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「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてまてません。ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)
24企画ラスト更新。R18。
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「ん…、ふ…っ」
くにくにと胸の尖りを摘ままれ、弄られる。これまで意識すらしたことのなかったそこは、だからこそやたらに感覚が集中して、体中がひどく敏感になった。声を上げるわけにはいかないから、吐き出す息をなんとか手の甲で押さえ込む。
「どうだ、サスケ」
兄さんがおれのシャツの中でもぞもぞと手を動かす。
どうだ、と言われても困る。男でも胸を弄られれば感じるのは普通なのだろうか。
「う…、へ、んな感じだ」
「でも、ここは固くなっているぞ」
つと兄さんの手がおれの下半身へ伸ばされる。布越しに撫でられ、畳の上で腰が跳ねた。
「ば…っ!急に…っ」
「ほしいと言ったのはお前だろう。それともまだ何も知らない子どもか?」
まるで形を確かめるように何度も滑らされる兄さんの手のひらを感じて口を噤む。その柔らかに揉み込むような手つきから、兄さんはまだおれに退路を残してくれているのだろう。
いやだと言うなら今の内だ。兄さんはそうおれに伝えている。
「もう子どもじゃない」
おれをこする兄さんの手首を取る。そのまま布の中に導けば、きゅっと心地良い具合に握られ、手の中で締め付けられた。
「っあ…っん」
思わず吐いた息が震える。
くっと兄さんの口角が上がったのが暗闇の中でも見て取れた。
「サスケ。もう濡れている」
「そんなこと、いちいち言うなっ」
「人にされるのは初めてか?」
くちくちと小さな湿った水音が部屋の四方へ散っていく。こんな微かな音が父さんや母さんに聞こえるはずはない。そう分かっていても、拍動は加速していく。気を抜けば、自分でも知らないような声を上げてしまいそうだった。イタチの問いには首肯で返す。だが兄さんはまだ勘弁をしてくれなかった。
「じゃあ自分でしたことは?」
そんなことを訊いてどうする。そうは思うが、「サスケ」と促され口を開いた。
「あ…ある…」
おれだってもう十六だ。任務に支障が出ないようにと必要があって抜くことくらいはある。
イタチは「そうか」と頷いて、これまでよりも大きく大胆におれを扱き始めた。
「サスケ」
「あっ、あ…っ、んぅ…っ」
「どこがいいのか、教えて」
畳に横たわるおれの隣に横臥した兄さんは、おれのものを擦る手はそのままに、もう片方の手でまずおれのシャツを胸までたくし上げた。そうしてその頂きを吸いながら、下穿きごとズボンを膝までぐいとずり下ろす。
「どこって…あ、あ…ッ」
「お前の好きなところさ」
「そんなの…っ」
首筋に唇が這わされる。胸も下半身も弄られて、もうまともな思考が追いつかない。ただイタチがおれの先っぽを先走りを絡めた指先でこするたび、「あ!あ!」と声を上げた。
「ここか?」
「んっ、そこ…っ」
頷いて乞う声が甘く上擦る。こんな声はおれじゃない。こんなのはおれじゃない。だが体は素直にイタチの手淫を受け入れ、もたらされる悦びに打ち震えている。
裸足の爪先が畳を何度もこすった。布団はすぐそこだというのに、兄さんは今ここから動く気はないらしい。
障子越しの月明かり。火立てに揺れる微かな炎。夜の中で見た兄さんの目許はいつもより少し赤らんでいた。
「兄さん…」
求められているのだ。おれが。兄さんに。
途端感じて、とろりと先から零れた。
「は…っ、いや…だ…」
恥ずかしい。
でもやめないで欲しいから、おれは体を捻ってイタチの首にかじり付くようにしがみついた。
背を支えられ抱きしめられた腕の中で、おれがくちゅくちゅと音を鳴らす。
「兄さん…おれ…」
「もういきそうか?」
「ん…」
下腹部がくっくっと疼いている。腰の奥が熱い。なんとか制そうと体を捩るが、腰を突き出してしまうのを止められない。
けれど、このままだと兄さんが…。
「兄さん」
「うん?」
「その、おれだけいくのか…?」
兄さんだって、おれの自惚れでなければ、感じてくれているはずだ。
見つめ合った兄さんの眸はいつになく夜に濡れていて、初めて垣間見たその情欲にまたおれの熱はいっそう昂る。
兄さんはつとおれの根元から睾丸を撫で、その奥の窄まりに触れた。
「あ…!」
そこは…。
どくんと心臓が跳ねる。
まさかと息を殺す。するとイタチはそこを指の腹で二・三度こすり、またおれの反ったものに手を掛け、くちくちと扱いてくれた。
「に、にいさん…」
「そう急くな、サスケ。それにお前、明日は任務だろう?」
「……」
小さく頷く。
一瞬おれが怖気づいたのに気付かないイタチじゃない。気遣うように額や頬、瞼にキスをされる。
「代わりにサスケ」
「ん…っ、あ…なんだ…?」
「いくところ、見せて」
イタチの手が激しさを増す。
次いで接吻けられた。唇を割られ、舌をぐっと突き込まれる。それはまるでイタチの欲のようにおれの中をぐちぐちと掻き回し、掻き乱した。
「あっ、あ…っ!んぅ…っ」
上も下ももう分からない。
イタチだけがおれの全てになっていく。
「んぁ…っん!あっ、あぁっ、も…っ、いく!出る…!出るっ!にいさん…!」
「いいよ。そのままいって、サスケ」
こすりあっていた舌をきゅっと強く吸われた瞬間、
「んっ、あっ、んっあぁあ…っ!!」
おれはイタチの腕の中で精を飛ばし、今までにない極みを迎えた。
その後、ぐったりしたままのおれを濡れた手拭いで丁寧に清拭してくれた兄さんは、ようやく布団におれを抱き上げ、連れて行ってくれた。
「一緒に寝るなんて何年振りだろうな」
夏の薄い布団を腹まで掛けられる。
「…なあ兄さん」
「うん?」
「その、また今度」
今度はおれちゃんと…。
そう続けようとした言葉は兄さんの小さな笑い声に奪われてしまった。
「まさかお前にそれを言われる日が来るとはな」
「うるせーな」
でも本当だからな、兄さん。
いつかきっと…。
やがて火立ての明かりはそっと吹き消され、おれは兄さんの腕の中で短い眠りに就いた。
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完…!
R18シーンは半々だと思っていたのに…!
読みたかったのに…!
一発書きの読み返しなし状態ですが、とりあえず23日中に投稿したいので投稿します。
気になったら後日こそこそ修正かけにきます…。すみません…。
24企画にお付き合い下さったみなさま、本当にありがとうございました!
そして春壱さん、今回もおつかれでした!また次の企画、がんばろう。
「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)
「また今度だ」はじまる。
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滅多にない家族揃っての夕食の後、改めて風呂に入り直し、おれは自室のベッドに倒れ込んだ。思わず胸から溜息が零れるのは、風呂上がりの熱のせいだけじゃない。濡れた髪の滴がシーツに染みていく。
兄さんが一日おれのために時間を空けてくれた。偶然じゃない。おれの誕生日に合わせて休みを取ってくれていたのだ。
修行をした。出掛けもした。買い物へ行き、温泉にも入った。たぶん「買いたいものがある」と兄さんが言ったのはおれを連れ出すための方便だったのだろう。
それから、おれ、兄さんと…。
唇に触れた兄さんを思い出せば、胸の中で心臓が大きく脈を打つ。
こんな居ても立っても居られない感覚は知らない。どうしていいか分からない。自制がきかない。誤魔化すようにシーツの上で身を捩った。
また今度。
今それがほしい。
「兄さん」
閉じられた障子の向こうに呼びかける。集落の誰も彼も、父さんと母さんも寝静まったような夜半、兄さんの部屋には未だ明かりが灯されていた。
「おれだ」
言うと、入ってこいと返される。
戸を開くと兄さんは文机に向かい、火立ての下、筆を執っていた。日中おれに付き合ったから、今頃仕事をしているのだろうか。
そうだとしたら、こんな気持ちで訪ねてしまったことが酷く疾しいことのように思われて、後ろめたい思いに駆られる。
傍に行くのは憚られた。
兄さんのぴしりと正された背を眺められる、敷いてあった布団の脇に座して黙する。
兄さんは暫く書きものを続けていたが、いつまで経っても話を切り出さないおれを見るに見兼ねてか、手は筆を走らせながら、
「どうした、サスケ」
と訊ねた。
だが、本当のことは言い淀む。
思案して、当たり障りのないことを口にした。
「今日の礼を言いに来ただけだ」
「言われるほどのことをした覚えはないがな」
「…そうかよ」
どこか気まずく思うのは、あの夕焼けのときのようにおれたちの想いが重なっていないからだろうか。
引き上げ時だ。
「じゃあ、それだけだから」
腰を上げる。だが、「サスケ」と引き留められた。
筆が硯に居場所を見つける。火立ての炎が小さく揺らめいた。兄さんが振り返る。
「おれはちゃんと父さんと母さんのところへお前を返したぞ」
ああ、そうだな。
分かっている。
だが、おれはまたこうしてアンタのところへ、兄さんの許へ来てしまった。
兄さん。
「また今度が早く、今、ほしい」
兄さんは笑わなかった。
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パスだー…!!
そして、そろそろケーキを食べないか、春壱さん。
「絶対にチューしてはいけない24」
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縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)
一旦おしまい。
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兄さんに抱きしめられている。
おれは咄嗟に辺りの気配を探った。だが暗部や他に人のいる様子はない。
必要がない。こんなこと。必要がないのに、おれは今兄さんの腕の中に抱かれている。
「兄さん…?」
訊ねるが答えはない。ただいっそう強くその胸に抱き寄せられた。
温泉の時とは違う、布越しに感じる兄さんの匂い。体温。静かな呼吸。それらを感じるたび、おれの体はかっと熱くなった。
あの胸の痛みと苦しみがぶり返す。
「苦しい」
兄さん。
兄さん。
「おれ、苦しいんだ」
胸の内を明かすように呟くと、兄さんはおれの髪に手を差し入れながら「ああ」と頷いた。その指先が熱を持ったおれの耳にそっと触れる。
「おれも苦しいよ、サスケ」
誘われるようにして顔を上げた。
やさしい夕焼け色と深い夜の色。そのどちらをも兄さんはきっとずっと持っていた。そして今、それをおれにこうして打ち明けてくれている。見せてくれている。
「好きだ、兄さん」
想いはかんたんに零れた。ぽろりと零れた。そのあとは溢れて止まらなくなる。
「好きなんだ。兄さん。おれ、兄さんのことが」
好きなんだ。
だから、取るに足らないだなんて思われたくない。アンタにとって必要な価値あるおれでいたい。
だから、兄さんのことを悪く言われれば腹が立つ。好きだから、守りたい。もし兄さんが悪く言われるようなことがあれば、そんなことはないとおれが最後の最後まで戦って必ず証明してやる。
「…お前、ここでおれにそう言う意味はちゃんと分かっているんだろうな」
兄さんは念を押した。
だが、おれだって念を押される意味は分かっているつもりだ。
「自分でもよくわかんねーけど、好きなんだと思う」
幼い頃から兄さんのことが好きだった。引け目を感じた時期もあったけれど、兄さんはおれの憧れだった。慕っていた。でも今はそれ以上にずっと。
こんなにも強い気持ちは、もしかすれば兄弟という物差しからは疾うに外れてしまっているのかもしれない。表す形や言葉もないのかもしれない。
けれど、それでもいい。
おれたち二人きりの想いの在り方があったってかまわないじゃないか。
「サスケ」
兄さんの手のひらがおれの頬に滑らされる。
見つめ合って、分かり合って、やがて眸を閉じた。
「いやなら、そう言えよ」
そっと唇が触れて、重なる。
たった一瞬。
それでもおれは永遠を感じた。
宿題は後でするから。そう言ってくれていた遠い日の兄さんのことを思い出す。
「ん…兄さん…」
気が付けば胸の痛みは消えていた。代わりに温かい幸せに満たされている。だからきっとあの頃を思い出した。
「いやじゃないな?」
問われて頷く。
いやじゃない。それどころか、
「…もっとしてほしい」
ふと兄さんが微笑んだような気がした。
だが確かめるすべはもうない。眸を閉じれば腰を抱かれ、永くやさしい兄さんのキスが訪れる。
触れるだけ。
それでもこの身を包み込む兄さんの腕の中の幸福にゆっくりと体が弛緩していく。まもなく結んでいたはずの唇もついにゆるりと解けた。
すると、角度を変えながら擦り合っていた唇の隙間から突然ちゅっと舌を吸われる。背筋に走った甘い感覚に驚いて目を開くと、兄さんはようやくおれを抱く腕を緩めてくれた。
「…ん…、…い、まの」
「これも、もっと、か?」
今さっきの疼きが忘れられず、思わず頷く。
だが兄さんはいつものようにおれの額を小突いて悪戯に笑った。
どうせ「許せ、サスケ」だ。先んじて制してやる。
「…また今度かよ」
そう言うと、兄さんはおれの頬や瞼、額に小さなキスを落とした。
「このまま続けたら、父さんと母さんのところへお前を返せそうにないからな」
「同じところに帰るくせに」
「今日中に、ということだ」
肩を抱かれ、帰途に就く。
また今度。
それはきっと兄さんからのもう一つもう一度のプレゼントだ。
なるべく早くほしいと言ったら、お前らしくないなと兄さんは笑うだろうか。
七月二十三日の日は暮れて、もうすぐそこまで短い夏の夜が来ていた。
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お題配布元:「確かに恋だった」さま
イタチ・サスケ、アウトー!!!
ただこれが言いたいだけの24企画でした。
一旦ここでこのリレーはおしまいです。
残り4話はこの続きの「また今度」の内容になるか、何になるか。
お誕生日おめでとう、サスケ!
サスケが兄さんの生きる意味だったんだ…!と思っています。
「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)
イタサスといえば。
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体や髪を洗い終え、いよいよ湯に浸かる。折角なので人のいる屋内の湯は避け、外の露天風呂まで行くことになった。
夏の日差しがまだ厳しいこの時間、思った通り外の湯にはおれたちの他は誰もいない。広さはさほどでもないが、竹林と岩に囲われ風情のある風呂の作りだった。
「タオル」
先に湯に浸かった兄さんが言う。
「湯に入れるなよ」
「そんなことは分かっている」
打撲の痣を隠すため腰に巻いたタオルのことだ。
兄さんには初めから知られていたのだからもう意味はない。岩の淵に腰を下ろし、タオルの結び目に手をかける。それでもやはり自分の弱さを自ら晒すようで気が進まない。すると、
「兄弟だろ、恥ずかしがるなよ」
兄さんは先程と同じ言葉と仕草でおれのタオルを悪戯に引っ張った。でもその中におれへの優しさだとか労りだとかが確かにある。おれは観念してタオルを取った。
打撲の痣はもう本当に小さい。兄さんは特に何を言うでもなかったが、だからこそ兄さんの隣に並び湯に入ったおれは、その時のことを任務内容に支障がない程度にぽつりぽつりと話した。
交戦状況や相手の技量、手並み、打撲を負った過程もおれの体捌きも全て。
言い訳じみていないか。途中そう何度も思った。もう話を切り上げるべきじゃないのか。そうも思った。
けれど、相槌に促されるまま心の内を形にしていくと胸に突っかかっていたものが、きちんと腹の中に落ちてそこに収まっていくような気がした。
「早く治ればいいな」
おれの話を聞き終わった兄さんはそれだけを言った。おれも「そうだな」とだけ答えた。
こうして明かしてみればたかだか腰の打撲、おれの手落ちだ。何のことはない。
でも、やっぱり兄さんに言うには時間がかかる。
その場にふと訪れた無音に居た堪れずに、おれは適当に訳を言い繕って兄さんから少し離れた。
本当にいつからおれはこんなにも兄さんに対して強情になってしまったのだろう。
離れて湯に浸かる兄さんをぼんやり眺めながら思う。
誕生日のこと、非番のこと、本当は一緒に出掛けたかったこと、怪我のこと。どれも大したことじゃない。ほんのささいなことばかりだ。きっと兄さんだってそう思っている。
「一緒に遊ぼう、兄さん」
「手裏剣術の修行に付き合ってよ」
昔はそんな風に言えたのに。
猫バアのところにだって、任務にだって、連れて行ってくれとねだれたのに。
今はもう言えない。
口許ぎりぎりまで湯に沈む。
熱い湯だ。白い湯けむりにこめかみにまた汗がにじむ。濡れた髪から水滴が滑って落ちた。
「……」
たぶんおれは怖いのだ。兄さんに、取るに足らない存在、聞き分けのない子供だと見做されてしまうのが。
だから強がる。甘えも弱音もいらない。吐かない。立派な忍。そんなおれならきっと兄さんだっておれのことを認めてくれる。
けれど一方ではまだ捨てきれない、拭えない、幼い頃からのイタチへの思慕がある。おれのために時間を取ってくれたことがこんなにも嬉しい。
兄さん。
イタチ。
こんなにも強く、苦しく、幸福に、たとえば他所の兄弟も兄のことを弟のことを思うものなのだろうか。
そういうことを考えていると、そのイタチが静かに湯をかき分け、こちらへとやって来た。
「サスケ」
「兄さん?」
どうしたんだ。もう上がるのか。と問うおれの言葉は「しっ」と潜められた声と共に口に当てられた兄さんの手のひらに塞がれ、奪われた。
瞬くと、やにわに体を抱かれる。重なる肌の感覚に一瞬すべてが真っ白になった。
「にい…っ」
「喋るな」
そのまま近くの岩陰に押し込められ、今度は上から覆い被さるように兄さんに抱きすくめられる。
「急になにしやがる」
イタチの体に強く抱き寄せられているため上手く喋ることが出来ない。イタチがおれを抱きすくめた理由はこれが狙いだろう。
「…木の葉の暗部だ」
「暗部だと…?」
イタチの囁きにそっと露天風呂の入り口の方の気配を窺う。あちらからはここが死角になっているため、おれたちに気付いた様子はないが、確かに二人分の気配がある。
「だが、どうして隠れる必要がある?」
休日、兄弟で温泉に来ているだけだ。なにも疾しいことはない。
と、おれは思っていたのだが、
「実は今日は少々強引に有給を取ったんだ」
「え…」
「そのおれの代わりに任務に出てくれたのが彼らだ。まあ早く片付いた上、温泉に立ち寄れるほどの任務だったみたいだが」
顔を合わせるのは少々心苦しい、ってそりゃそうだろうよ。
経緯を聞き、兄さんの腕の中で兄さんに呆れる。しかし当の兄さんはどこ吹く風だ。
「だから、彼らが立ち去るまで少し辛抱しろよ、サスケ」
「辛抱って」
「しばらくはこのままだ。おしゃべりも控えろ。見つかる」
そんな。
抗議をしようとした口はまた手で塞がれる。
兄さんは暗部の様子を窺っているようだったが、おれはそれどころではない。
熱い。
体が火照るのは湯の熱のせいではなく、兄さんの肌の温かさがおれにも伝わっているからだ。
石鹸の香り。兄さんの胸板。鎖骨。首筋。玉を結ぶ水滴。流れる汗。息遣い。
「に…にいさん…」
おれは兄さんの手のひらの下で呻いた。唇がその少し熱い手のひらに擦れる。見上げると、兄さんはこちらを見下ろしたところだった。
ああ。
こんなにも強く、苦しく、幸福に、たとえば他所の兄弟も兄のことを弟のことを思うものなのだろうか。
先程の問いがまたぐるりと回る。ぐるぐる回る。
喋るなと言われたが、もう無理だ。限界だ。
この胸に渦巻くわだかまりはきっと兄さんに話さなければ、どうにもならない。
さっきのように聴いてほしいんだ、兄さん。
「苦しい…」
打撲なんかよりもずっと痛くて苦しい。
「サスケ…?」
「この胸ん中モヤモヤしてるの、アンタが関係してるっぽい」
にいさん、と呼んだ声は思うよりもはるかに強く兄さんを求めていた。
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お題配布元:「確かに恋だった」さま
未だ オチが見えないので、とりあえず急展開を迎えてみた…!
イタサスといえば壁ドン。壁ドンといえばイタサス。押し付けるのが似合う兄さんと、押し付けられるのが似合うサスケ。王道!
そしてせっかくの温泉なので裸で抱き合ってみた。王道…!兄さんの体がサスケより一回り大人の体なのが萌えます。
急展開、新展開、意外な展開。
展開を書くのは好きなんだなあ…!
オチがいつも思いつかないんだなあ…。
よろしくなんだな!
「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
ほぼほぼ毎日更新・企画恒例リレー小説!(イタチ視点:春壱、サスケ視点:式)
サスケのパンツがピンチになります。
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温泉。兄さんからのそれはおれにとってなかなか魅力的な提案だった。
昼間から、それも家の風呂ではなく温泉に、しかも兄さんと行けるだなんて滅多にない貴重な機会だ。修行で掻いた汗を流すことも出来る。
そういえばアンタの買い物はいいのかと問うたら、
「後でいい」
と、こちらはどうも本当に買いたいものがあるのか怪しいが、ともかく温泉に行くことについて反対する理由はない。賛同の意を示すと、このまま温泉を訪ねる流れになった。
途中コンビニに寄り二人分の下着を買う。泊まり客以外にも開放されている温泉宿の暖簾を潜れば、平日の真っ昼間ということもあってか、脱衣場はそれほど混み合ってはいなかった。おれたちの他には二、三人しか客はおらず、各々風呂に入る支度をしたり、体を拭いたり、あるいは扇風機の前を陣取り涼んでいる。
「温泉なんていつぶりだろうな」
そう言う兄さんは空いているロッカーを見つけると早速上衣を脱ぎ籠に入れた。
忍、それも暗部を生業としているため日に焼けた肌ではなかったが、すらりと美しい筋肉のついた兄さんの体が露わになる。細身だが胸の厚みや首筋、肩幅などは十六になったばかりのおれとは違う、兄さんはもう大人の男なのだとまざまざと思い知らされる。
「どうした?」
「なんでもねーよ」
いつまでも実の兄の体を見つめているのもおかしな話だ。おれも兄さんに倣って上衣を脱ぎ捨て、続けてズボンに手を掛ける。が、
「そういえばここは湯治の場としても有名らしいな」
と言う兄さんの言葉にはたと手を止めた。
まずい。
そう思うことがある。
痛みが引いていたためすっかり失念していたが、実は先日の任務で敵方の忍と交戦した折、腰骨の下あたりに打撲を負ったのだ。打撲自体は軽傷であり、重ねるがもう痛みはない。ただ痣だけがまだしっかりと残っている。
おれに関してはやたら目敏いイタチのことだ。絶対に気が付く。その上であれこれ心配されるのも面倒だが、なにより任務中しくじったことを兄さんには知られたくない。
ただタオルを腰に巻いてしまえば隠せる場所だ。兄さん、先に風呂場へ行ってくれないかと焦れながらズボンを殊更ゆっくりと脱ぐ。
だが、ちらりと隣を窺えばイタチはその長い髪を束ね、結い上げているところだった。
「別におれを待たなくてもいいぞ」
おれの視線に気づいたイタチが言う。確かに上衣もズボンも脱ぎ終わり、下着だけのおれがぼんやりと立ち尽くしているのは妙だろう。
どうしようかと悩みながら下着に手を掛ける。すると何を勘違いしたのか、
「男同士、兄弟だろう?恥ずかしがるなよ」
イタチはあろうことかぐいとおれの下着に指を引っかけ、引っ張ってきやがった。
思わず「ぎゃあ」と声が出る。
その叫びに驚いたのは、きっとほんの悪戯気分でおれの下着を摘まんだ兄さんだった。
「いきなりなんだ、サスケ」
「なんだもなにも、アンタがおれのパンツを引っ張るからだろ!」
「それはそうかもしれないが…、ところでお前、何しているんだ」
イタチの視線の先、そこには兄さんが引っ張るパンツを必死に掴んで死守するおれの姿があった。
「は…放したくないって思ったら、自然と身体が動いてた…」
いいから、さっさとおれのパンツから手を離せ!くそがぁ!
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お題配布元:「確かに恋だった」さま
なんかもうジェットコースターのようなリレーになってきた。シリアスなのかほのぼのなのかアホなのか、蛇行運転甚だしい。
というわけで、サスケのパンツ問題どうにかしてください、春壱さん…!
23日までにあと何回更新できるかなあ。
「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
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相変わらずもだもだサスケ。
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買いたいものがあると兄さんが言う町は忍の脚で駆ければ、うちはの修練場からものの十数分で着く距離にある。だが隣を歩く兄さんにその気はないようだった。比較的人の往来がある視界の開けた街道を二人で歩く。
「こうして出掛けるのは久しぶりだな」
「ああ、そうだな」
イタチに言われて気づく。
出掛ける。
そうか。今おれたちは二人で出掛けているんだ。
「…兄さんとこうしていると昔を思い出す」
「昔?」
「猫バアのところへ無理を言って連れて行ってもらっていた」
あの頃のおれは多分今よりもっと無邪気で、それから兄さんに対して強気だった。どんな我儘だって、きっと兄さんなら「仕方ないな」と微笑ってくれると信じて疑わなかったから、全身で甘えられた。
兄さんは変わらない。あの頃のまま、今日だっておれに付き合ってくれている。
変わってしまったのはおれだ。
いつから素直に「本当はこんな風に兄さんと出掛けてみたかった」と言えなくなってしまったのだろう。
「…なあ、兄さん」
「うん?」
どうしたとおれをちらりと見る瞳にやっぱり何も言えなくなる。
代わりに違うことを口にした。
「買いたいものって何だよ」
忍具なら今も兄さんは猫バアのところで仕入れているはずだ。
だが、
「さあ、何を買おうかな」
なんてはぐらかされた。
まさか甘味の類じゃないだろうな。イタチなら大いに有り得る。この前だって里の通りでばったり会ったとき、ちょうどいいからと無理矢理甘味処に引っ張り込まれた。
兄さんを振り仰ぐ。
「なあオイ」
「さっきからなんだ」
「アンタが買いたいものって、甘味処とかにあったりしねーよな」
そう念を押したつもりが、逆にイタチの顔を緩ませる。
「甘味処、行きたいのか?」
どこをどう聞いたらそうなる。おれが甘いものは苦手だと知っているくせに。
でも、
「…アンタがどうしても行きたいなら、付き合ってやってもいいぜ」
「サスケ?」
イタチはおれが返した答えが意外だったのだろう、少し瞳を大きくした。
「だが今日はお前の誕生日だろう。そんな日にお前のきらいな」
「べつに気にしてねーよ」
それに兄さんとなら本当は甘味処に行くのも悪くないと思っている。
普段は能面を付けたような兄さんも、好きなものを前にしたらとても優しげな顔をする。だから、昔から兄さんとなら甘いものを食べるのは好きだった。
「おれ、その笑顔見れただけで、なんか不思議とうれしくなる、から…」
瞬間、頭をぐっと兄さんに抱き寄せられた。
何事かと驚いたが、そのまま手のひらで抱かれた頭をまた乱暴に撫でられる。
「ちょ…」
「いくつになっても可愛いな、お前」
「はあ?」
どこがだよとは思ったが、まずは兄さんの腕を逃れたい。
兄さんは木陰にいたからそれほどでもないだろうが、おれは朝からずっとチャクラを練って体を動かしていたから汗をかいてしまっているのだ。身だしなみをそれほど気にかけているわけじゃないが、汗でべとべとなのは気分が悪い。そしてそれが兄さんの服に付いてしまうのもいやだった。
「兄さん」
「なんだ?」
「おれも買いたいものができた」
「買いたいもの?」
問われて頷く。
「服。汗を拭いて着替えたい」
折角兄さんと出掛けるのだから、さっぱりしておきたい。
遠目には漸く目指す町並みが見えてくる頃だった。
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変化球投げるぞぉぉぉ!と事前に宣言しておいたので、きっと春壱さんなら大丈夫!
サスケといえば衣装チェンジ。
汗を拭きたい。新しい服に着替えたい。そんなサスケのお願いに兄さんはどう答えてくれるのか…!
サスケ誕まであと一週間。残りは二人合わせてあと10話。
うん。これ、既に大晦日の更新ラッシュが思い出される展開だな。
「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
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傷に付ける軟膏を貰いに里の医局へ寄った帰り、その廊下で兄のイタチと出会った。
「なんだ、アンタもどこか怪我をしたのか」
イタチが傷を負って帰ってくるなど滅多にない。ただざっと見たところその様子もない。
イタチは忙しく廊下を行き交う医局の者や患者の邪魔だからとおれに端の長椅子へ座るよう言った。続いて自身も隣に腰を下ろす。
やはり怪我をした風ではない。しないのだ、血の臭いが。
イタチの目的はすぐに知れた。
「お前が怪我をしてここにいるとナルトに聞いた」
「……」
余計なことを、と思う。あのうすらとんかちが任務帰りに偶々兄さんに声を掛けられ、大袈裟におれの怪我のことを言ったのだろう。
だいたい兄さんも兄さんだ。おれは忍だ。任務に出れば怪我くらいして帰る。わざわざ兄さんが医局まで出向くようなことじゃない。
「…アンタ、任務は」
訊ねると、「極秘」と返される。
そう言われてしまえば、おれには食い下がる言葉も追及する権限もない。
兄さんは暗部だ。おれと同じように任務帰りなのかもしれないし、あるいは召集前なのかもしれない。そういえばここ数日は家の中はもちろん里内でもその姿を見ることはなかった。兄さんがいない生活がおれにとって当たり前になり始めている。
「それよりお前、怪我は?」
イタチはおれの体に治療の跡を求めているようだった。
肩を竦める。
「大した怪我じゃない」
掠り傷程度だ。
「…しくじっただけだ」
手持ち無沙汰に処方された軟膏を宙に投げて遊ぶ。
すると何度目かに横からあっという間に奪われた。軟膏も、腕も。
手首を取られ、右の前腕を目の高さまでぐいと上げられる。イタチの前に晒された肌には擦過傷があった。
「…なんだ。本当に大した傷じゃないな」
「だからそう言った」
イタチの言う通り、本当に大した怪我ではないのだ。見た目に反して傷は浅く、忍であればこれくらいのことは当然だ。医局へ寄ったのも半ば強引にカカシたちに背を押されたからで、おれの意思ではない。
にも関わらず、これではおれが大袈裟に振る舞ったようでどうも釈然としない。勝手にここへ来たのはアンタだろう。
「そんな傷を負わされるようじゃ、まだまだ修行が足らないな」
「……」
むっとする。だが本当でもある。
傷は、護衛任務中に敵方の強襲を受け、こちらの指示を守らず怯えて逃げ出した依頼人を無理に庇って付けられたものだ。
きっともっと巧い手があった。兄さんならこんなへまはしない。絶対にしない。
だから、おれは言い返すことが出来ない。
イタチは容器の蓋をからりと回し、乳白色の軟膏を指に掬った。それからもう一度おれの手を取り、傷口にそっと触れる。
「ん…」
僅かに肌が跳ねた。気付かないイタチじゃない。
「痛いか?」
「…べつに」
つんと香る軟膏。
それが少しずつおれの傷口に引き伸ばされ、染みていく。
「サスケ」
「なんだよ」
だいたいどうしてアンタがそんなことをしている。
わざわざアンタにしてもらうようなことじゃない。
なのにおれは今を止めることが出来ない。
「何も言わないのか」
「何をだよ」
「人を庇ったんじゃないのか」
顔を上げる。
だがイタチはおれの傷の具合を見ていた。
取られたままの手が温かい。意識をすればするほど、おれは今兄さんに手を握られているのだと、そう感じる。イタチの手の中でおれの手の指がもぞもぞと居心地を探して伸びたり曲がったりを繰り返した。
「どうしてそれを…」
「ナルトに聞いた」
「あの野郎」
ぺらぺらと余計なことを。
「…庇った相手は護衛対象、任務の内だ。それに任務中におれがしくじったことに変わりはない」
言い訳はしない。
イタチに言うことでもない。
「それはそうかもな。だが、」
イタチは軟膏を塗布していた指はおれから離した。
しかし握っていたもう片方はそのままだ。
ぎゅっと繋がれる。
イタチはいつの間にかおれをひたと見つめてくれていた。
「よくやったな、サスケ」
息が止まる。
再開したら胸がいっぱいに膨らんだ。
口許がむずむずして、やはりおれに返す言葉なんてない。
でも心ごと抱き寄せられたようで、じんと心に沁み入った。
「…いいのかよ、暗部のアンタがそんな甘っちょろいことで」
そんなおれの憎まれ口もイタチには及ばない。
「おれはお前の指導教官でもなければ、同じ管轄でもない。おれはお前の兄貴だからな。いいんじゃないか」
「…兄さん、だから」
俯いたおれを結んだ手の先でイタチが微笑う。
「なんだ、照れてるのか、お前」
「うるせーな」
分かっている。
自覚はある。
「照れて悪いかよ」
この歳になっても兄さんに褒められることがこんなにも嬉しいだなんて、おれだってちょっと戸惑う。
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お題配布元:「確かに恋だった」さま
兄さんに褒められてうれしいサスケ。
今日は兄さん、サスケのハートにキスしちゃったんだぜ!
結論。兄さんがサスケの兄さんしているのが萌え…!
兄さんの「兄属性」たまらんです。そしてサスケの「弟属性」たまらんです。
相性ぴったりじゃないか、この二人!
そもそも兄弟萌えなので、兄さんの「兄さん」っぷりと、サスケの「弟」っぷりがとてもツボです。
なんでも完璧なのについ弟には甘くて過保護になる兄さんとやんちゃだけどお兄ちゃん大好きな健気弟萌え。
六月が終わる!
30日までしかない六月が終わる!
そろそろ小ネタで乗り切っていかないと…!
次のお題は小ネタっぽい感じでいこうと思います。「照れ屋サスケ」は次でラスト―!
「絶対にチューしてはいけない24」
設定:21才暗部イタチ×16才中忍サスケ。同居実家暮らし。
縛り:ブラコンだけど、できてません。 ほっぺやおでこへのキスはセーフ。
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里内での打ち合わせを終えた第七班が今日は明日の遠征任務に向けてそろそろ解散をしようかと里の通りを帰途についたところ、たまたま彼方からやって来るサスケの兄、イタチと出会した。彼もどうやら外での任務、その報告の帰りらしい。
「こんにちは、カカシさん」
互いに気付き合い、まず声を掛けたのはイタチの方だった。それからナルトとサクラにも声を掛け、最後にサスケだけには「ただいま」と言う。外で身内に会うのはどうも気まずいのかサスケが小さく「おう」と応えると横からカカシが話に加わった。
「お前も今帰り?」
「ええ。そちらも?」
「明日の任務のことでちょっとね」
カカシはサスケが下忍の頃よりの指導教官だ。中忍になった今もこうしてカカシ班として任務に出ることも度々あると聞く。イタチが身内として年長者らしく、
「サスケがお世話になります」
と頭を軽く下げると、
「世話になんかなってねえよ」
背後でサスケがぼそりと不平を零した。普段はわざわざ口にしたりはしないそんなことを言ったのは、きっと兄の手前だからだろう。サスケはイタチを前にするとどうも歳以上に子どもらしさが言動に出る。
ともかくそういうサスケを「まあまあサスケくん」「大人になれってばよ」とナルトとサクラが宥めたのがいけなかった。
「いつも勝手に突っ込んで世話になっているのはてめーだろ、どべ」
と売り言葉に買い言葉。
通りの真ん中でカカシ班の日常茶飯事、ナルトとサスケの睨み合い取っ組み合いが始まる。
「ちょっと、やめなさいよね、ナルト」
まずはサクラが呆れ半分、諦め半分で止め、
「サスケ」
イタチも諌めて加わる。
だが元々互いの力量を認め合った二人だ。日々の諍いはあれど、決定的な亀裂が走ったことはこれまでにない。今必要なのはクールダウンだろう。このまま家へ帰らせては明日の任務に響く。カカシは通りに面した里には珍しいカフェテリアを指差した。
「ま、積もる話もあるようなないようなだし、お茶でもしていく?」
夕方のカフェテリアは混雑の時間帯を外したためか、思ったよりは空いていた。奥の席にはカカシ、サクラ、ナルトが順に、手前にはイタチとサスケが椅子を引いて座る。
「ここ、最近流行りなんですよ」
二・三度いのたちと訪れたことのあると言うサクラは早速テーブルにメニューを広げて見せた。夏に向け南方の果実を絞った期間限定のフレッシュジュースがどうやら人気らしい。
カカシとサスケは無難にアイスコーヒーを頼んだが、ナルトはサクラが美味しいと言うのならと聞きなれない果実のジュースを張り切って注文し、サクラはサクラで今日はまた新しいジュースにチャレンジするという。そんな二人に同調をしたのは最後まで注文を思案をしていたイタチだった。ナルトと同じものを店員に頼むと、まずはナルトが「ええっ」と声を上げた。
「イタチってこういうの飲むんだ。なんか意外だってばよ」
「そうね。サスケくんは絶対頼まないもんね」
そうナルトとサクラは言うが、実のところサスケ自身はたぶんきっとイタチは果実ジュースを頼むだろうなと思っていた。兄はそういうものを好んでいる節がある。それに折角の機会と踏んだのだろう。サスケと二人ではまず来ない店だ。
注文をしたジュースやコーヒーを待つ間、会話は途切れることなく続いた。サクラはサスケと長くいられるのなら嬉しいし、ナルトはそのサクラとプライベートまで共有できるのなら幸せだ。カカシとイタチは大人である分だけ付き合いというものの必要性を知っているうえ、サスケは必要以上に会話に加わることはなかったが、こうして七班と兄とがいる空間に自分があることは嫌いじゃない。
やがてテーブルにナルトやサクラ、イタチが頼んだ色とりどりの甘く爽やかな香り漂うジュースと、アイスコーヒーが並んだ。
「うまそーだってばよ」
ナルトの声がやさしいオレンジの前に弾む。早速ストローで一口含むと、顔を輝かせそのまま続け様にどんどん飲んだ。
サクラもイタチも「うん、やっぱり美味しいわ」「さっぱりしていて美味いな」と笑顔を零す。
そんな三人を前にして、サスケも「ふうん」と内心頷いた。
そんなに美味いのだろうか。
何気なく隣のイタチのブラッドオレンジに目を移す。するとイタチは弟の目線に気付いたらしい。
「お前も飲んでみるか」
グラスとストローをサスケの方へ向ける。
慌てたのはサスケだ。兄のものを取ってまで欲しかったわけじゃない。ただちょっと興味があっただけなのだ。
「べつにいらねーよ」
「そうか?美味いぞ。おれのはさほど甘くないから、お前でも飲めるはずだ」
「でも…」
「遠慮する必要はない。ほら」
「……」
サスケは勧められたストローの先をじっと見つめた。
それはついさっきまで兄が口を付けていたものだ。ちらりと隣を見上げると、兄の薄く形の良い唇が目に入って、すぐに逸らした。
「なんつーか、その、」
そのストローは兄さんが…。
なんて口が裂けても言えない。
「うん?どうした、サスケ」
と先を促すイタチにサスケはますます体を固くした。
「……」
ここまできて断るのはおかしい。絶対におかしい。
サスケは覚悟を決めた。
口を小さく開いて恐る恐るストローに唇を近づける。
どきどきと胸が高鳴った。
イタチが見ている。ナルトやサクラ、カカシも見ている。
「……」
ストローの先が唇に触れた。
そっと咥える。
そのままちゅっと吸った。
「ん…」
途端、甘い香りが口いっぱいに広がる。
ついでに胸ももういっぱいだ。
「どうだ?美味いだろう?」
と言うイタチのやさしい微笑みも、今は俯くサスケには見ることのかなわないものだった。
■↑というやりとりを見せられた七班のみなさん
(サスケくん…)
(いつもおれたちとは平気で回し飲みしてるってばよ…)
(なのにどうして実の兄貴に照れるかな…)
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お題配布元:「確かに恋だった」さま
兄さん相手にだけ間接キスで照れるサスケくん。