の晩って…! ちょっ…! 待てよ! おい! イタチ!」
くせっけの髪を更に烏にもじゃもじゃにされながらシスイが言うが、イタチは一目散に厩へと向かった。
「あとのことは頼んだ」
「イタチ、お前! 覚えてろよ!」
そのときのシスイの絶叫は館中に響いたという。
------------------------------------------------------------------------------------------
02へつづく