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「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
企画恒例リレー小説その②!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)
*兄さんも盛大に壊れます。
嘘をついた。
今まで話をしたこともない女性たちが揃いも揃って「弟さん、7月23日は空いているかご存知ですか?」と聞いてくるので、周囲に聞こえるように言ってやった。
「朝から予定があるそうですよ」
にこ!
サスケ自身が予定を入れているかどうかは知らない。
だが、サスケがこの手の女たちの誘いを受けるとも思えないし、おそらくサスケ自身もあれこれ聞かれてうんざりしていることだろうから、多少の嘘方便は許してくれるだろう。
「イタチ、明日は空けておけ。お前に任務を…」
「断る」
サスケの誕生日が翌日に迫った日の昼過ぎ、ダンゾウに呼び出されたオレは開口一番、任務を言いつけようとしたダンゾウの言葉をぴしゃりと切った。
「…お前に任務を…」
「生憎、明日ははもう有休を入れている」
「それは知っている。だが…」
「オレは暗部だから、上の命令があればいつ、いかなる時も任務につかねばならない」
ダンゾウの言わんとすることなどお見通しなので先に言ってやった。
「だが、断る!」
「強情かっ!!」
ダンゾウがどんっと机を叩いたがオレは負けなかった。
自分の役割はちゃんと果たしている。だから権利は遠慮なく頂く。
明日、7月23日はサスケの誕生日。
オレの天使が生まれた日。そんな日にあくせく任務に出るなんてナンセンスだ。
最近、サスケが家の居間のカレンダーに差支えのない程度に任務の予定を書くようになった。
そのおかげで、7月23日がサスケも非番であることがわかった。
サスケになにも予定がないのなら、一緒にどこかへ出かけてもいい。
そんなことを思いながら家の引き戸を開けると、サスケがなにやらものすごい勢いで飛び出してきた。その姿が幼い頃、アカデミーから帰ってきたオレに飛びついて来たサスケと重なる。
「随分と懐かしい出迎え方だな」
というと、サスケは裸足のままオレについっと近づいてきた。
「オレ、明日…」
「ああ、誕生日だったな」
すると、サスケがぽかんとした表情のまま、「なんで…」とオレを見つめた。
「明日は非番だったな?何か予定でもあるのか?」
と尋ねるとサスケはぶんぶんと首を振った。
「なら、どこか出かけるか?それとも修行か…そういえば前に出来ないと言っていた術があったな。手伝ってやるからもう少し頑張ってみるか?」
「出かける…修行…」
とサスケは何やら考えをめぐらしているようだった。そんなサスケの髪をくしゃりと撫でて、
「オレはどちらでもいいから、考えておいてくれ」
「え、あ、ああ…」
とサスケはオレに乱された髪を撫でつけながら、まだどこかぼんやりとした様子で返事をした。
洗面所へと向かいながら、あの生真面目なサスケのことだ、誕生日であっても修行をしたいと言うかもしれないな、と思い思わずふふっと笑ってしまった。
てなわけでサスケは修行デート、どっち、と・る・の~♪
式さんにパスぅ!
「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
*今回兄さんのキャラが崩壊しています。苦手な方はご注意ください。
「あーあうあう、だぁ!」
掴まり立ちを覚えたサスケがあぶあぶと喃語を喋りながら飽きもせずちゃぶ台伝いに歩く練習をしている。
寝返りが打てるようになった時のように、ハイハイを覚えた頃のように、景色が一転したことが物珍しくて仕方がないがごとく、自分の体が今までしたことのない動きが出来るようになったことが楽しくて仕方ないとでもいうかのようにサスケは尻もちをついては立ち上がる、を繰り返していた。
時折手を離して歩こうとするサスケの背中に手を添えてやり、サスケの練習にイタチは付き合っていた。
「あぶ!」
どうだ!とつかまり立ちをしたサスケがちゃぶ台から手を離し、一人でちゃんと立ってるぞ!と主張する。
「うん、上手だね。サスケ」
「あう!」
お兄ちゃんに褒められたのが嬉しいのか、きゃあきゃあと声を上げて笑った。と、次の瞬間、バランスを崩す。
「サスケ!」
ぽすんっと小さな体がイタチの腕の中におさまる。
「あぶなかった…サスケ、どこもぶつけてないか?」
すりすりと頭を撫でると、サスケがきゅっと目を細めて擽ったそうに笑うので、思わずイタチもふふっと笑った。
「あー!クソっ!寝過ごした…!」
穏やかな朝の空気の中で、サスケが一人せわしなく歩き回っている。歩きながら装備を整え、今日の任務の行程らしいものをぶつぶつと呟いている。
口に出せる任務だからいいものの、そのクセは直した方がいいぞ、サスケ。
味噌汁を啜っているオレの隣をバタバタと通り抜けるときに、サスケは向かい側で新聞を読んでいる父に軽く会釈をし、オレの後ろ髪を触れるか触れないかの距離で弾いた。
時間がなくて、忙しないときでもこういう礼儀を忘れまいとするサスケの姿勢を知っているから父も「騒がしいぞ」というだけに留める。
髪を弾くのは、サスケなりのオレへのあいさつのつもりらしい。
オレは弾かれた後ろが身を撫でつけ、母から弁当を受け取るサスケを見やる。
早口に今日は遅くなる、とかなんとか言っているようだ。
可愛いな。
サスケ可愛い。ホント可愛い。
口に出したら「男が可愛いとか言われても全然嬉しくねぇんだよ!」と拗ねられるから言わないようにしているが、ホントはすごく言いたい。
サスケめっちゃ可愛い!オレの天使!って頭ぐりぐり撫でてほっぺたすりすりしながら言いたい。すごく言いたい。サスケに怒られてもいい。怒ってるサスケも可愛い。
オレが脳内で口に出せない気持ちを存分に放出していると、父が新聞をめくりながら「イタチ、お前は今日は早く帰れそうなのか?」と聞いてきたので、
「どうだろう。日帰りの予定ではあるけれど…わからない」
と結局何もわからない回答をした。
ぽりっと沢庵を食む。
サスケがそれじゃあと玄関に向かって走っていった。
たった一歩を歩くのも覚束なかった赤ん坊が、16年でこんなに軽やかな身のこなしで動き回れるようになるんだなぁと人の成長の早さを我が弟でしみじみと思ってみる。
そう言えば、サスケは昔から焦るとよく転んだり、躓いたりしていたことを思い出し、オレはまだご飯の残った茶碗を残し、サスケのいる玄関へ向かう。
玄関ではサスケがいつもより大きめの荷物を抱えたまま、靴をはいていた。
焦っているからその手つきはいささか荒い。
これはまずいな、と思った瞬間、サスケがバランスを崩した。
「サスケ!」
思わず後ろからサスケの腰に腕を回し、ぐいっと引き上げる。
転ぶことを踏まえた上で、受け身をとろうとしていたサスケは、一瞬何が起こったのかわからなかったようでしばらくぽかんとしていた。
「すまない、とっさのことで…どこかぶつけてないか?」
腕の中に捕えられた猫のように、すっぽりおさまっているサスケに尋ねると、「ああ…」とまだ呆けているような声が返ってきた。
ふと、赤ん坊の頃、つかまり立ちを始めたばかりのサスケを思い出した。
まだ体のバランスがうまくとれなくて、あっという間に転び、思わぬところで頭をぶつけたりしていたサスケ。そんなサスケから一瞬でも目が離せないと思っていた気持ちが懐かしさとともに甦った。
「まったく。この先もお前から目が離せそうにないな」
「は?」
「なんでもない。気をつけてな、サスケ」
サスケの腰を抱えたまま、その頬にキスをすると、腕の中のサスケがビクッと体を強張らせ、次の瞬間、顔を真っ赤にした。
これは怒鳴られるか?と思っていたオレに返された言葉は予想に反して優しく、
「お、おう。に、兄さんもな…!」
そう言ってオレの腕を振りほどくと、少々手荒に扉を開き、走っていった。
「これがデレというやつか」
お題配布元:「確かに恋だった」様
兄さんはあの冷静な表情の下で常にサスケ愛を叫んでいると思います。
私の性格上、こういう心のダムが決壊した、キャラ崩壊した兄さんの方が書きやすくてついついやってしまいました。
書き散らし企画なのでお許しを…!
これにて「過保護な彼のセリフ」シリーズは終了です。
次の5題は「世話焼きな彼のセリフ」です!
サスケの誕生日に向けてがんばるぞー!
「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
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傷に付ける軟膏を貰いに里の医局へ寄った帰り、その廊下で兄のイタチと出会った。
「なんだ、アンタもどこか怪我をしたのか」
イタチが傷を負って帰ってくるなど滅多にない。ただざっと見たところその様子もない。
イタチは忙しく廊下を行き交う医局の者や患者の邪魔だからとおれに端の長椅子へ座るよう言った。続いて自身も隣に腰を下ろす。
やはり怪我をした風ではない。しないのだ、血の臭いが。
イタチの目的はすぐに知れた。
「お前が怪我をしてここにいるとナルトに聞いた」
「……」
余計なことを、と思う。あのうすらとんかちが任務帰りに偶々兄さんに声を掛けられ、大袈裟におれの怪我のことを言ったのだろう。
だいたい兄さんも兄さんだ。おれは忍だ。任務に出れば怪我くらいして帰る。わざわざ兄さんが医局まで出向くようなことじゃない。
「…アンタ、任務は」
訊ねると、「極秘」と返される。
そう言われてしまえば、おれには食い下がる言葉も追及する権限もない。
兄さんは暗部だ。おれと同じように任務帰りなのかもしれないし、あるいは召集前なのかもしれない。そういえばここ数日は家の中はもちろん里内でもその姿を見ることはなかった。兄さんがいない生活がおれにとって当たり前になり始めている。
「それよりお前、怪我は?」
イタチはおれの体に治療の跡を求めているようだった。
肩を竦める。
「大した怪我じゃない」
掠り傷程度だ。
「…しくじっただけだ」
手持ち無沙汰に処方された軟膏を宙に投げて遊ぶ。
すると何度目かに横からあっという間に奪われた。軟膏も、腕も。
手首を取られ、右の前腕を目の高さまでぐいと上げられる。イタチの前に晒された肌には擦過傷があった。
「…なんだ。本当に大した傷じゃないな」
「だからそう言った」
イタチの言う通り、本当に大した怪我ではないのだ。見た目に反して傷は浅く、忍であればこれくらいのことは当然だ。医局へ寄ったのも半ば強引にカカシたちに背を押されたからで、おれの意思ではない。
にも関わらず、これではおれが大袈裟に振る舞ったようでどうも釈然としない。勝手にここへ来たのはアンタだろう。
「そんな傷を負わされるようじゃ、まだまだ修行が足らないな」
「……」
むっとする。だが本当でもある。
傷は、護衛任務中に敵方の強襲を受け、こちらの指示を守らず怯えて逃げ出した依頼人を無理に庇って付けられたものだ。
きっともっと巧い手があった。兄さんならこんなへまはしない。絶対にしない。
だから、おれは言い返すことが出来ない。
イタチは容器の蓋をからりと回し、乳白色の軟膏を指に掬った。それからもう一度おれの手を取り、傷口にそっと触れる。
「ん…」
僅かに肌が跳ねた。気付かないイタチじゃない。
「痛いか?」
「…べつに」
つんと香る軟膏。
それが少しずつおれの傷口に引き伸ばされ、染みていく。
「サスケ」
「なんだよ」
だいたいどうしてアンタがそんなことをしている。
わざわざアンタにしてもらうようなことじゃない。
なのにおれは今を止めることが出来ない。
「何も言わないのか」
「何をだよ」
「人を庇ったんじゃないのか」
顔を上げる。
だがイタチはおれの傷の具合を見ていた。
取られたままの手が温かい。意識をすればするほど、おれは今兄さんに手を握られているのだと、そう感じる。イタチの手の中でおれの手の指がもぞもぞと居心地を探して伸びたり曲がったりを繰り返した。
「どうしてそれを…」
「ナルトに聞いた」
「あの野郎」
ぺらぺらと余計なことを。
「…庇った相手は護衛対象、任務の内だ。それに任務中におれがしくじったことに変わりはない」
言い訳はしない。
イタチに言うことでもない。
「それはそうかもな。だが、」
イタチは軟膏を塗布していた指はおれから離した。
しかし握っていたもう片方はそのままだ。
ぎゅっと繋がれる。
イタチはいつの間にかおれをひたと見つめてくれていた。
「よくやったな、サスケ」
息が止まる。
再開したら胸がいっぱいに膨らんだ。
口許がむずむずして、やはりおれに返す言葉なんてない。
でも心ごと抱き寄せられたようで、じんと心に沁み入った。
「…いいのかよ、暗部のアンタがそんな甘っちょろいことで」
そんなおれの憎まれ口もイタチには及ばない。
「おれはお前の指導教官でもなければ、同じ管轄でもない。おれはお前の兄貴だからな。いいんじゃないか」
「…兄さん、だから」
俯いたおれを結んだ手の先でイタチが微笑う。
「なんだ、照れてるのか、お前」
「うるせーな」
分かっている。
自覚はある。
「照れて悪いかよ」
この歳になっても兄さんに褒められることがこんなにも嬉しいだなんて、おれだってちょっと戸惑う。
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お題配布元:「確かに恋だった」さま
兄さんに褒められてうれしいサスケ。
今日は兄さん、サスケのハートにキスしちゃったんだぜ!
結論。兄さんがサスケの兄さんしているのが萌え…!
兄さんの「兄属性」たまらんです。そしてサスケの「弟属性」たまらんです。
相性ぴったりじゃないか、この二人!
そもそも兄弟萌えなので、兄さんの「兄さん」っぷりと、サスケの「弟」っぷりがとてもツボです。
なんでも完璧なのについ弟には甘くて過保護になる兄さんとやんちゃだけどお兄ちゃん大好きな健気弟萌え。
六月が終わる!
30日までしかない六月が終わる!
そろそろ小ネタで乗り切っていかないと…!
次のお題は小ネタっぽい感じでいこうと思います。「照れ屋サスケ」は次でラスト―!
「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
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里内での打ち合わせを終えた第七班が今日は明日の遠征任務に向けてそろそろ解散をしようかと里の通りを帰途についたところ、たまたま彼方からやって来るサスケの兄、イタチと出会した。彼もどうやら外での任務、その報告の帰りらしい。
「こんにちは、カカシさん」
互いに気付き合い、まず声を掛けたのはイタチの方だった。それからナルトとサクラにも声を掛け、最後にサスケだけには「ただいま」と言う。外で身内に会うのはどうも気まずいのかサスケが小さく「おう」と応えると横からカカシが話に加わった。
「お前も今帰り?」
「ええ。そちらも?」
「明日の任務のことでちょっとね」
カカシはサスケが下忍の頃よりの指導教官だ。中忍になった今もこうしてカカシ班として任務に出ることも度々あると聞く。イタチが身内として年長者らしく、
「サスケがお世話になります」
と頭を軽く下げると、
「世話になんかなってねえよ」
背後でサスケがぼそりと不平を零した。普段はわざわざ口にしたりはしないそんなことを言ったのは、きっと兄の手前だからだろう。サスケはイタチを前にするとどうも歳以上に子どもらしさが言動に出る。
ともかくそういうサスケを「まあまあサスケくん」「大人になれってばよ」とナルトとサクラが宥めたのがいけなかった。
「いつも勝手に突っ込んで世話になっているのはてめーだろ、どべ」
と売り言葉に買い言葉。
通りの真ん中でカカシ班の日常茶飯事、ナルトとサスケの睨み合い取っ組み合いが始まる。
「ちょっと、やめなさいよね、ナルト」
まずはサクラが呆れ半分、諦め半分で止め、
「サスケ」
イタチも諌めて加わる。
だが元々互いの力量を認め合った二人だ。日々の諍いはあれど、決定的な亀裂が走ったことはこれまでにない。今必要なのはクールダウンだろう。このまま家へ帰らせては明日の任務に響く。カカシは通りに面した里には珍しいカフェテリアを指差した。
「ま、積もる話もあるようなないようなだし、お茶でもしていく?」
夕方のカフェテリアは混雑の時間帯を外したためか、思ったよりは空いていた。奥の席にはカカシ、サクラ、ナルトが順に、手前にはイタチとサスケが椅子を引いて座る。
「ここ、最近流行りなんですよ」
二・三度いのたちと訪れたことのあると言うサクラは早速テーブルにメニューを広げて見せた。夏に向け南方の果実を絞った期間限定のフレッシュジュースがどうやら人気らしい。
カカシとサスケは無難にアイスコーヒーを頼んだが、ナルトはサクラが美味しいと言うのならと聞きなれない果実のジュースを張り切って注文し、サクラはサクラで今日はまた新しいジュースにチャレンジするという。そんな二人に同調をしたのは最後まで注文を思案をしていたイタチだった。ナルトと同じものを店員に頼むと、まずはナルトが「ええっ」と声を上げた。
「イタチってこういうの飲むんだ。なんか意外だってばよ」
「そうね。サスケくんは絶対頼まないもんね」
そうナルトとサクラは言うが、実のところサスケ自身はたぶんきっとイタチは果実ジュースを頼むだろうなと思っていた。兄はそういうものを好んでいる節がある。それに折角の機会と踏んだのだろう。サスケと二人ではまず来ない店だ。
注文をしたジュースやコーヒーを待つ間、会話は途切れることなく続いた。サクラはサスケと長くいられるのなら嬉しいし、ナルトはそのサクラとプライベートまで共有できるのなら幸せだ。カカシとイタチは大人である分だけ付き合いというものの必要性を知っているうえ、サスケは必要以上に会話に加わることはなかったが、こうして七班と兄とがいる空間に自分があることは嫌いじゃない。
やがてテーブルにナルトやサクラ、イタチが頼んだ色とりどりの甘く爽やかな香り漂うジュースと、アイスコーヒーが並んだ。
「うまそーだってばよ」
ナルトの声がやさしいオレンジの前に弾む。早速ストローで一口含むと、顔を輝かせそのまま続け様にどんどん飲んだ。
サクラもイタチも「うん、やっぱり美味しいわ」「さっぱりしていて美味いな」と笑顔を零す。
そんな三人を前にして、サスケも「ふうん」と内心頷いた。
そんなに美味いのだろうか。
何気なく隣のイタチのブラッドオレンジに目を移す。するとイタチは弟の目線に気付いたらしい。
「お前も飲んでみるか」
グラスとストローをサスケの方へ向ける。
慌てたのはサスケだ。兄のものを取ってまで欲しかったわけじゃない。ただちょっと興味があっただけなのだ。
「べつにいらねーよ」
「そうか?美味いぞ。おれのはさほど甘くないから、お前でも飲めるはずだ」
「でも…」
「遠慮する必要はない。ほら」
「……」
サスケは勧められたストローの先をじっと見つめた。
それはついさっきまで兄が口を付けていたものだ。ちらりと隣を見上げると、兄の薄く形の良い唇が目に入って、すぐに逸らした。
「なんつーか、その、」
そのストローは兄さんが…。
なんて口が裂けても言えない。
「うん?どうした、サスケ」
と先を促すイタチにサスケはますます体を固くした。
「……」
ここまできて断るのはおかしい。絶対におかしい。
サスケは覚悟を決めた。
口を小さく開いて恐る恐るストローに唇を近づける。
どきどきと胸が高鳴った。
イタチが見ている。ナルトやサクラ、カカシも見ている。
「……」
ストローの先が唇に触れた。
そっと咥える。
そのままちゅっと吸った。
「ん…」
途端、甘い香りが口いっぱいに広がる。
ついでに胸ももういっぱいだ。
「どうだ?美味いだろう?」
と言うイタチのやさしい微笑みも、今は俯くサスケには見ることのかなわないものだった。
■↑というやりとりを見せられた七班のみなさん
(サスケくん…)
(いつもおれたちとは平気で回し飲みしてるってばよ…)
(なのにどうして実の兄貴に照れるかな…)
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お題配布元:「確かに恋だった」さま
兄さん相手にだけ間接キスで照れるサスケくん。
絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
「う、ん…」
胸元で声がして目が覚めた。
目を開けて一番に目に入ったのはつんつんとした黒い髪の毛。
それがサスケのものだと認識するのに時間がかかったのは自分の寝起きの悪さのせいだろう。
昨夜、遅くに帰ってきたらサスケがオレのベッドで寝ていた。
枕元には巻物がいくつか転がっていたので、読んでいるうちに眠ってしまったのだろう。
サスケは時々こうしてオレの部屋でオレの巻物を読んでいる。
以前はオレのいる時に部屋に来てはオレに断りを入れて部屋に持って行っていた。しかし、サスケも中忍になって、任務で帰りが遅くなったり、遠征に出たりと、互いに家で顔を合わす時間が少なくなった。なので、好きな時にここで読んでいいとサスケに言っておいた。
それからサスケはちょくちょくオレの部屋で巻物を読むようになった。
疲れていたのか、深く寝入っており、呼びかけても目を覚まさなかった。せっかく眠っているのを起こしては可哀想だと、巻物を棚に戻し、オレもその横で眠ったのだった。
枕元の時計を確認し、体を起こそうとする。…が、動けない。
器用なことにサスケの腕がオレの胴に巻き付いていた。
オレはお前の抱き枕じゃないぞ、と頬をぷにぷにと突いてみた。
しかし、ううんっと眉を顰めただけで目を覚ます気配がない。
参ったな。一応オレには今日も任務があるのだが…
縄抜けの要領でサスケの腕から抜けようとした時、サスケがいっそう強く抱き着き額を擦りつけ
「ん、にいさん、いっちゃやだ…」
その一言に思わず吹き出しそうになった。
おそらく小さい頃の夢でも見ているのだろう。
毎朝アカデミーに行くオレに「行かないで!」と泣いていたサスケ。
そんなサスケももう16になり、オレの後をついて回っていた頃の頼りない印象はない。最近は頼もしさすら感じる。
幼い頃のように「行かないで」と縋りつかれることなんてもうないと思っていた。
「オレを困らせたいとしか思えないな」
サスケがつらくないように抱き返す。幼い頃のようにすっぽりと収まることはないが、懐かしい感覚に頬が緩んだ。
同じシャンプーの匂いのするサスケの髪に口づけて、サスケを抱いたまま印を結んだ。
数時間後、ダンゾウ様の執務室に現れた兄さんの影分身。
「イタチ(本体)はどうした?」
「コレ(影分身)で十分だ」
「………」
任務ナメとんのか!
お題配布元:「確かに恋だった」様
ダンゾウ様からの任務よりサスケェ…!
「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
戸棚の最上段の左端。
あと数センチ届かない場所。
爪先にぐっと力を入れて手を伸ばすが、引き戸にかりっと爪が掠るだけ。
いい加減背伸びをすることに疲れ、ぺたりと踵を床につけた。
踏み台を持ってこようか、と思案していたら、後ろからひょいと腕が伸びてさっきまで自分が開けようとしていた扉がからりと開いた。
「何をとるつもりだったんだ?」と聞かれ、巻物、と答えるとイタチはああ、あれか、と風呂敷にくるまれた巻物の箱を取り出した。
「こういう時はオレに頼れと言っただろう?」
そう言うとイタチはとんっとサスケの額を小突いた。
「あ…アンタに頼るほどの事じゃねぇよ!」
踏み台を持ってくればいいだけの話だ、と言って拗ねると、イタチは「そうか」と少し困ったように笑った。
どうせオレはちっせぇよ
兄さんがオレと同い年の時の身長にすら届いてねぇよ
でも、そんなことより
ありがとう、って言うのが先だった。
イタチの去って行った方を見ながら、サスケは小突かれた額をさすった。
■夕飯後のうちはさん家
「兄さん」
居間で涼んでいる兄さんの傍につっと座るサスケ。
「どうした?」
「さっきは…その、助かった。ありがとう」
「?何の話だ?」
「だから!巻物…とってくれただろ」
「ああ」
そんなことかと笑う兄さん。
「オレも兄さんくらい背があればいいのに…」
兄さんが16の時より背が小さい自分にもやもやするサスケ。
そんなサスケの頭をくしゃりと撫でて、
「お前はこのままで十分可愛いぞ、サスケ」
「お、男が可愛いとか言われても嬉しくねぇよ!」
「はは、そうか。許せ、サスケ」
でことん!
台所で一連のやり取りを聞いていたミコトママ
「そもそも16の男の子に可愛いはないでしょう…」
お題配布元:「確かに恋だった」様
お題では「こういう時は俺に頼れと言っただろう!」と叱っているような感じでしたが、今回はあえて言い聞かせるような方に改変させて頂きました。
この兄弟はコンプレックスにも萌えます。
5歳の年の差、身長差、忍びとしての力の差。
サスケは事あるごとに兄さんと比べられてコンプレックスを感じていますが、兄さんも実はサスケに対してコンプレックスを感じているんじゃないかなぁなんて考えたりします。
それはまた別の場所で形にしたいです。
「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
「辛かったら無理するなよ」
わかってる。だから、いつまでもガキ扱いするなよ!」
そんなやり取りをしてから半日が過ぎた。
暗部の任務から解放されたオレは装備を解きながら、今朝、あまり良くない体調を押して任務に出掛けていったサスケのことを思った。
季節の変わり目の朝夕の寒暖差に加え、遠征があったせいか、ここ数日、サスケは鼻をすすっていた。
代役をたてることができる任務ならとりあえず今日は体を休めては、と言ってみたが、弟はまるで取り合わなかった。
むしろオレが心配するほどに頑なになるようで、最後は結局、無理をするなと言って送り出すことになった。
窓の外はしとしとと梅雨時の雨がふっている。
初夏の兆しがあると言っても梅雨の時分は雨が降れば気温が下がる。ちゃんと余分に1枚羽織るものを持っていっただろうかと思い、こんなことを言ったらまたサスケに怒られるな、と途中で思考を止めた。
壁にかけられた時計の針は夕飯時を過ぎている。
サスケはもう帰っただろうか?天候次第では足止めを食らわされているかもしれない。
帰りがけに出退勤札を見に行ったが、サスケの名前の書かれた札はまだ勤務中を示す黒字のままだった。
家で待つのもここで待つのも同じと思い、休憩室でサスケを待つことにした。
夕飯より少し遅くに帰ると母には言ってあるので、多少はまぁ、大丈夫だろう。
休憩室の入り口がよく見えるソファに腰かけ、くたびれた新聞を手に取った。
雨は相変わらず小気味良く窓ガラスを叩いていた。
階段を登ってくる足音ではっと我に返ると同時に、自分がうたた寝していたことに気付く。
「何やってんだよ。アンタ」
サスケが目を丸くしてこちらを見ていた。
雨具を持っていなかったのか、髪の毛や衣服からぽたぽたと水滴をたらしている。
「サスケ、お前、ずぶ濡れじゃないか」
「ああ、外での任務だったから」
「そういう問題じゃないだろ」
「しかたねぇだろ。警備の仕事なんだから」
サスケはそう言うと、そのままロッカールームへと歩き出したので、あわててその手を掴む。「まて、先にシャワーを浴びてこい」
「いい。家ではいる」
「それでは体が冷えてしまうだろ。」
大丈夫だと抗議するサスケの腕を強引に引き、オレはサスケをシャワールームへと引っ張った。
渋るサスケをシャワーブースに押し込み、代わりにサスケのロッカーに着替えを取りに行った。
着替えをもってシャワールームに戻るとちょうどサスケがブースから出てきたところで、がしがしと髪を拭いていた。
「着替え、ここに置いておくぞ」
「ああ」
何が恥ずかしいのかサスケはオレに背を向けて衣服に袖を通しはじめた。
陽に焼けない白い肌は決して病的なそれではなく、サスケの本来持つ性質のもので、彼のどこまでもまっすぐで純粋な性質そのものだ。
その背中に吸い寄せられるように、後ろからサスケを抱きしめた。
「なっ…!?イタチ?!」
「まったく。どれだけ心配したと思ってる」
サスケのまだしっとりと濡れる肩口に額を押しつけるとくすぐったいのか、サスケはもぞもぞと身動ぎ、オレの手を掴んだ。
「大袈裟なんだよ、アンタは。別に大した任務じゃない。道が悪くて予定より遅くなっただけだ」
「だが、風邪をひいていただろう?」
「あんなの大したことない…!それよりこの手さっさと離せよ!」
風呂上がりにまとわりつかれて鬱陶しくなったのかサスケが体を捩ったので、素直に解放してやった。
まあ、これだけ威勢がいいなら大丈夫なのだろう。
上気したサスケの頬に手をあて
「おかえり、サスケ」
と言うとサスケは視線だけをふいと逸らせて「ただいま」と呟いた。
お題配布元:「確かに恋だった」さま
自分だって体調悪くても任務に出て、遅くまで帰らないことがあるくせに!ってサスケは思ってると思います。
いつでも自分のことは棚に上げる人、兄さん。
「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
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夏の気配も色濃くなった長い一日もようやく夕暮れに差し掛かる頃、うちはサスケは古い生家の濡れ縁で風呂上がりの火照った体を静かに休め、団扇を片手に涼んでいた。
朝早くから駆り出された急を要する任務も滞りなく終わり、父や兄よりも一足早く帰宅となったため、一番風呂を母から勧められ、滅多にないことだと有難く頂戴したのだ。まだ陽もさほど傾いていない内から入る風呂はなかなか贅沢なものだとサスケは思う。
肌を撫でていく夜を香らせた風が心地よい。もう随分と長くここで涼んだ。体も鎮まっている。
そろそろ部屋へ上がるか。
サスケが胡坐を崩して立ち上がろうとしたその時、廊下の向こうの人影がふと目に入る。兄のイタチだ。彼もまた今日は父より早い帰宅だった。母に急かされるようにしてサスケと入れ替わりで風呂に入ったことは知っている。
肩に手拭いを掛けてはいるが、その長い髪は脱衣所で乾かしてきたのだろう。もうきちんといつもの通り結わえてある。夏は暑いと零しているのを何度か聞いたことはあるが、サスケにしては珍しく「じゃあ切れよ」なんていう実にすっぱりとした助言はもうずっと控えている。口に出してはやらないが、イタチのその長い髪をサスケは小さなときから好いている。
兄は特に何を言うでもなくサスケの左隣に片膝を立てて座した。思った以上に近い距離に、風呂から上がったばかりの彼の体温を肌で感じる。
きっとサスケの風をもらう魂胆なのだ。忍らしく兄はとても合理的で効果的だ。
「自分で仰ぎやがれ」
けれど、サスケは右手の団扇を握り直した。兄にも風が通るよう手首の角度を少しだけ開いてやる。
サスケの風にイタチの髪や薄い部屋着が微かに揺れた。
「サスケ」
「なんだよ」
「もっと強く」
「…アンタなあ」
ぼんやりと前の庭にやっていた視線を隣の兄に振り向ける。
「おればっかり不公平だろ。やっぱり自分で、」
と、手にしていた団扇を兄に押し付けようとしたその折だった。矢庭にイタチがずいとその身をサスケへと乗り出してくる。急速に失われる顔と顔の距離。サスケが息を詰めると、イタチはすぐ傍で微笑んだ。それから、耳にふっと吐息をやさしく吹き掛けられる。
「うぁ…!」
びくんっと恥ずかしいほど体が跳ねて震えた。体の奥底から得体の知れない何かがぞくぞくと背筋を這い上る。
「なにしやがる!」
サスケはそれら一切を誤魔化すように大きな声を出した。今もイタチの吐息の感覚が残る耳を押さえて、尻で後退り距離を取る。
睨めば、イタチはいたずらっ子のように口許を上げて笑った。
「涼しくなっただろう?」
なんていかにも悪気はなかった口ぶりだ。だがサスケは知っている。絶対にわざとだ。穏やかで物静か、理知的で里の誰からも一目置かれるほどの忍の力量を持つこの兄は、だが弟だけには時折筋の通らないちょっかいを出してくることがある。
なにが涼しくなっただろう、だ。
「寒気がした!」
とサスケは言うが、
「冷えてよかったじゃないか。もっとしてやろうか?」
兄も興が乗ったのか引いてはくれない。
更に後退るサスケを追って、イタチは幼い頃じゃれあったときのように弟の体を抱き込み押さえつけてしまう。
「くそっ、離せ!離しやがれっ」
首を大きく逸らすが、顎までがっちりと掴まれ、今度はその耳にふぅと長い息を流し込まれる。
ぞくぞくした。
「ん…!やめ…!」
「ほら、サスケ。暴れるとまた体が熱くなるぞ」
「おれにそうさせているのは兄さんだろう!ちょ…っ、んっ、くすぐったい…!くすぐってーよ、兄さん!」
サスケは体を捩ってなんとか狙われてばかりの耳から兄の顔を引き離そうとする。
だが、見た目に反して力持ちの兄に強く抱き込まれているので、それもかなわない。
せめて腕の中で反抗の意思を見せるため、いやいやと首を振った。
すると、イタチは三度サスケの耳を擽ろうとしていたらしい。
「あ…」
「ア…ッ」
誤って耳を掠めるイタチの唇の感触。
「……っ!」
思わず間近で見つめ合う。
サスケはかっと目許を赤くした。
「ア、アンタ、近すぎ!」
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お題配布元:「確かに恋だった」さま
照れ屋…?
そしてサスケはつっこむところを間違ってる…!
週2ペースを目標に更新しますぞ!
するとサス誕までにはきちんと終わっている計算になる。
計画はいつもばっちりなんだぜ!