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概要:「NARUTO」女性向け二次創作テキスト共同サークル企画・連絡所  傾向:うちはイタチ×うちはサスケ

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リレー小説:番外編①(春壱)

「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。
同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。→お題を経てできあがりました
ほっぺやおでこへのキスはセーフ。 ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)

アウトになったその後から。

夕焼けを背にして家路につく。
隣にはサスケがいる。
今まで以上に近い距離で。
陽を受けた頬が赤いのは果たして夕陽のせいだけだろうか。ふとそんなことを思った。
少しうつむきがちに歩く、サスケの指に自分の指を絡めると、ぴくりと指先が震え、弾かれたようにサスケがおれを見た。
「にいさん」
戸惑いと、驚きと、照れ臭さと。
なんとも複雑にまじりあった動揺が瞳の奥で揺れる。
「少しだけ、な」 里に戻ってこんなことはできないから、今だけな、と言うとサスケはぶっきらぼうに小さく「おう」と言っておずおずと握り返してきた。
あたたかい。
こんなにも。
長らく蓋を閉めて抑えられた感情はようやく行き着く場所を見つけてゆっくりと流れ出す。
それがこの上ない幸福だ。

家に帰ると玄関まで母の作る夕餉のいい匂いが漂ってきていた。
引き戸を開けると母が台所から顔を出した。
「おかえりなさい。ちょっと頑張りすぎなんじゃないの?修行」
と言われた。 温泉まで行ってきたと答えたら、母は「どうして母さんも誘ってくれなかったの?」と拗ねたように言ったが、その表情はどこかうれしそうだった。
言えない。
温泉行った帰りに、兄弟以上の感情が芽生えたことにお互い気づきました、なんて。
言えない。

「ちょうどよかったわ。もうすぐ父さんも帰ってくるから手伝ってちょうだい」
先に手を洗ってくるのよ、と言いながら母はパタパタと台所に戻っていった。
「だ、そうだ」 と隣のサスケの頭にぽんと手を置くと、サスケは「わかってる」といっておれの手を払いのけた。
台所には小鉢や皿に盛られた天ぷらが並んでいた。
二人でそれらをちゃぶ台に運んでいく。
幼いころ、二人で母の手伝いをしたころに戻ったようで懐かしさに胸の奥がじんわりと温かくなった。
並び終えたところで玄関の引き戸を開く音がした。
父も予定通り、早く仕事を切り上げたようだ。
「父さん、おかえりなさい」
居住まいを正して父を迎えるサスケの姿に倣う。
おれと比較されがちなサスケは父に対しては殊更強く愛情を求めるところがある。
父を見つめる瞳は、無邪気にほめてもらうことを待つ子供のようで可愛い。
兄さん、ちょっと父さんにジェラシーだ。

家族で食卓を囲み、サスケの誕生日を祝った。
昔のように手放しで喜びを表現しなくなったものの、照れ臭そうに両親やおれからの祝福を受け止めていた。
そんなサスケの様子を見つめながら、ああ、自分の幸せはサスケの幸せとともにあるのだと、そんなことを考えていた。



サスケが幸せなら兄さんはしあわせなんですよね!
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恋に気づかない彼のセリフ_5.「自分でもよくわかんねーけど、好きなんだと思う」(リレー小説⑪:式)

「絶対にチューしてはいけない24」
 設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
 縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。

ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)
一旦おしまい。

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 兄さんに抱きしめられている。
 おれは咄嗟に辺りの気配を探った。だが暗部や他に人のいる様子はない。
 必要がない。こんなこと。必要がないのに、おれは今兄さんの腕の中に抱かれている。
「兄さん…?」
 訊ねるが答えはない。ただいっそう強くその胸に抱き寄せられた。
 温泉の時とは違う、布越しに感じる兄さんの匂い。体温。静かな呼吸。それらを感じるたび、おれの体はかっと熱くなった。
 あの胸の痛みと苦しみがぶり返す。
「苦しい」
 兄さん。
 兄さん。
「おれ、苦しいんだ」
 胸の内を明かすように呟くと、兄さんはおれの髪に手を差し入れながら「ああ」と頷いた。その指先が熱を持ったおれの耳にそっと触れる。
「おれも苦しいよ、サスケ」
 誘われるようにして顔を上げた。
 やさしい夕焼け色と深い夜の色。そのどちらをも兄さんはきっとずっと持っていた。そして今、それをおれにこうして打ち明けてくれている。見せてくれている。

「好きだ、兄さん」

 想いはかんたんに零れた。ぽろりと零れた。そのあとは溢れて止まらなくなる。
「好きなんだ。兄さん。おれ、兄さんのことが」
 好きなんだ。
 だから、取るに足らないだなんて思われたくない。アンタにとって必要な価値あるおれでいたい。
 だから、兄さんのことを悪く言われれば腹が立つ。好きだから、守りたい。もし兄さんが悪く言われるようなことがあれば、そんなことはないとおれが最後の最後まで戦って必ず証明してやる。
「…お前、ここでおれにそう言う意味はちゃんと分かっているんだろうな」
 兄さんは念を押した。
 だが、おれだって念を押される意味は分かっているつもりだ。
「自分でもよくわかんねーけど、好きなんだと思う」
 幼い頃から兄さんのことが好きだった。引け目を感じた時期もあったけれど、兄さんはおれの憧れだった。慕っていた。でも今はそれ以上にずっと。
 こんなにも強い気持ちは、もしかすれば兄弟という物差しからは疾うに外れてしまっているのかもしれない。表す形や言葉もないのかもしれない。
 けれど、それでもいい。
 おれたち二人きりの想いの在り方があったってかまわないじゃないか。
「サスケ」
 兄さんの手のひらがおれの頬に滑らされる。
 見つめ合って、分かり合って、やがて眸を閉じた。
「いやなら、そう言えよ」
 そっと唇が触れて、重なる。
 たった一瞬。
 それでもおれは永遠を感じた。
 宿題は後でするから。そう言ってくれていた遠い日の兄さんのことを思い出す。
「ん…兄さん…」
 気が付けば胸の痛みは消えていた。代わりに温かい幸せに満たされている。だからきっとあの頃を思い出した。
「いやじゃないな?」
 問われて頷く。
 いやじゃない。それどころか、
「…もっとしてほしい」
 ふと兄さんが微笑んだような気がした。
 だが確かめるすべはもうない。眸を閉じれば腰を抱かれ、永くやさしい兄さんのキスが訪れる。
 触れるだけ。
 それでもこの身を包み込む兄さんの腕の中の幸福にゆっくりと体が弛緩していく。まもなく結んでいたはずの唇もついにゆるりと解けた。
 すると、角度を変えながら擦り合っていた唇の隙間から突然ちゅっと舌を吸われる。背筋に走った甘い感覚に驚いて目を開くと、兄さんはようやくおれを抱く腕を緩めてくれた。
「…ん…、…い、まの」
「これも、もっと、か?」
 今さっきの疼きが忘れられず、思わず頷く。
 だが兄さんはいつものようにおれの額を小突いて悪戯に笑った。
 どうせ「許せ、サスケ」だ。先んじて制してやる。
「…また今度かよ」
 そう言うと、兄さんはおれの頬や瞼、額に小さなキスを落とした。
「このまま続けたら、父さんと母さんのところへお前を返せそうにないからな」
「同じところに帰るくせに」
「今日中に、ということだ」
 肩を抱かれ、帰途に就く。
 また今度。
 それはきっと兄さんからのもう一つもう一度のプレゼントだ。
 なるべく早くほしいと言ったら、お前らしくないなと兄さんは笑うだろうか。
 七月二十三日の日は暮れて、もうすぐそこまで短い夏の夜が来ていた。

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お題配布元:「確かに恋だった」さま

イタチ・サスケ、アウトー!!!

ただこれが言いたいだけの24企画でした。
一旦ここでこのリレーはおしまいです。

残り4話はこの続きの「また今度」の内容になるか、何になるか。

お誕生日おめでとう、サスケ!
サスケが兄さんの生きる意味だったんだ…!と思っています。

世話焼きな彼のセリフ_5、「馬鹿だな、お前だからだよ(お前じゃなきゃ、ここまでしない)」(リレー小説⑩:春壱)

「絶対にチューしてはいけない24」
 設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
 縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。

ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)

春壱のお題ラストです!


音が止んだ。
聞こえなくなった。

湯口から注ぎ込むお湯のおとだとか、温泉に浸る人々の喧騒だとか、風に揺られる木々のざわめきだとか、小鳥の囀りだとか。

そう言った音という音が聞こえない。

聞こえるのは今、目の前にいるサスケと自分に息遣いだけ。
次に聞こえたのはごぽっと胸の中から湧き上がる感情。
おれがずっと蓋をしてきた感情。

明確な輪郭をもって、その感情の正体を知った日からそっと胸の奥底に沈めて蓋をした。
開けてはならない。
大切な感情だからこそ。

それが、サスケの一言で蓋が俄かに開こうとしている。

いけない。
自惚れてはいけない。
相手に同じ感情を返して欲しいと思ってはいけない。

じっとおれを見上げるサスケから体を離し、上気した頬に伝う汗をきゅっと拭ってやる。
「のぼせたんじゃないか?少し長く浸かりすぎたか?」
サスケの言ったことに対してひどくとんちんかんな答えをしているのはわかっている。案の定、「違う」と抗議の声を上げた。
「サスケ、声が…」
と言った瞬間、
「イタチ?イタチか?」
見つかってしまった。

それからひどく不機嫌なダンゾウに当たり散らされるように任務を言いつけられ、苦労しただのなんだのと、少々ねちっこい嫌味を聞かされた。
強引に有休をとったとサスケに言った手前、あまり彼らの言い分をサスケに聞かせたくなかったので、話半ばで浴場からサスケを連れだした。

脱衣場で袖を通しながらサスケは不機嫌とも、不満ともつかない複雑な表情をしていた。
「サスケ、悪かったな」
彼の1年に1度の大切な日に嫌な思いをさせてしまった。
「アンタのせいじゃないだろ」
そういうとサスケはまたむっつりと口を閉じた。

温泉を後にし、ふと思うところがあり、おれはサスケの手を取った。
サスケの体が一瞬びくりと跳ね、固まるのを感じたが、気づかないふりをした。

「行きたいところがあるんだが、いいか?」
サスケを連れだすために使った口実が、こんなところで役に立った。
「行きたいところ?ここじゃないのか?」
「少し歩く」
せっかく汗を流したばかりだが、いいかと聞くとサスケはコクリと頷いた。

町を抜け、来た道を戻る途中で街道から外れる。
鬱蒼と茂る草木を掻き分けるのも面倒だと、木から木へと飛び移る。
こんな辺鄙な場所に何があるんだと文句を言われるかと思ったが、サスケはおとなしくぴたりと後をついてきた。

薄暗い林を抜け、視界がぱっと明るくなる。
切り立った崖の上にぽかりと出来た空間。そこからは遠く海に沈む夕日が見える。
遮るもののなにもない、ただ森と、遠くに見える海と、そこにゆっくり沈んでいく太陽。それだけ。
「ここは…」
サスケが目の前に広がる景色に目を瞠る。
「おれのとっておきの場所だ」
「兄さんの?」
任務の帰りにたまたま見つけた場所だった。
何もかもが赤く照らされ、ゆっくりと夜に包み込まれていく瞬間の美しさに感動した。
いつか、サスケを連れてきてやりたいと思いながら、なかなかその機会を得られなかった。
「兄さん…今日、本当は任務だったんだろ?」
「本当は、というのは少し違うな。もともと休みだったが直前でひっくり返されかけたんだ」
「同じだろ」
やはり、先程のやり取りを気にしているようだ。
当然か。
おれに弱みを見せることや、おれと比較されること以上にサスケが敏感になるのは、おれへの他人の眼や言葉なのだから。
何かと意見が対立する父とおれのやり取りに身をすくませたり、他人のおれに対する妬みや嫉みに対しては怒りを露わにした。
おれに弱みを見せたくない、と本音すら隠してしまうくせに、おれのことになるとその心の内を驚くほどストレートに出すこの弟がただただ、愛しい。

こぽっと再び心の水底に沈めた想いが息づく。

「気にするな、サスケ。おれは何とも思っていない。今日はお前の誕生日だから、どうしても一緒にいたかった」
「だからって…兄さんがあんなこと言われる必要なんてないじゃないか!オレのせいで兄さんが悪く言われるのはいやだ。放っておいてよかったんだ」
これはおれが弁解するほどムキになるな、こいつ。

いけない。
自惚れてはいけない。
相手に同じ感情を返して欲しいと思ってはいけない。
でも…

「馬鹿だな。お前だからだよ。」
「え…」
「お前じゃなきゃ、ここまでしない」

そう言っておれはサスケを抱き寄せた。
暗部から隠れるためじゃない。
ただ、目の前の弟を抱きしめたいと思ったから抱き寄せた。


それが、決して開けてはいけないと蓋をし、胸の奥に沈めた感情だった。


お題配布元:「確かに恋だった」さま

時間がないので急展開に次ぐ急展開!
もうチューしちゃえYO!

恋に気づかない彼のセリフ_4.「この胸ん中モヤモヤしてるの、アンタが関係してるっぽい」(リレー小説⑨:式)

「絶対にチューしてはいけない24」
 設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
 縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。

ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)
イタサスといえば。

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 体や髪を洗い終え、いよいよ湯に浸かる。折角なので人のいる屋内の湯は避け、外の露天風呂まで行くことになった。
 夏の日差しがまだ厳しいこの時間、思った通り外の湯にはおれたちの他は誰もいない。広さはさほどでもないが、竹林と岩に囲われ風情のある風呂の作りだった。
「タオル」
 先に湯に浸かった兄さんが言う。
「湯に入れるなよ」
「そんなことは分かっている」
 打撲の痣を隠すため腰に巻いたタオルのことだ。
 兄さんには初めから知られていたのだからもう意味はない。岩の淵に腰を下ろし、タオルの結び目に手をかける。それでもやはり自分の弱さを自ら晒すようで気が進まない。すると、
「兄弟だろ、恥ずかしがるなよ」
 兄さんは先程と同じ言葉と仕草でおれのタオルを悪戯に引っ張った。でもその中におれへの優しさだとか労りだとかが確かにある。おれは観念してタオルを取った。
 打撲の痣はもう本当に小さい。兄さんは特に何を言うでもなかったが、だからこそ兄さんの隣に並び湯に入ったおれは、その時のことを任務内容に支障がない程度にぽつりぽつりと話した。
交戦状況や相手の技量、手並み、打撲を負った過程もおれの体捌きも全て。
 言い訳じみていないか。途中そう何度も思った。もう話を切り上げるべきじゃないのか。そうも思った。
 けれど、相槌に促されるまま心の内を形にしていくと胸に突っかかっていたものが、きちんと腹の中に落ちてそこに収まっていくような気がした。
「早く治ればいいな」
 おれの話を聞き終わった兄さんはそれだけを言った。おれも「そうだな」とだけ答えた。
 こうして明かしてみればたかだか腰の打撲、おれの手落ちだ。何のことはない。
 でも、やっぱり兄さんに言うには時間がかかる。
 その場にふと訪れた無音に居た堪れずに、おれは適当に訳を言い繕って兄さんから少し離れた。


 本当にいつからおれはこんなにも兄さんに対して強情になってしまったのだろう。
 離れて湯に浸かる兄さんをぼんやり眺めながら思う。
 誕生日のこと、非番のこと、本当は一緒に出掛けたかったこと、怪我のこと。どれも大したことじゃない。ほんのささいなことばかりだ。きっと兄さんだってそう思っている。
「一緒に遊ぼう、兄さん」
「手裏剣術の修行に付き合ってよ」
 昔はそんな風に言えたのに。
 猫バアのところにだって、任務にだって、連れて行ってくれとねだれたのに。
 今はもう言えない。
 口許ぎりぎりまで湯に沈む。
 熱い湯だ。白い湯けむりにこめかみにまた汗がにじむ。濡れた髪から水滴が滑って落ちた。
「……」
 たぶんおれは怖いのだ。兄さんに、取るに足らない存在、聞き分けのない子供だと見做されてしまうのが。
 だから強がる。甘えも弱音もいらない。吐かない。立派な忍。そんなおれならきっと兄さんだっておれのことを認めてくれる。
 けれど一方ではまだ捨てきれない、拭えない、幼い頃からのイタチへの思慕がある。おれのために時間を取ってくれたことがこんなにも嬉しい。
 兄さん。
 イタチ。
 こんなにも強く、苦しく、幸福に、たとえば他所の兄弟も兄のことを弟のことを思うものなのだろうか。
 そういうことを考えていると、そのイタチが静かに湯をかき分け、こちらへとやって来た。
「サスケ」
「兄さん?」
 どうしたんだ。もう上がるのか。と問うおれの言葉は「しっ」と潜められた声と共に口に当てられた兄さんの手のひらに塞がれ、奪われた。
 瞬くと、やにわに体を抱かれる。重なる肌の感覚に一瞬すべてが真っ白になった。
「にい…っ」
「喋るな」
 そのまま近くの岩陰に押し込められ、今度は上から覆い被さるように兄さんに抱きすくめられる。
「急になにしやがる」
 イタチの体に強く抱き寄せられているため上手く喋ることが出来ない。イタチがおれを抱きすくめた理由はこれが狙いだろう。
「…木の葉の暗部だ」
「暗部だと…?」
 イタチの囁きにそっと露天風呂の入り口の方の気配を窺う。あちらからはここが死角になっているため、おれたちに気付いた様子はないが、確かに二人分の気配がある。
「だが、どうして隠れる必要がある?」
 休日、兄弟で温泉に来ているだけだ。なにも疾しいことはない。
 と、おれは思っていたのだが、
「実は今日は少々強引に有給を取ったんだ」
「え…」
「そのおれの代わりに任務に出てくれたのが彼らだ。まあ早く片付いた上、温泉に立ち寄れるほどの任務だったみたいだが」
 顔を合わせるのは少々心苦しい、ってそりゃそうだろうよ。
 経緯を聞き、兄さんの腕の中で兄さんに呆れる。しかし当の兄さんはどこ吹く風だ。
「だから、彼らが立ち去るまで少し辛抱しろよ、サスケ」
「辛抱って」
「しばらくはこのままだ。おしゃべりも控えろ。見つかる」
 そんな。
 抗議をしようとした口はまた手で塞がれる。
 兄さんは暗部の様子を窺っているようだったが、おれはそれどころではない。
 熱い。
 体が火照るのは湯の熱のせいではなく、兄さんの肌の温かさがおれにも伝わっているからだ。
 石鹸の香り。兄さんの胸板。鎖骨。首筋。玉を結ぶ水滴。流れる汗。息遣い。
「に…にいさん…」
 おれは兄さんの手のひらの下で呻いた。唇がその少し熱い手のひらに擦れる。見上げると、兄さんはこちらを見下ろしたところだった。
 ああ。
 こんなにも強く、苦しく、幸福に、たとえば他所の兄弟も兄のことを弟のことを思うものなのだろうか。
 先程の問いがまたぐるりと回る。ぐるぐる回る。
 喋るなと言われたが、もう無理だ。限界だ。
 この胸に渦巻くわだかまりはきっと兄さんに話さなければ、どうにもならない。
 さっきのように聴いてほしいんだ、兄さん。
「苦しい…」
 打撲なんかよりもずっと痛くて苦しい。
「サスケ…?」
「この胸ん中モヤモヤしてるの、アンタが関係してるっぽい」
 にいさん、と呼んだ声は思うよりもはるかに強く兄さんを求めていた。

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お題配布元:「確かに恋だった」さま

未だ オチが見えないので、とりあえず急展開を迎えてみた…!
イタサスといえば壁ドン。壁ドンといえばイタサス。押し付けるのが似合う兄さんと、押し付けられるのが似合うサスケ。王道!
そしてせっかくの温泉なので裸で抱き合ってみた。王道…!兄さんの体がサスケより一回り大人の体なのが萌えます。
 
急展開、新展開、意外な展開。
展開を書くのは好きなんだなあ…!
オチがいつも思いつかないんだなあ…。

よろしくなんだな!

世話焼きな彼のセリフ_4.「まだオレがついてないとダメだなお前は」(リレー小説⑧:春壱)

「絶対にチューしてはいけない24」
 設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
 縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。

ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)
パンツの行方ェ…


この状況、一体どうすればいいだろうか。
サスケのパンツを引っ張るオレと、それをどうにか止めようとするサスケ。
傍から見たらすごくバカバカしいぞ。

ひとまずゴムが伸びてしまってはいけないのでサスケのパンツから手を離す。
「その…なんだ。そういう反応はこっちが悪いことをしている気になるんだが…」
そう、まるで痴漢かなにかのように。
「いや、その…急で…びっくりして…」
と何やら口ごもり、それから
「に、兄さん、先に行っててくれ。その、オレ、トイレに行ってくるから」
そう言ってタオルを片手にすたたたと走っていってしまった。
一体どうしたというのか。難しい年頃だ。

ガラス戸を開けるともうもうと湯気が立ち込め、洗面器を置くカーンという小気味のいい音や、シャワーが床を叩く音が聞こえてくる。
子供がはしゃぐ声は女湯から聞こえてくるものだろう。
幼い頃、家族で温泉に行った時、大きな風呂にはしゃいでいたサスケの姿を思い出し、ふっと口元が緩んでしまった。

かけ湯を浴びて洗面台に歩いていく。
人が少ないので逆に何処に座ろうかと迷ってしまう。
サスケが入ってきた時にわかりやすいように、入り口の近くに腰を落ち着けた。
ほどなく、腰にしっかりとタオルを巻き付けたサスケも浴場に入ってきたので二人並んで体を洗った。
サスケはよほど汗が気持ち悪かったのか、いきなり豪快に頭から湯をかぶっていた。
ちょいちょい兄さんにお湯が飛んできてるんだが…(´・ω・`)

「サスケ」
「んー?」
とわしゃわしゃと髪を洗うサスケの腰にぴたりと掌をあてる。突然、腰を触られて驚いたのか、サスケの体がびくりと震えた。
「な、んだよ」
「傷はまだ痛むのか?」
そう言ったオレの言葉にサスケが目を見開いた。
「アンタ…気付いてたのかよ…」
サスケは腰に巻いたタオルをぎゅっと握る。
「ここ数日、歩き方がおかしかっただろ」
そういうと俯いて、きゅっと唇を引き結んだまままた髪を洗い始めた。

先程、下着を脱ぐのを渋ったのはこのせいなのだろう。
兄であるオレに対して余計な心配をかけまいとする気持ちと、オレに弱みを見せたくないという気持ちが、常にこの弟の中で渦巻いている。

「まだ痛むか?」
くり返し聞いてやる。
多少意地が悪くとも、時にはこうして彼のプライドを揺さぶることで、サスケの頑なな心の内を解す。
お前には力を抜いていい場所があると示してやる。
むしろ、オレの前ではそうしていいのだと気づいてほしい。
「痛みはもうない」
ぶっきらぼうにサスケが答える。
相変わらず視線をこちらに向けてはくれない。
きっとその純粋で頑なな胸の内でいろいろ毒づいたり、あれこれ思いを巡らせているんだろう。
弱みを見せていいんだ、と言わないと見せられない不器用さすら愛しい。

「まだオレがついてないとダメだなお前は」

口に出すと、またこの矜持の高い弟は子ども扱いしていると怒るだろうから、胸の中でそっと呟くだけにした。


サスケのパンツください。

朝起きると式さんからブログ更新のお知らせと共に「パンツ問題」とメッセージが届いていた。
「なななななんぞ?!」と思い開いてみてびっくりのキラーパス。
式さんはキラーパスの達人です。

シリアスになったりギャグに走ったり。温度差の激しいブレまくりリレー小説になって参りました…
シリアスなイタサス大好きなのですが、こういう書き散らし企画では、おふざけも入れてないとつんじゃうんです。

イタサスについて本気だして考え始めると深みにはまって抜けられなくなっちゃうので危険。
なのでこのリレー小説はちょっぴりのシリアスと半分以上ギャグテイスト、を春壱スタンスにして走り切りたいと思っています。

ではでは続きを式さんにパス!
サスケのパンツはいただいた!

恋に気づかない彼のセリフ_3.「放したくないって思ったら、自然と身体が動いてた」(リレー小説⑦:式)

「絶対にチューしてはいけない24」
 設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
 縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。

ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)
サスケのパンツがピンチになります。

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 温泉。兄さんからのそれはおれにとってなかなか魅力的な提案だった。
 昼間から、それも家の風呂ではなく温泉に、しかも兄さんと行けるだなんて滅多にない貴重な機会だ。修行で掻いた汗を流すことも出来る。
 そういえばアンタの買い物はいいのかと問うたら、
「後でいい」
 と、こちらはどうも本当に買いたいものがあるのか怪しいが、ともかく温泉に行くことについて反対する理由はない。賛同の意を示すと、このまま温泉を訪ねる流れになった。
 途中コンビニに寄り二人分の下着を買う。泊まり客以外にも開放されている温泉宿の暖簾を潜れば、平日の真っ昼間ということもあってか、脱衣場はそれほど混み合ってはいなかった。おれたちの他には二、三人しか客はおらず、各々風呂に入る支度をしたり、体を拭いたり、あるいは扇風機の前を陣取り涼んでいる。
「温泉なんていつぶりだろうな」
 そう言う兄さんは空いているロッカーを見つけると早速上衣を脱ぎ籠に入れた。
 忍、それも暗部を生業としているため日に焼けた肌ではなかったが、すらりと美しい筋肉のついた兄さんの体が露わになる。細身だが胸の厚みや首筋、肩幅などは十六になったばかりのおれとは違う、兄さんはもう大人の男なのだとまざまざと思い知らされる。
「どうした?」
「なんでもねーよ」
 いつまでも実の兄の体を見つめているのもおかしな話だ。おれも兄さんに倣って上衣を脱ぎ捨て、続けてズボンに手を掛ける。が、
「そういえばここは湯治の場としても有名らしいな」
 と言う兄さんの言葉にはたと手を止めた。
 まずい。
 そう思うことがある。
 痛みが引いていたためすっかり失念していたが、実は先日の任務で敵方の忍と交戦した折、腰骨の下あたりに打撲を負ったのだ。打撲自体は軽傷であり、重ねるがもう痛みはない。ただ痣だけがまだしっかりと残っている。
 おれに関してはやたら目敏いイタチのことだ。絶対に気が付く。その上であれこれ心配されるのも面倒だが、なにより任務中しくじったことを兄さんには知られたくない。
 ただタオルを腰に巻いてしまえば隠せる場所だ。兄さん、先に風呂場へ行ってくれないかと焦れながらズボンを殊更ゆっくりと脱ぐ。
 だが、ちらりと隣を窺えばイタチはその長い髪を束ね、結い上げているところだった。
「別におれを待たなくてもいいぞ」
 おれの視線に気づいたイタチが言う。確かに上衣もズボンも脱ぎ終わり、下着だけのおれがぼんやりと立ち尽くしているのは妙だろう。
 どうしようかと悩みながら下着に手を掛ける。すると何を勘違いしたのか、
「男同士、兄弟だろう?恥ずかしがるなよ」
 イタチはあろうことかぐいとおれの下着に指を引っかけ、引っ張ってきやがった。
 思わず「ぎゃあ」と声が出る。
 その叫びに驚いたのは、きっとほんの悪戯気分でおれの下着を摘まんだ兄さんだった。
「いきなりなんだ、サスケ」
「なんだもなにも、アンタがおれのパンツを引っ張るからだろ!」
「それはそうかもしれないが…、ところでお前、何しているんだ」
 イタチの視線の先、そこには兄さんが引っ張るパンツを必死に掴んで死守するおれの姿があった。
「は…放したくないって思ったら、自然と身体が動いてた…」
 いいから、さっさとおれのパンツから手を離せ!くそがぁ!

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お題配布元:「確かに恋だった」さま

なんかもうジェットコースターのようなリレーになってきた。シリアスなのかほのぼのなのかアホなのか、蛇行運転甚だしい。
というわけで、サスケのパンツ問題どうにかしてください、春壱さん…!

23日までにあと何回更新できるかなあ。

世話焼きな彼のセリフ_3.「本当にちゃんと確認したのか?」(リレー小説⑥:春壱)

「絶対にチューしてはいけない24」
 設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
 縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。

ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)
 1回おいて兄さんが再び壊れます。




少々強引だったが、修行を切り上げてサスケを連れだした。

あのままやっていたらムキになったサスケがチャクラ切れまで粘ってしまいそうだったから。

そんなことになったらせっかくの誕生日が祝えない。そんなのナンセンス!

「買いたいものがある」と言ったオレの方便はサスケにはお見通しのようで、道中、何を買いたいのかとしきりに尋ねられる。

どこに行くんだ、何しに行くんだとついて回ってきた幼い頃のようで、可愛い。


適当にはぐらかすオレの気持ちにもどうやら気付いたらしいサスケが、自分から欲しいものが出来た、と言ってきた。


「買いたいもの?」

「服。汗を拭いて着替えたい」


どうやら汗をかいた体でオレに触れることを気にしているらしい。な
んだか女子っぽいぞ、サスケ。
でもそんなところも可愛いぞサスケ。


「服か。わかった。でもオレは流行なんてわからないからあてにするなよ」

「しねぇよ」


そんなやり取りをしながらオレたちは町に入った。

娯楽施設や服、装飾、家具と言った様々な店が多く軒を連ねている町で、町の至る所で買い物に来て、お茶を飲みながらおしゃべりに花を咲かせている女の子や、遊具で遊ぶ子供の姿を見ることが出来る。

オレは町の入り口の案内書で配っているパンフレットを手に取って店を確認する。

「服を買う店は決めているのか?」

「別に。見つけたところに入ってみる」

「そうか」

オレも人のことは言えないがサスケも普段着には無頓着で、しょっちゅう母に呆れられる。
こだわりがない方が案外すんなり買うものが決まるという利点はあるが、「同じようなものばかり着ている」といわれてしまうと何とも言えない。

「サスケ、ああいうのはどうだ?」

ショーウィンドウにディスプレイされた白とピンクのレースやリボンをふんだんにあしらったふわふわスカートのワンピースを指さすと

「誰が着るか!ばか!」

と叱られた。
冗談なのに…(´・ω・`)


町の中心に近づいたところで、サスケはなにか目に留まったらしく、

「ここ、見ていいか?」

と店に入っていった。

店内には何人か男の子たちが鞄やTシャツをみて笑い合っている。

サスケもハンガーにかけられたTシャツを何枚か手に取っては棚に戻しを繰り返し、おもむろに掴んだTシャツとチノパンを掴むと、試着もせずにレジに持っていこうとしたので思わず引き留めた。

「おい、サスケ」

「なんだよ」

「お前、それサイズはみたか?」

「ああ。ほら」

とタグを見せてくる。

「そうじゃない。試着して本当にちゃんと確認したのか?Tシャツはともかくチノパンツやズボン、スカートの類は型紙の取り方でサイズが微妙に変わる。それにSMLだってメーカーが違えば基準が違う。実際に着てみるとウェスト周りや腿の周りの伸縮具合が…」

「あああ!!もう!大丈夫だって言ってるだろ!アンタは女子か!!」


また怒られてしまった…(´・ω・`)


試着は大事だぞ、サスケ。


「そうだ。サスケ」

「ん?」

「汗を拭きたいって言ってたな。この後、温泉でも行くか?」

先程目を通したパンフレットにこの町は湯治に利用する客も多いと書いてあった。

せっかくの休みだ。昼間からゆっくり湯船に浸かる贅沢だってしてもいいんじゃないだろうか。


お題配布元:「確かに恋だった」さま


兄さんがサスケに薦めたのはゴシックでロリータな服。
あの世界にあるんだろうか(笑)

ズボンやスカートのサイズでいつも泣きを見ているのは私です。

式さんからの変化球ちゃんと受け止められてますか?
そして温泉行っちゃいますか?
てなわけでパース!

このままいくとサスケ誕の日は寝ずに更新ですね(笑)

恋に気づかない彼のセリフ_2.「その笑顔見れただけで、なんか不思議とうれしくなる」(リレー小説⑤:式)

「絶対にチューしてはいけない24」
 設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
 縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。

ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)
 相変わらずもだもだサスケ。

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 買いたいものがあると兄さんが言う町は忍の脚で駆ければ、うちはの修練場からものの十数分で着く距離にある。だが隣を歩く兄さんにその気はないようだった。比較的人の往来がある視界の開けた街道を二人で歩く。
「こうして出掛けるのは久しぶりだな」
「ああ、そうだな」
 イタチに言われて気づく。
 出掛ける。
 そうか。今おれたちは二人で出掛けているんだ。
「…兄さんとこうしていると昔を思い出す」
「昔?」
「猫バアのところへ無理を言って連れて行ってもらっていた」
 あの頃のおれは多分今よりもっと無邪気で、それから兄さんに対して強気だった。どんな我儘だって、きっと兄さんなら「仕方ないな」と微笑ってくれると信じて疑わなかったから、全身で甘えられた。
 兄さんは変わらない。あの頃のまま、今日だっておれに付き合ってくれている。
 変わってしまったのはおれだ。
 いつから素直に「本当はこんな風に兄さんと出掛けてみたかった」と言えなくなってしまったのだろう。
「…なあ、兄さん」
「うん?」
 どうしたとおれをちらりと見る瞳にやっぱり何も言えなくなる。
 代わりに違うことを口にした。
「買いたいものって何だよ」
 忍具なら今も兄さんは猫バアのところで仕入れているはずだ。
 だが、
「さあ、何を買おうかな」
 なんてはぐらかされた。
 まさか甘味の類じゃないだろうな。イタチなら大いに有り得る。この前だって里の通りでばったり会ったとき、ちょうどいいからと無理矢理甘味処に引っ張り込まれた。
 兄さんを振り仰ぐ。
「なあオイ」
「さっきからなんだ」
「アンタが買いたいものって、甘味処とかにあったりしねーよな」
 そう念を押したつもりが、逆にイタチの顔を緩ませる。
「甘味処、行きたいのか?」
 どこをどう聞いたらそうなる。おれが甘いものは苦手だと知っているくせに。
 でも、
「…アンタがどうしても行きたいなら、付き合ってやってもいいぜ」
「サスケ?」
 イタチはおれが返した答えが意外だったのだろう、少し瞳を大きくした。
「だが今日はお前の誕生日だろう。そんな日にお前のきらいな」
「べつに気にしてねーよ」
 それに兄さんとなら本当は甘味処に行くのも悪くないと思っている。
 普段は能面を付けたような兄さんも、好きなものを前にしたらとても優しげな顔をする。だから、昔から兄さんとなら甘いものを食べるのは好きだった。
「おれ、その笑顔見れただけで、なんか不思議とうれしくなる、から…」
 瞬間、頭をぐっと兄さんに抱き寄せられた。
 何事かと驚いたが、そのまま手のひらで抱かれた頭をまた乱暴に撫でられる。
「ちょ…」
「いくつになっても可愛いな、お前」
「はあ?」
 どこがだよとは思ったが、まずは兄さんの腕を逃れたい。
 兄さんは木陰にいたからそれほどでもないだろうが、おれは朝からずっとチャクラを練って体を動かしていたから汗をかいてしまっているのだ。身だしなみをそれほど気にかけているわけじゃないが、汗でべとべとなのは気分が悪い。そしてそれが兄さんの服に付いてしまうのもいやだった。
「兄さん」
「なんだ?」
「おれも買いたいものができた」
「買いたいもの?」
 問われて頷く。
「服。汗を拭いて着替えたい」
 折角兄さんと出掛けるのだから、さっぱりしておきたい。
 遠目には漸く目指す町並みが見えてくる頃だった。

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変化球投げるぞぉぉぉ!と事前に宣言しておいたので、きっと春壱さんなら大丈夫!
サスケといえば衣装チェンジ。
汗を拭きたい。新しい服に着替えたい。そんなサスケのお願いに兄さんはどう答えてくれるのか…!

サスケ誕まであと一週間。残りは二人合わせてあと10話。
うん。これ、既に大晦日の更新ラッシュが思い出される展開だな。

世話焼きな彼のセリフ_「2. 俺はお前の保護者じゃないんだけどな」(リレー小説④)

「絶対にチューしてはいけない24」 設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。 縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。 ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)


サスケの誕生日に、サスケの望むことをと思い、いつもなかなか付き合ってやれない修行か、もしくはたまには羽を伸ばして出かけてみるか?と提案したら、「修行」と返ってきた。
ある程度予想はしていたが、改めてそう言われるとあまりにもサスケらしくて笑ってしまった。 だが、サスケがそう望むなら、彼の気のすむようにさせてやりたい。
昔からこと家族にはその身の丈に合わないほど気を配るサスケのことだ。
普段言いたくても言えないこと、時と場所を弁えてその心の内を明かすことなくそっと鞘にしまったことが数多あるだろう。彼のその細やかな心配りに家族が助けられたこともまた事実。
明日くらいは、言いたいことを言って、やりたいことをさせてやりたい。
しかし、だ。「修行を」と言ってきたサスケの態度が少し気になった。
彼の本音に間違いはない。だが、迷っている。そんな気がした。
遠慮といったものの類ではなく、本来サスケの持つ性格か、性分か何かが、彼の想いをもやもやとさせているようだ。
生憎、オレにその心の内を知る術はないが、修行をしているうちに、少しでも溢してくれればいい。そう思いながらオレは眠りについた。

朝、居間へ行くと、すでにサスケは身支度を整え、朝食を取っていた。
「なんだ、随分と張り切ってるな」
というと
「そんなんじゃねぇよ」
と味噌汁を啜った。
そんなサスケの隣に座り、一緒に朝食を取る。
久しぶりに朝からサスケの修業を見るといったら、母に呆れられた。
「誕生日くらい、普段しないことしたらいいのに」 というのが母の言い分で、もちろんそれはオレもよくわかる。
だが、サスケが自分が頼んだことだと言ったら、また呆れられた。

家を出る時に、母が握り飯を包んで持たせてくれた。
「あなたがついてるから大丈夫だと思うけど、明日からまた任務なんだからあんまり無茶しないのよ。水分はこまめにとってね。わかってると思うけど、夜は父さんも早く帰ってきてサスケのお祝をするんだから遅くならないようにね」
と言い含められた。
引き戸を開けて外にでると、先に外に出ていたサスケがオレの手中の包みに気がついた。
「母さんが持たせてくれた」
「随分といろいろ言われてたな」
「そうだな。母さんも心配なんだろう」
いくつになっても心配。そういうものらしい。 しかし、
「オレはお前の保護者じゃないんだけどな」
いつまでも兄として見守ってやりたいと思う気持ちと、もう守られるだけの存在ではないサスケを一人の人間として対等であろうとする気持ちと。そして…
くしゃりとその感触を確かめるようにサスケの撫でると
「だから!髪の毛ぐしゃぐしゃにすんのやめろって!」
と案の定怒られた。
「悪かった。つい、な」
といつものように額を小突いたら、ますます拗ねてしまった。

修練場に着いてからは、以前に教えたとおりにやってみろと、術を発動させたが、サスケの言う通り、制御と威力が不安定で、実戦使わせるには危うい出来だった。 細やかなチャクラコントロールを必要とする術なので、昔から繊細なチャクラコントロールが苦手なサスケにはやりにくいのだろう。
だが、何度かコツを教えるうちに次第に形になってきた。くり返し練習すれば実戦で発動できるようになるだろう。しかし、
「サスケ、この辺にしないか?」
そういうとサスケはきょとんとした顔で「なんでだよ」と不満の声を上げた。
もう少し練習すれば安定するのは確かだが、朝からずっとチャクラを要する術を練習しているので、このまま続ければばててしまうだろう。
そうなればせっかくサスケを祝おうと料理を作ってくれている母の気持ちや、仕事を早く切り上げ、帰ってくると言っている父の気持ちはどうなる?というと、サスケはオレの提案を受け入れた。
母が出かけに持たせてくれた握り飯を食べながら、
「昼ご飯を食べたら、ちょっと隣町まで付き合ってくれないか?」
「え?別に…いいけど…何かあるのか」
「ああ、ちょっと買いたいものがあるんだ」
というと、サスケとイマイチ腑に落ちない、という様子で「ふうん」と言った。

自分から「お出かけしてみたい」と言ってみようか、どうしようか、と言いだせないサスケに兄さんは気付いたようです。 兄さんがサスケを連れだします。 そんな隣町までの道中を式さん、よろしくです!

恋に気づかない彼のセリフ_1.「アンタがいないと調子でねーとか、俺どっかおかしいのかな」(リレー小説③:式)

「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。

ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)
今日から新しいお題です。もだもだサスケ。

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「なら、どこか出かけるか?それとも修行か…そういえば前に出来ないと言っていた術があったな。手伝ってやるからもう少し頑張ってみるか?」
 洗面所へ入っていく兄さんを見送り、自室へ戻ったおれは先程の兄さんの言葉を思い返しながらベッドに転がった。昼間庭に干されていた布団にはまだ太陽の日差しの温もりが残っているようだった。
 修行。それはおれが望んでいた一日だ。
 兄さんの言う通り、おれには一つ手に余る術がある。一度兄さんの教えを乞い何度か試してみたが、まだ上手くは出来ない。実戦で使うわけにはいかないだろう。確率が低すぎる。
 日頃暗部の任務に忙殺されている兄さんがその修行に付き合ってくれるという。こんな機会は滅多にない。
 二つ返事で答えてもよかったはずだ。
 だが、おれは。
 寝返りを打つ。部屋のカレンダーが目に入る。居間のものとは違い、真っ白な四角い枠がただ並んでいる。
「……」
 出かけるって何だ。
 何処かへ行くのだろうか。二人で。
 もしおれがそうしたいと言ったら、アンタはいったいどんな顔をするだろう。
 おれはどんな顔で言うのだろう。
 ベッドからのそりと体を起こした。



 階下へ降りると風呂上がりの兄さんは夕飯を食べていた。母さんはと訊くと、入り代わりで風呂に入ったらしい。
 兄さんの向かいは父さんの席だから、二人きりだったけれど、おれは兄さんの隣に腰を下ろした。
「なあ、兄さん」
「うん?」
「さっきの話だけど、明日は…」
 修行に付き合ってくれよ。
 どこか後ろ髪を引かれるような思いでそう告げた。理由は分からない。
 兄さんが付き合ってくれるというだけで十分なはずなのに。
 兄さんは「そうか」と頷いた。丁寧に魚の身をほぐし、口に運ぶ。
「あの術、前に教えた通りじゃ上手くいかなかったか」
「ああ。発動はするが、威力と制御が思った通りにはまだいかない。むしろ兄さんに教えてもらった時が一番上手に出来たくらいだ」
「ああいうのはだんだん自分の癖に引っ張られるからな」
 確かにそうかもしれない。
 しかし、だ。
「アンタがいないと調子でねーとか、俺どっかおかしいのかな」
 呟くと、少し俯いていたらしいでこをいつものように小突かれた。
 顔を上げると、兄さんが微笑っている。
「お前がおれといると張り切るのは昔からだろ」
 たぶん昔挫いた足のことだ。
 人のでこを好き勝手に突いてくる指を払う。
「昔のことをいつまでも言うなよな、恥ずかしい」
「そうか。悪かったよ。許せ、サスケ」
「明日、修行に付き合ってくれたらな」
「…修行か」
 と、兄さんは沢庵を齧った。
 ぽりぽりと音が鳴る。
 「なんだよ」と返すと、ふふと可笑しげに笑われた。
「誕生日なのにお前らしいなと思っただけさ」
「悪かったな」
 出かけるのか、修行をするのか。
 おれらしくないことなんて選べるかよ。

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修行を選んでみた!
でも、兄さん、本当は…。サスケのもだもだを助けてあげて、兄さん!