[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
設定:21才大学生イタチ×16才高校生サスケ。同居実家暮らし。できてます。
担当:イタチ視点→式、サスケ視点→春壱
形式:リレー。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------
マダラの話というのは、端的に跡継ぎ、というよりも彼の片腕についてのことだった。
うちはの結束は固い。だが、だからといって必ずしも一枚岩とは限らない。時代の流れの中この一族発祥の代々の地を離れたうちはもあれば、残ったうちはもいる。
そして弟を失い、夢半ばで破れたマダラは、失意の内でありながら、この地で新たに力を蓄え再起を図ろうとしていた。どう表舞台に戻るのか考えているのか、所詮人の心だ、おれは知らない。だが、
「お前、時々周りの者たちが愚かに見えはしないか。なぜこんな簡単なことも解らない、見通せないと思ったことはないか」
マダラの言ったそれだけは理解できた。
同時に見抜かれたとも思った。
十三の頃のことだ。
人より優れたゆえの孤独と苛立ち。
誰にも明かしたことのないそれがマダラとおれとの共通項になった。
「イタチ。おれのところへ来い」
そういったマダラの誘いも一興だと思っていた時分も確かにある。ままならない思いが制しきれず、父には逆らい、母の気遣いを受け取らなかった。サスケはまだ幼かったけれど、何か感じるところがあったに違いない。
距離を置くべき。そう判じた。判じていた。だが、
「来ないのだな」
マダラは酒を干して、言った。
マダラはおれの手、指の噛み痕を見ていた。風呂場でサスケに噛まれた傷痕だ。
それが理由か、と問われた。
これが理由だ、と答えた。
いつまでサスケがおれを必要とするかはわからない。サスケがおれと関係を持ちたがるのも、もしかすれば喪失を恐れる余り兄を慕う道をただ踏み外した一時の感情なのかもしれない。
サスケは強い。子供じゃなくなる日が必ず来る。きっとそれはもう遠くない。
だから、必要とされる間は傍にいたい。今のおれがサスケに与えられるもの、それがいつか大人になる彼の心を支えられるのであるのなら尚更に。
そうして、サスケのためじゃない。失いたくない。そう思っている、おれのために。
「弟は大事にしろ」
と、マダラはそれだけを言った。
イズナを守りきれなかった無念がどれほどのものか、サスケがいるおれには解り兼ねることだった。
マダラとの話を終え部屋へ戻ると、既に明かりは落とされていた。枕元の行灯だけが辺りを茫洋と照らしている。
サスケは並べて敷かれた布団に、こちらには背を向け横になっていた。眠っているのだろうか。おれもまた声は掛けずに隣の布団に体を横たえる。
けれど、彼の上下する背を見つめる内、ふと思うところがあって、足だけをサスケの布団に潜り込ませた。浴衣の裾を乱して肌に触れる。
やはり、冷たい。冷えている。
「布団に入っていたのに、冷えているとはどういうことだ?」
起きていると確信し、訊ねる。
けれど、彼は先程のおれのように黙りを押し通すつもりらしい、何も言わなかった。こちらを向くことすらしない。
「サスケ?」
「…何の話をしてたんだ」
何度か呼んで、漸く答える。
無論、言えるはずもない。余計な不安は与えたくなかった。
一族の話だと曖昧に返す。
彼は「そうかよ」とだけ相槌を打った。
胸が痛む。
全てにだ。
「サスケ」
「なんだ」
「抱いて寝たい」
お前を抱いて寝たい。
初めてサスケが振り向く。行灯の明かりがうっすらと赤く見せる眸は驚きに開かれていた。
「な、に言ってんだ、アンタ。さっきだって…」
「何もしない。ただ抱きたいだけだ。いやならいい」
言うと、サスケはぎゅっと唇を結んだ。布団の中、もぞもぞと端へ寄る仕草をする。
「本当に何もしないんだな?」
同じ布団に入るおれをサスケは訝しげな目で見上げてくる。それごと腕に抱いてもう一度体を横にしながら、おれは戯れに彼の耳に接吻けた。
「してほしいのか?」
冗談だった。からかったつもりだった。ばか、ちがう。そんな答えを期待していた。
だが、おれの胸に顔を擦り寄せたサスケは、
「してくれ」
そう呟いておれの腰に手を回した。ぎゅうと浴衣を握られる。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------
昨日眠さのあまり、「ごめん!眠い!」と春壱さんに謝って寝てしまいました…ごめんなさい。でも今日は仕事が休みなので、一日中イタサス書くぞ!いくぜ108!
そして私のリクエストに答えてくれてありがとう、春壱さん!
「うちの長男がイクメンすぎる件について」
お昼を少し前に控えた頃、うちは家に響き渡るサスケの泣き声。
「どうした?サスケ」
いち早く駆けつけるのは兄のイタチ。慣れた手つきで抱き上げる。
「お腹空いたのか?」
生憎と妻は先ほど買い物に出かけてしまった。
「ミルクはあったか?」
私が立ち上がり、台所を確認するがそれらしきものはない。
「これから作るよ」
と言ってイタチはご機嫌ななめで泣き続けるサスケをおんぶ紐で自分の背に括り付けた。
「お前、作れるのか?」
「うん」
「熱湯を使うんだ。危ないぞ。父さんが・・」
やってやろうかと言いかけたところで
「素人は引っ込んでてください」
あ、はい。わかりました。
・・って・・ええぇぇぇぇええ?!素人?!
誰が?俺?俺か。
ぽかんとしている私を他所に、イタチがてきぱきと準備を始める。
台所の食器乾燥機から消毒された哺乳瓶を取り出し、粉ミルクをぱっぱっとその中に入れた。給湯ポットからお湯を注ぎ、流水でミルクを冷ます。手つきはまさにミコトのそれと何ら変わりない。
なるほど、上手い・・
「サスケ、ほら」
そう言って哺乳瓶の乳首をサスケの口元に持っていってやると、サスケがあむあむと口に含み、必死になって飲み始めた。
その様子を嬉しそうに見つめているイタチの眼差しが兄というよりも母だった。まだ5歳なのに・・
哺乳瓶が空になるころ、腹の膨れたサスケがうとうとし始めた。
「サスケ、まだ寝ちゃだめだ。げっぷしてから」
そう言って小さなサスケの背中をさする。
さすさすさす・・けぷっ!
「よし、もういいよ。サスケ」
よしよしとあやしてやると先ほどの泣きっぷりが嘘のように寝付いた。
完璧だった。ミルクを作り飲ませるところから寝かしつけるところまで。その何もかもが完璧だった。
そりゃ、これだけできれば俺なんて素人に見えるよね。
息子の成長が嬉しいはずなのに、おかしいな・・なんだかちょっと寂しいよ、父さん。
1時間後、帰宅したミコトが洗い上げられた哺乳瓶を見て
「あら、ミルク作ってくださったんですか?ありがとうございます」
と言った。
「ああ、うん。私じゃなくてイタチがな」
妻よ、うちの長男は超イクメンに育ったよ。
ブログサイトで寄せていただいた「幼少イタサス」というお題で3つ書かせていただきました。
前回同様、イメージしていたものと違っていたら申し訳ありません・・!
私も幼少ほのぼのイタサス大好きです!
「母さん、あのね」
小さな兄は日々、弟のすることが目新しいようで、弟が何かするたびに私に報告をしてくれます。
「母さん!サスケが寝返りできるようになったよ!」
あら、そう!すごいわね!
「母さん!サスケがハイハイできるようになった!」
本当?見たいわ。
「母さん!サスケがつかまり立ちしてる!早く早く!!」
はいはい。ふふふ
「父さん!母さん!サスケが歩いた!」
ええっ?!カメラカメラ!あなたー!カメラどこにやったのー?
サスケが生まれてから家は一層明るく楽しくなりました。
イタチが私を呼んでくれる度に、次はサスケが何をできるようになったのか楽しみでなりません。
私達のところに生まれてきてくれてありがとう。イタチ、サスケ。
フガク:「なんでいつもイタチの前でばっかり新しいことができるようになるんだ?サスケは・・」
なんでも一番は兄さんに見せたいちゃっかりさん赤ん坊サスケェ・・
「はやく会いたい」
暖かな春の日差しの降り注ぐ午後。ミコトは縁側で産着を縫っていた。膝の上ではもうすぐ兄になる息子がすうすうと寝息を立てている。
息子の腕の下には先ほどまでああでもない、こうでもないと考えていた弟(息子曰く)の名前が拙い文字でいくつも書き連ねてある。その中に赤いクレヨンでくるりと囲まれた文字。
「サスケ?」
「うん。サスケがいい」
「どうして?」
「強い忍者の名前だから!」
「そう、それはいいわね」
サスケ、サスケ
はやく会いたいなぁ!
兄さん命名
あくる日、イタチとサスケは若者のファッションを多く取り扱っている通りにあるアクセサリーショップまで出かけて行った。狭い店内だが、シルバーから皮、ビーズアクセサリーに至るまで幅広く取り扱っていた。
「ネックレスは任務で引っかけたりしたら危ないな」
「アンタの肩凝り用はその辺大丈夫なのかよ」
「あれはいつも服の下に入れてるから平気だ」
そういう問題か?と思ったが言わずにおいた。
「ピアスもなぁ・・あぶねぇし何より痛い思いをしてまでしたくない」
「それもそうだな。・・サスケ、これならさほど邪魔にもならないし、危険もないだろう」
そう言って差し出されたのはシルバーリング。飾りのないシンプルな作りだが、リングは少し太めで存在感がないということもない。
「兄さんがそう言うならそれでいい」
そうしてイタチチョイスの指輪を手にレジに行くと、イタチも同じものを置いて「会計は一緒でいいです」と言ってイタチが二人分の指輪の代金を支払った。
「二人で同じもの買ってどうすんだよ」
と帰りの道すがら、サスケが呆れたように言った。
「いやか?」
いつの間に取り出したのか、イタチの指には先ほど購入した指輪がはまっていた。
「別に・・」
そう言ってサスケはくしゃりと包みを握りしめた。
―数日後、木の葉警務部隊本部。
「隊長、息子さん、とうとう結婚されるんですね。おめでとうございます!」と言われてフガクは盛大にお茶を噴いた。
「は?!」
「イタチさん、左手の薬指に指輪していましたよ。結婚前からラブラブなんですね」
「な?ななななな???」
事態がまったく飲み込めず、フガクはその場に立ち尽くした。火傷した唇がひりひり痛かった。
―同時刻、任務中の第7班
「ちょ・・・サ・・さす・・さす・・サスケ君?!!?ひだ・・左手・・」
「どーしたんだってばよ?サクラちゃん」
「指輪!!指輪ぁーー!!」
悲壮な形相で悲鳴を上げるサクラを横目に
「ああ、これか。この前イタチと揃いで買ったんだよ」
「おおおおお揃いーーー?!お兄さんと?!サスケ君それどぉいうこと!?」
顔を真っ赤にして詰め寄るサクラを「サクラ~あんまり深くツッコむな。おそらくサスケは気付いてないから」とカカシが窘めた。
「?」
(兄弟でお揃いとか別に普通なんじゃねぇの?)
―同時刻、暗部休憩所
「イタチ、サスケは彼女でもできたのか?」
装備を解きながらシスイがこれから任務に就こうと用意をしているイタチに話しかけた。
「どういう事だ?」
「や、あいつ指輪してたから。結婚してねぇのに左手に指輪つけるってことは相当仲がいいってことだろ?」
「ああ、あれは俺とお揃いだ」
しれっ!
・・・・・・・
「は?」
「俺と揃いで買ったんだ」
「なんで?」
「サスケが俺とお揃いでもいいって言ったから」
しれっ!
「あ、そう・・」
仲、いいんだね。
その場でやり取りを聞いていた暗部の面々がそれ以上聞くことができなかったことは言うまでもない。
兄弟なのでお揃いは当たり前と思っているサスケェ・・
任務の帰り、サスケはたまたま居合わせたサクラといのに捕まった。
今日はいつも着ている服と雰囲気が違うね?どうしたの?とはしゃぐ二人に、「ああ、乾かなかったから兄貴のを借りたんだ」と返した。
梅雨に入り連日の雨。洗濯物が乾かないと母がぼやいた。間の悪いことにしばらく遠征が続いたので、溜まりに溜まった洗濯物がせわしなく洗濯機の中で回り、暖簾よろしく居間にずらりと干されている。
とにかく着られればいいと兄の部屋の引き出しから一枚拝借した。イタチは長期任務で家を空けていたので一枚消えていたところで不自由しないだろうと踏んだのだ。
その代り帰って来た時には今度はイタチが出す大量の洗濯物に母が頭を抱える姿は写輪眼でなくても容易に予想できる未来だ。
サスケ自身、背はだいぶ伸びたと思っていたが、やはりイタチの方が体が大きいため、借りた服は若干その身に余った。しかし、その少し着崩した(?)感じがいいとサクラといのははしゃいだ。正直、服のセンス云々がよくわからないサスケは、サクラといのがこういうのが似合うああいうのはどうかと言うのを「別に」とか「そうか」と適当に相槌を打った。
家に帰ってからサスケがその話をすると、母は「アタナもイタチもその手のことはホント無頓着よね。修行修行って忍術ばっかりで。少しは興味持ちなさい」と笑った。
オシャレと言われも日々の任務でそんなことを気にしたこともなかったし、する暇もない。任務においては動きやすさ、機能性が重要であってデザイン性ではない。それでもあのガイとリーの服装はないなとサスケは思った。
数日後、家に戻るとイタチが帰ってきていた。早くに戻っていたようで、風呂も終え、普段着で家の中をウロウロしていた。
「おかえり、サスケ」と言われてこちらが言おうと思っていた「おかえり」が言えず、なんだかもやもやした。長期任務の跡はいつもこうだった。
風呂に入って夕飯までの時間をイタチと居間で過ごす。互いに任務のことや他愛ないことを話しているときに、ふと、イタチはどうなんだろうとい思った。兄もおしゃれのことを気にしたりするんだろうか?
「なあ、兄さん。おしゃれってどんなんだ?」
「・・どうした?急に」
「や、この前サクラたちに言われて・・しないのかって。母さんに言ったらやっぱりちょっとは気にしろって。別に興味がないわけじゃないがよくわからないんだ」
そう言うとイタチはふむっと顎に手をあて、何やら考え込んだ。
「俺も普段から意識しているわけじゃないからな・・俺たちは任務があるから服装をどうこうするのは難しいからな」
やはり、そう言う結論になよな、とサスケは少なからず胸を撫で下ろした。
「・・アクセサリーはどうだ?手軽につけられていいんじゃないか?」とイタチが手首の周りでくるりと指で円を描く。ブレスレットと言いたいのだろうか。なるほどいい考えかもしれない、と思った。服と違って色々考えずにすむのもありがたい。しかし肝心なのは、
「何をどうつけたらいいんだ?そう言えば兄さん、ネックレスしてたよな?」
「あれはネックレスじゃない。肩凝り解消用だ」
「ピ○プマ○ネループかよ!!」
(あの首周りの輪っかにはそんな効果があったのか・・知らなかった)
「明日は休みだろう?俺も丁度休みだし一緒に見に行くか?」
「いいのか?」
思いがけないイタチの言葉にサスケが顔を上げる。
「ああ。久しぶりに休みが被ったしな」
そんな二人の会話を傍で聞きながら、フガクはなんだか嫌な予感しかしていなかった。
以前に式さんとLINEでやり取りしていたネタより。
式さんが「小咄化を全裸待機してる!」と言ってくださったので、書いてみました。
文字数が多すぎると言われたので2つに分けています。
担当:イタチ視点→式、サスケ視点→春壱
形式:リレー
「イタチと話がある」
だから、お前は出ていけ。
意味深なマダラの言葉を背負ったまま人気のなくなった廊下を歩く。昼間は見えた美しい庭も今は雨戸で閉ざされて見えない。
あの時、イタチは俺の言わんとしたかったことをわかっていたはずだ。なのに知らんふりをした理由は一つしかない。
俺を早くあの場から遠ざけたかったのだ。
イタチとの差を比較されようが、イタチのようにできない自分にがっかりされようが今更どうでもいいと思っていた。それが同じ身内からであったとしても。そんなことにいちいち腹を立て、気にしていてはとても暮らしてこられなかったから。
だが、ここにきてはっきりと言われた気がした。
「お前ではない」、と。
なにが?
彼が望むすべてのことに対して応える人間が、だ。
自分に何かを期待してほしいわけじゃない。ただ、自分がマダラにとってとるに足らない存在であることを頼みもしないのに自覚させられた気がした。
こんなことは初めてではない。いつでもそれと自覚しては自己防衛の手段として目を逸らし、記憶の一番奥に押し込んで蓋をしてきた。それで何もない。何もなかったことに出来た。
それが今日はどうした?
自分がひどく落ち込んでいることがわかる。
普段であればすぐになかったことに出来ていたことに殊更傷ついているのはここがうちは一族の自分にもっとも縁ある場所だからかもしれない。
一族発祥の地であるにもかかわらず俺はイタチと違って今日まで一度もこの地へ来たことがなかった。知らない土地で見たこともない親戚に囲まれ、一族たちが口にすることの半分も俺には理解できない。俺はうちは一族のことを何も知らない。蚊帳の外だ。
風呂と温かい食事で体は温まっていたはずなのに、胸の奥はじわりじわりと氷が張るように冷めていく。言いようのない不安が、閉じ込めた真っ黒な感情の蓋を開けてしまう気がして俺は足早に寝室へ向かった。
布団に入っても一向に寝つけなかった。一体何を話し込んでいるのか、イタチが部屋に戻ってくる気配がない。気持ちが落ち着くどころか苛立ちに変わり、俺は布団を抜けた。
洗面所で顔を洗うと、冷たい水が、一瞬、停滞している思考と澱んだ感情を沈めてくれるような気がした。
洗面所を出たところで、裏にある台所から手伝いの女性達の話し声が聞こえてきた。普段なら気にも留めないがそこにイタチの名前が出てきたことで俺の足は止まった。
「マダラ様、後継者にあのイタチさんを考えてらっしゃるみたいよ」
「それであれだけ話し込まれているのね。でもまあ、当然よね。あれだけおできになる方だもの。マダラ様がかける期待も相当よね」
「大学を卒業したらこちらに住まわせて本格的に指導されるのだとか・・」
「そうしたら毎日あのお顔が拝めるのね!」
きゃあきゃあとはしゃぐ女たちの声を他所に俺はその場に固まっていた。
なんだって?
イタチがマダラの後継者に?どういう事だ?父さんもイタチも今までそんなこと一度も言ったことがなかった。イタチだって進路は自分の望むようにしたいと言っていたはずだ。
それともあれは俺に余計な気を遣わせまいとするイタチの嘘だったのか?
鉛のように重くなった体を引き摺るように部屋へ戻る。
部屋はまだ暗いままだ。
俺は窓を開け、縁側に腰掛けた。爪先が雪に埋まり、体温を急速に奪っていく。
夜半になり一層冷え込んだ空気が部屋に入り込んでくる。月明かりに照らされた庭に、雪がちらちらと舞って庭の木を、花を、土を一層白く染めるのだろう。
「風邪をひくぞ」
普段ならそう言われるはずの声が今は、聞こえない―
新展開って何?!予想外です(笑)
マダラさんから月読くらってサスケがめちゃめちゃメンタルになっていますね。
兄さん!早く助けてあげて!!
そんな感じで式さんにバトンパス♪
「コツ?任務の前にものを食べないことかしら?」
暗部達が集う休憩所の片隅で、キセルをくゆらせていた暗部のくのいちが言った。
任務を終えたのだろう。肩に落ちる髪がしっとりと濡れている。
「任務の最中よりも後からくるから。あれは。人によっちゃあ任務中に吐く子もいたよ。なに?まさかアンタがあの任務に行くの?」
「ああ」と答えると、くのいちが片目を細め、片目を大きく見開いて美しい表情を歪め、「そう・・」と言った。
「よりにもよって男をご指名とは・・相当な変態ね」
吐き捨てるように言うとキセルを逆さに向けこんこんと灰皿の縁で打った。
「休憩中にすまなかった」
そう言って休憩室を出ようとすると、くのいちが腕をひいて俺を引き留めた。着物の袖から小瓶を取り出し握らせる。
「花街の女たちが使ってるやつよ。早く終わらせたい時につかうハッタリ用」
小瓶の中にはどろりとした糊のような液体が入っていた。なんでも、嫌な客が来たときに事前に局部に塗っておくと、早くも濡れていると勘違いされ、客がいつもより性急に事を進めるので、結果早くお引き取り願えるものらしい。
俺は「どうも」と取り合えずその小瓶を受け取った。
色任務―
それが今回俺に下された任務だった。
よくある好色の悪代官から情報を引き出すという奴だ。普段であればくのいちが担当するこの任務。男の俺にお鉢が回ってきたのはつまり、ターゲットが男色だったからだ。
とある商人が邸にいわゆる美少年を何人も囲い、日替わりで楽しんでいるというのだからその性癖は疑いようもなく変態だ。
ただの美少年が好きで、囲っている少年たちも同意の上であれば問題はそれほど深刻ではない。深刻になってしまったのはこのターゲットの男が少年たちに買春行為を強要しているという疑惑が浮上したからだ。しかもそこで得た資金を何やら武器や麻薬の取引に使用しているというたいそうな悪事を働いているらしいという情報が入った。ただの金儲けにしてはやり方が穏やかでない。木の葉への反乱を企てているのであれば早急にその実態を調べ、阻止しなければならない。
しかし、正面から出向いたところでこの手のこすい人間が馬鹿正直に白状するはずもない。結果、奴の大好きな美少年とやらを送り込み、色香で気をゆるませ、根掘り葉掘り聞きだせばいいということになり、暗部の中では一応最年少に近い俺に白羽の矢が立った。
顔は確かに女のようだと言われてきたがいかんせん体は成人男子よりも鍛えているようなやつに果たして悪代官とやらが警戒しないものだろうかと思うが・・
行為に至るまでに聞きだせればよし、いよいよとなれば幻術にかければいい。
女装するわけではないので化粧はいらないだろうと思っていたらそれではだめだとくのいちに切々と語られ、薄化粧を施され、口元には紅をひかれた。出来上がった顔を見てくのいちが目を真ん丸にしていた。そりゃ似合わないだろう・・
籠が用意され、いよいよ悪代官の城へ連れていかれることになった。籠を担ぐのも同じ暗部の面々で、籠に乗り込む前に「化けるもんだな。お前さん、これから増えるかもしれないぞ。この手の任務」と冷やかされたがそれは御免こうむりたいものだ。
ターゲットの邸はいかにも、という感じの成金趣味だった。
無駄に大きな門構え、玄関に並べられたがらくたともつかない陶器、壺の数。通された部屋は金屏風、桐の調度品、触れれば折れてしまいそうなほど豪奢な彫刻の欄間、龍の描かれた天井、錦糸の折り込まれた掛布団・・これらすべてがここに囲われた少年たちの体を切り売りしたものでできているのかと思うと反吐が出る。
絵にかいたような悪代官の様相のターゲットは部屋に入った瞬間から頭のてっぺんからつま先まで値踏みするように俺を見ていた。見るに堪えぬので目を逸らしたら恥じらっていると勘違いされて余計にターゲットを煽る結果になってしまった。
その方が任務には好都合とわかっていても、なるほどこれは任務中に吐いてしまうくのいち達の心中を察するに余りある。
「遠慮せず近うよれ」
ぱたぱたと扇子で仰ぎながら指図してくる。
「はあ・・」と膝立ちでゆっくりとにじりよる。目の前の男の欲望をまるで隠さない荒い鼻息を感じうんざりした。手を伸ばせば触れられる距離まで来た瞬間、腕をひかれ、布団の上に押し倒された。
「・・っ!」
随分と性急な展開に幻術を使うか一瞬迷う。否、まだだ。
俺はのしかかってくる男の胸を手で押し返し、さも緊張している体で俯いて見せる。
「な・・なにぶん初めてですゆえ・・そんなに急かれますと・・」
苛立って怒鳴りでもするかと思えば、この反応が気に入ったらしく、「そうかそうか。よかろう。ならば今夜はわしがゆっくり手ほどきをしてやろう」と頬を撫でられた。不快だ・・
その手はそのまま着物のあわせへと降りていき、腰で結んだ紐を解いた。ゆっくりと着物を剥され、肌が露わになり、今まで布の覆われていた部分が空気に触れ、肌寒さを感じる。
とりあえず、男に裸を見られたところでどうということはないが恥じらうふりをすると、「そんなに怯えずともよい」と優越感に満ちた声が落ちてくる。
違う。断じて違うがこれも任務だと唇を結ぶ。
手首を頭上でまとめ上げられ、男の顔がいよいよ間近に迫る。手は腹のあたりをさぐり始めている。
天t・・違う違う。燃やしてはいけない。
幻術をかけるなら今だと思った瞬間、どーんという大きな音が響き、同時に地面が揺れた。
「イタチはどこだぁあああああああああああああああ!!!!!」
・・・・・聞き覚えのある声がした。聞き間違えでなければこれは・・
「な、なにごとだ?!」
男が邸のものをしきりに呼び、オロオロしていると襖がすぱんと開いた。そこに立っていたのは・・
「イタチはいるか?!」
やっぱり。サスケだった。
サスケは部屋の中の状況を見るなり須佐能乎を発動させた。これはまずい。
「サスケ、大丈夫だ」
手で制し、障子を開いた。黒い煙と共に明々と炎を上げている裏庭。俺は体を起こし、忍ばせていた苦無を男の喉に突きつける。
「どうやら火薬が暴発したようだな。一介の商人の家にあれほどの火薬の量。これは一体どういうことなのか説明してもらおうか」
「お、おまえ・・お前は・・」
「里への謀反であると判断すればお前をこの場で殺す」
ひっと声を上げ男はそのまま失神してしまった。思った以上に心臓の小さな男だったようだ。
男を縛り上げ、乱れた着物を整えている横でサスケがずっと俺を睨んでいる。
「これは一体どういうことか説明してもらおうか、イタチ!」
なんだか痴話喧嘩みたいな言い方だな、とか、そんなことよりお前の方こそどうして俺がここにいるとわかったんだ?まさかまたダンゾウを締め上げたのか?とか聞きたいことはたくさんあるのだが・・
庭では突然の爆発に右往左往する屋敷の者たちの様々な声が飛び交っている。時期に駆けつけた暗部や中忍たちによって全員縄に着くことになるだろう。しかし・・
「なんであんたがこんな男に体を許している?」
再び須佐能乎出さんばかりにズゴゴゴゴと怒っている我が弟。
や、別に許したわけではないが説明したところでこの弟が冷静に聞き入れるだろうか。
目の前の火事の方が俺にはよっぽど深刻だ・・とほほ。
ブログサイトで「108のネタがない!ネタをください!」とつぶやいた際にお寄せいただいたネタの中から「色任務兄さんと奪還にくるサスケ」を使わせていただきました。イメージと違っていたら申し訳ありません・・!
他にも頂いているシチュなども追々使わせていただきたいと思います。
設定:21才大学生イタチ×16才高校生サスケ。同居実家暮らし。できてます。
担当:イタチ視点→式、サスケ視点→春壱
形式:リレー。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------
先にサスケを風呂から上げ、どうせまだ誰もいないだろうから部屋へ行っておくようにと言いつけて、おれはシャワーコックを捻った。冷水を浴び、体に籠った熱を散らす。
腕の内で善がるサスケをいっそこの場で抱いてしまいたい。そんな衝動がおれになかったわけじゃない。
抱いたことは何度もないが、単純にもう一度抱きたいとは思っている。
だが、それらの思いも今は真冬の冷たい水で排水口へと流し込む。自制心や理性といったものだけが身の内に残った。
その後、風呂を出て、用意された浴衣に袖を通して先程の奥座敷へ行くと、思った通りそこにはサスケだけがぽつねんと胡座をかいて座っていた。所在なげという風ではないのが、この弟の本来の強さだろう。もう後ろにただ庇うだけの歳ではないのかもしれないな、とこの頃思うことが多い。それは今日は殊更に。
隣へ座ると、サスケは眉を訝しげに寄せた。
「風呂に入ったのに冷えているのは、どうしてだ」
訊ねられるが、苦笑いだけで押し通す。
人の機微には決して疎くはないサスケだが、まだこういったことまでは思い至らないらしい。しかし、そうだろう。おれが早くに手折ってしまったから、彼は年頃になれば見聞きするようなその手の知識を得る機会をなくしてしまった。
やがて座敷に座卓が運び入れられ、今晩の料理が手伝いの者たちによって次々に並べられていく。山菜、刺身、天ぷら、酒、それから土鍋が乗せられたコンロ。それに火を入れたところで、マダラも姿を見せ、夕飯となった。
三々五々集落の一族の男たちも集まってくる。宴会というほどの大仰なものでもないが、酒を酌み交わす場となるには、さほど時間は掛からなかった。
そしてやはり場の中心はサスケになった。時折こちらにも顔を出しているおれとは違い、この集落に住まう一族にとってサスケは新顔だ。囲んであれこれ様々訊ねるが、しかしサスケが相も変わらず無愛想に「ああ」だとか「別に」だとかで答えるものだから、話は長く続かない。
だが、ただ一度、
「そうか、十六か。じゃあ高校はイタチと同じところか?」
と悪気なく訊ねられたときだけ、サスケが僅かに体を固くしたのが隣のおれにだけ伝わった。
長くなるだろうと踏んでいた集まりは、案外早くに仕舞いとなった。まだ日が変わるまで一時間ほどを残している。
酒の入った赤ら顔の男たちが去って行くと、マダラは卓を片付けさせ、改めて熱燗を運ばせた。
「サスケ、とかいったな」
マダラが手酌で酒を注ぐ。
サスケが無言で視線をやると、マダラは部屋の襖を顎でしゃくった。
「おれはイタチと話がある」
出ていけ、ということだろう。
サスケは夕飯以来はじめておれに答えを求めるような仕草を見せた。
窺う目に頷いて返す。
「先に寝ておけ」
「…だが」
「朝、早かっただろう」
そういうことじゃない。
そう言いたげなサスケの揺れる眸に気付かない振りをする。
サスケ、と促すと、不承不承サスケは立ち上がった。
襖が閉じられ足音が遠ざかってしばらく、
「口がへの字だったな」
マダラの言う通りだった。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------
とりあえず新展開。話ってなんだろう…。
サスケは一族に関しては、常々蚊帳の外に置かれてる感じがするですよ。
ところで「お風呂場のふたり」有難うございました!本番はがんばる!でも絶対途中で振る!倍返しだ!
それにしても元旦までに108終わるのかたいへん不安。まだ仕事が続くよ何処までも。31日怒涛の更新を見せてみせる…!
暗部21才イタチ×中忍16才サスケ
-------------------------------------------------------------------------------------------------------
任務の日の朝、そろそろ支度をしようとベッドから体を起こしかけたイタチの部屋着を布団の中から引っ張るものがあった。
「ん…まだ行くな…兄さん…」
寒い、と寝惚け眼のサスケが言う。
まだきっと半分は眠りの中だ。
部屋は冬の気配に満たされている。
「…あと少しだけだぞ」
イタチは彼を抱くようにしてまた横になった。
■盛大に遅刻をしたことへのイタチの言い訳とダンゾウさま
「サスケの望むような兄を演じていただけだ」
「……」
-------------------------------------------------------------------------------------------------------
おれはダブルスパイだから怪しまれないようにしただけだと言い張る兄さんェ…。
http://www1.odn.ne.jp/~cij24740/naruto021.html の反対。